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成長への芽生え

「こんなものか……」


拠点洞窟から少し離れた森で私は魔獣狩りをしていた。魔法も基礎が使える為困ることは無い。接近戦もここに来てしっかりと、独学ではあるが学んできている。下級悪魔なりに、日々精進している訳だ


「……」


それにしてもと、私は足元に転がる魔獣を見下ろした。最初の頃はキールが居ないと倒せなかった魔獣が、今ではあっさり倒せるようになった。やはり日々の戦いの賜物だとは思うが、下級悪魔がこんなに早く強くなるのだろうか。前世の記憶がある為変な所まで気になって仕方ない。記憶があっても厄介な時は厄介だ


魔獣を担ぎ拠点洞窟の方に体を向けた私は、そのまま草をかき分け先に進んだ。最初の方は襲ってきた虫達も、最近では襲ってこなくなった。有難いものだ、変な所で体力は使いたくない。


でかいトンボ、私苦手だしな……


「帰ったぞー」

『!ガルマンしゃま~!』

「うぉっ」


洞窟に入った瞬間パタパタと翼を動かし突進してきたオウガ。追突した直後に私にしがみつき、レロレロと私の顔を舐め回す。ベタベタするが、まずは魔獣の下ごしらえをしなくては


「ただいまキール。私の名前教えたんだな」

「うん。言葉がわからないから、とりあえずね」

『ガルマンしゃま~』


私の名前を覚えて、ずっとそれを連呼するオウガ。相当私はオウガに気に入られたらしい。子供ってなんでこんなにも可愛らしいのだろうか、誰か教えてくれないか?


「キール、処理の方手伝ってもらっていいか」

「うん!」


キールに頼み一緒に皮を剥いでいくと、オウガが私の背中から覗いて来た。興味津々なのか、尻尾がベシベシと私の背中に何度も当たり少し痛い。アザにならないかだけが心配だ


「オウガ、これが気になるのか?」

『お肉!お肉!』

「肉か。まぁ待て、すぐには無理なんだ」

『まつ……!』


素直に待ってくれるオウガの為に魔獣の皮剥を終え、次に血抜きや内蔵を取り出す。ここも色々事情があり、省略させてもらおう


さて、様々な調理も終え次は焼くだけとなる。ソーセージ等も今度作ってみたいが、今の技術力やその他諸々の理由で無理だろう。ディストピアをもし出ることになったら、見聞を深める旅に出たいものだが……いつになるやら


「ガルマン様。やっぱりこう言った内蔵の類は……」

「他の奴らにやる事になるな。私達じゃ食べきれないし、内蔵が好きだというやつは多いし」

「じゃぁ、笹に包んで持っていくね。魔法宜しく」

「ん…」


キールの身体に薄らとした影が落とされる。日除け魔法は少し遠くまでなら持続効果が付与されるので問題は無い。ただ、遠くなれば遠くなるほど威力は弱まるので、あまり遠くの集落には行かないだろう……多分


『ガルマンしゃま~?お肉まだー?』

「まだだぞオウガ。生でよければ少しくらいやれるが……」

『なま!お肉!』

「わかった、分かったからヨダレを垂らすな。ベタベタする」


相当腹が減っているのか、目の前にある大量の肉に目を奪われるオウガ。さっきの肉が相当美味かったみたいだし、気に入ってくれたのだろう。というより本当に食欲旺盛だな……


「ちょっと待てよ、この魔獣は肩部分が美味しいんだ」

『おにく!』

「肉好きなのはわかったから落ち着け……」


ナイフで肉を切り取り、オウガの大きく開けた口に入れる。私の背中に乗って嬉しそうに食べるオウガの姿に、母性本能が擽られるのが分かった。今は男でも前世は女だ、仕方ない


「ただいまー」

「おかえりキール。オウガにちょっと肉をやったが、大丈夫だったか?」

「うん、問題ないよ。オウガは食欲旺盛だね」


ニコニコ笑いながらキールは肉を焼き始め、それをオウガはマジマジと見つめる。あれだけで足りないのは分かるのだが、身を乗り出してヨダレをタラタラと流すのはどうしたものか


「オウガ、もう少しで焼けるからね」

『おにくっ、おにくっ!』

「こらオウガ。火に近づいたら危ないぞ」


今にも火に飛び込みそうなオウガを抑えながら肉が焼けるのを待つ。オウガのヨダレが私の服に染み付き、どんどんベタついてくるのだが、そのベタベタで少し心地が悪くなってきた


「……オウガ、足の上に来ないか」

『うん!』


背中から移動し、私の足の上に来たオウガは尻尾を振りながら火を見つめていた。正しくは火に炙られる肉を見ているのだろうが、キールは一気に焼くので炎が強い。ほぼ炎しか見えないと言ってもいい。よくこれで焦げないよなとか、余計なことは言わないでおく


「……ガルマン様、服が凄いことなってる……」

「後で洗ってくるから大丈夫だ」

「そう?それならいいけど……」


肉を焼き終わって切り分けているキールに心配されつつ、私はオウガの頭を撫でて待った。先程食べたので正直言うと私はいらない。オウガに全部やるつもりだ


『お肉~♪』

「美味いかオウガ」

『美味しい!』


目を輝かせてガツガツと肉を頬張るオウガがとてつもなく可愛い。なんでこんなに可愛いんだろうか


『……』

「?どうしたオウガ。腹一杯になったのか?」


オウガが急に肉を食べるのをやめた。腹が脹れたのかと思ったが、そうでも無いようで肉を見つめている。ヨダレがまだ垂れているので膨れているという事ではなさそうだ


「オウガ、食べてもいいんだぞ?」

『……ガルマンしゃま、食べない?』

「私は先程食べたから充分だ」

『でも、でも……』


どうやら私が食べていないのが心配らしい。キールも少しつまんだりしているので余計にそう思ったのだろう。それに、自分の食べる量が明らかに多いことも少しは自覚しているようだ


「私は大丈夫だぞオウガ。私はそこまで多く食べる体質ではないだけだ。その分お前が食べるのだから、問題は無い。ほら、残すともったいないぞ」

『……一口くらい……』

「わかった、ひと口食べるからそれでいいな?」

『うん……』


まだ少し不満げなオウガからひと口肉を貰った。私の口に肉が入ると、先程までの不満げな表情はどこへやら。笑顔になって肉を食べ始めた。和むなぁ子供の食事は……いや、私も今は子供なのだが、前世は三十路まで生きて、合わせると45だからな


「そう言えば……ガルマン様、先程砂浜から持ったきた本の中に、こんなものが……」

「……これは地図だな。ディストピアの地図ではなさそうだが……」


キールに渡されたそれは、ディストピアとは違う何処かの地図と思しきものだった。端の方に書かれた文字を読むと分かったのだが、どうやら洞窟の地図らしい。なぜ砂浜に流れ着いたのかは不明だ。そもそも洞窟の地図なんて誰が欲するのやら


「取り敢えずは保管だな……一体どこの洞窟なのか皆目見当もつかないが」

「……たまにガルマン様、わからない言葉を使うよね」

「そうか?」

「うん」


キールに言われて少しずつ説明しようと思った。キールは13、学を身につけてはいるがそこまで多くのことを学んではいない。私が教えてやらなくては、教えてくれるものはいないのだ


「キール、これからはちょっとした勉強もやるぞ。まずは文字とかだ。まぁ、急にやるってのもあれだから、また別の日になるけど……」

「ガルマン様が教えてくれるの?楽しみだな…」


私が教えるとなると、嬉しいと言って照れ始めたキール。可愛いとしか言えない私はきっと子供に飢えていたのだと思う。結婚は愚か恋人すら作っていなかったし、子供は近所の子を時折見るくらい。多分私はずっとキールやオウガを見ながら萌えるんだと思う


「さて、腹一杯になったか?」

『なった!』


オウガやキールの腹は満たされたようで、先程まであった大きな肉の塊が消えていることに少し驚いた。キールも少し食べるほうだが、オウガは竜だからかは知らないがとても食べる。少し狩る数を増やした方が良さそうだ


今後の食のことを考えていると、不意にオウガが視界に入った。オウガの元気そうな姿に私は少し次の段階のことを考え始めた。オウガにとって大事な事だ、しっかりしなければ


「オウガは亜人なのか?それによっては今後の動きが変わると思うのだが」

『あじん?』

「私達のような二足歩行できる、人間とは違った生き物の事だ」

『できる!』

「本当か?それなら一度なってみてくれ」

『うん!』


オウガは亜人だったようで、笑顔で人の姿になってくれた。人の姿と言っても、竜の時にあった角や尻尾、下の犬歯が鋭く大きい為に口からはみ出している点を除いては、だが


「いきなりはびっくりするんだけど……」

「すまん、亜人だと聞くから……」

「そっか。僕がオウガの言葉わからないってこと覚えといてね」


キールの言葉に少し気になることがあったのか、オウガはキールの方を向いた。最初は首を傾げていたが、何を質問してくるのか予想できたのか笑顔になった


「これは?」

「その姿の時の言葉は分かるよ。ただ、竜の言葉は分からないかな……」

「そっか」


キールの返答に対し、あまり興味もなさそうな返事をして私の方に向き直ったオウガ。その表情はまさにドヤ顔で、腰に手を当てて「どう?」と聞いてきた。明らかに褒めてほしそうな感じだ


「カッコイイぞオウガ、大人になった時が楽しみだ。……さて、普通の竜じゃないならやる事は決まった。戦い方を教えないとな」

「たたかう?たたかうって?」

「魔獣を狩ったり、敵が出てきた時にしなきゃならないことの一つだ」

「!たたかう!」


どうやらオウガの血の気は多いらしく、本能なのか尻尾を振り回し目をギラギラさせていた。私も今は下級と言えど悪魔だ。その目を見て身体がゾクゾクするのを感じ、久方ぶりの高揚に立ち上がる


「オウガ、まずはお前がどんな能力値なのか計らないといけない。ちょっと外で試そうな」

「うん!」


ふんふんと息巻いて外に出ようとするオウガを見て途中からだが私は気付いた。オウガが服を一枚も着ていない事に


「オウガちょっと待て」

「?……わっ」


自分の来ていたタンクトップのような物をオウガに着せた。下半身にはブカブカではあるが私の予備の下着を履かせておく。布で縛ったのでずり落ちることは無いだろう


「ガルマンしゃまのにおい……」

「私の匂いそんなにするのか?」

「する……」


服を着せた辺りからずっと匂いを嗅いでいるオウガを撫で、残ることを渋ったキールを連れて川辺に来た。初めて戦うならここらの魔物が妥当だからだ。わかりやすく言えば、初期のスライム的な弱さだから……


「まずはあのカエルからだ、やれるか?」

「やる!」


ふんふんと鼻息荒くカエルにじりじりと近づいたオウガ。カエルは視界にオウガを映しておらず、気づいていないのかそのままげこげこ鳴いている


「!」

「ゲコッ!?」


カエルの一瞬の力が抜けた隙を狙い、オウガはカエルに噛み付いた。完全に仕留めているのか、もうカエルが鳴くことはない。オウガの鋭い下の牙がカエルの体を貫通しており何となく酷いなって思った。何となく


「予想以上に動きがいいな。これならすぐに動きも覚えるんじゃないか?」

「ふぉんふぉ?」

「カエルを口から離してから喋ろうか」

「ぺっ」


器用に舌で突き刺さった牙を抜き取り、そのままカエルを地面に吐き捨てたオウガ。行儀が悪いのでそこら辺もちょっと教育せねばならないな


「オウガ、吐き捨てるのは良くない。食という物は植物等もそうだが、何かの命を刈取る代わりに自分の生に繋げる物だ。このカエルだって焼けば食えるし、体をつくる成分が多く取れる。このカエルの分まで生きるという意味で、有難く食べるんだ」

「……?」


説明してみたがオウガは首を傾げた。長かったし、少しオウガでは分かりにくい言葉もあったのかもしれないので、これは国語力も身につけさせなくてはと思い、ため息を少し吐いてわかりやすく説明した


「わかりやすく言うと、さっきまで生きてた生物を狩ったなら、責任もって胃袋に納めろってことだ」

「!わかった!」

「お前本当に分かってるのか……?」


何だか分かってなさそうなオウガに少しばかり頭を痛めたが、まぁそれでも教えていけばいいだろうと考え、カエルを捌くことにした。オウガもそういうのは覚えさせなくてはいけないので、オウガに教えながら捌いてもらった


「変なの!」


捌いていると、オウガがカエルから描写出来ないほどの物を取り出した。これが前世の世界の漫画ならばモザイクが入る所だろう。モザイクが入ってR指定されるやつ……


「内臓だ。カエルの内蔵はあまり食べない方がいいぞ、こいつらは肉がメインだしな。カエルの内蔵は小さいから難しいし……」

「なんで食べちゃダメ?」

「体に悪い事が起きるからだ。カエルだけではないが、こういう魔獣や魔物には付き物でな。上級や中級なら属性持ちが居るし、それで何とかしてるかもしれんが……」


話してみるがやはり首を傾げられた。分かってた、オウガにはまだ難しいって言うことはもう分かってた


「要するに、私もこれをどうにかできることは無いから食べるなってことだ。でも、勿体ないから……」


私はそこで、それを受け取り木の上を見た。張られた蜘蛛の巣が目に映ると、私はそこまで登った


「お前内蔵食べるか」

『内蔵?あらあらまぁまぁ、そんな美味しいものを下さるの?ありがとうございます』

「良かった、食べられるんだな。私達は処置出来ないから少し困ってたんだ」

『まぁ、そうでしたの?でしたら周りの一族の物に知らせておきますわ。いつでも内蔵提供してくださいな』

「すまんな」


喋り方が丁寧なクモに内蔵を渡し、オウガ達の所に戻った。カエルの解体は終わっており、あとは焼くだけとなっている状態だった。早くないな……?


「僕が教えておいたんだよ?どう?」

「キールは捌くの得意だもんな、ヨシヨありがとな」

「えへへ……」


血がついていない手でキールの頭を撫でると、オウガが視界の端で頬を膨らませた。どうやら拗ねてしまったようだ


「……撫でてくれない……」

「あぁ……すまんオウガ。オウガの事はまだだったな」

「むぅ……」


拗ねまくりなオウガの頭を撫でて「カエル食べようか」と火の準備をすると、渋々頷いて私に抱きついてきたオウガ。そのままそこに座り、小さな火を指先で灯して集めた枯葉に付けた


「このカエルは小さいからこれくらいで十分だろう。じっくり中まで火を通すんだぞ」

「うん」


小さいと言っても、それは私からの見解なのでしっかり中まで火を通すよう教えた。火での調理は洞窟でも見ていたし、少しは分かるだろうと信じてる


「ガルマンしゃま、これくらい?」

「そうだな、もう少し焼いてもいいと思うぞ」

「もう少し……」


私の言葉を聞き、ジーッと肉を見つめるオウガ。洞窟の時と同じで少し笑いがこみあげた。どれだけ食い意地張ってるんだコイツは。可愛らしい


「もういい?」

「あぁ、もういいぞ」

「やった!」

「塩いる?」

「いる!」


キールがすかさず持ってきた塩をオウガにいるか聞いてきた。軽く振って少し熱を冷ますと、オウガはカエル肉にガッツいた


「うまい~」

「これからはオウガも狩りに加わる必要があるな。その方が覚えるだろ」

「僕も狩りには行くから、一緒に頑張ろうね」

「……キールも?」

「なんでそんな不満そうな顔するのさ」


どうやら私と二人で行くものだと思っていたらしいオウガ。キールも来ると知ると少しだけ顔を顰めた。親離れの逆の奴か……なんだったかな、呼び方は


「ガルマンしゃま。僕ガルマンしゃまと狩りしたい」

「僕だってガルマン様といっぱい居たいもん……ねっ!ガルマン様!」

「私は二人と一緒に仲良くしたいな……それじゃ駄目か?」

「むぅ……」

「……仕方ないね」


妙に張り合う二人にヨシヨシと頭を撫でておく。一瞬頬を赤らめて頭をグイグイと寄せてくる二人に、こんなにも似ているのになぁと不思議に思った。そういえば前世のおばあちゃんが言ってた気がする。性格が似ている同士は、似れば似るほど不仲になるって。そういう事なのか?


「ガルマンしゃま!もう1回する!」

「オウガまだ食い足りないのか?仕方ないな……」

「違う!なでなで!もう1回!」

「……マジか」


まだ腹がいっぱいになっていないのかと思ったら、撫でるのが足りないと言われた。少し剛毛な青い髪を荒々しく撫でてやると、そちらの方も良かったのか頬を赤くして喜んだ。サラサラと流れるようなキールの髪もいいが、剛毛もいいかも知れん。ちょっとハマった


「ガルマン様…オウガだけズルいよ…」

「あぁ……すまんキール。許してくれ」

「…へへ、許しちゃう」


オウガを撫でていない方の腕でキールを抱いて頭を撫でると、キールははにかんで許してくれた。オウガもそれをして欲しいとねだり、腕の中で私の方に寄りかかって嬉しそうに頭を撫でさせる亜人が二人になった。可愛いので甘やかしてしまうのはもう仕方ないな、うん


「さて、そろそろ拠点に戻るぞ。オウガももう腹はいっぱいになったか?」

「うん!」


カエルを食べたあとはそのまま拠点に帰る前に、川辺でベタついた服を洗った。オウガに着せた方は運良くヨダレでベタベタになっていなかったので大丈夫だろう


「そうだキール。拠点の方に誰か来たりしてないか?留守にしてたからガラの悪いヤツらとか来てたら困るんだが」

「うーん、反応はなかったから来てたとしても中には入ってないんじゃないかな。なにか引っかかったらちゃんと反応するし」


キールに聞いたのは拠点に設置している罠の事だ。本の見様見真似で作ったそれは、しっかり作動することを確認済み。雷魔法で充電して機械はオンにしているので、反応があれば探知する機械を持っているキールにはわかるようになっている


「………居るっちゃいるな」

「……そうだね」

「?」


拠点に戻ると、そこにはオークの群れが拠点前を彷徨いていた。困ったもんだと頭を抱えていると、オークの一人がこちらに気付いた。攻撃してくるのかと思いオウガとキールを後ろに下がらせたが、どうも敵意は無いように見えた


「ここに何の用───」

「申し訳ない!許してくれ!!」

「???」


急に謝ったと思ったら土下座までし始めたオーク達。取り敢えず土下座をやめさせて、普通に座ってもらった


「一体なんだお前達は。私はあった記憶が無いのだが……」

「僕もないよ……」

「……」


オウガの表情が険しいことに気がつき、なんとなくオウガが関係していることは考えた。いったいこのオーク達がオウガに何をしでかしてくれたのか


「お前達に問いたい。なぜ許しを乞う?」

「それは、そっちの竜人に……」


徐々に小さくなる言葉に私は焦れったさを覚えた。ハキハキ言えハキハキと


「お前達は何が言いたいんだ。許しを乞いに来たというのにその態度では誠意という物を示していないのではないか?謝罪するならばそれなりの態度というものを見せろ」


私が威圧の含む言葉で言うと涙目になって土下座で詳細を話し始めた。どうやら、オウガを食ってやろうと目論んでいたオーク達だったがその子竜が最近この辺りで噂になっているヤバい奴ら(私たち)に保護されたと仲間から聞きつけ、許しを乞いに来たようだ。なんともオークらしい頭の無さである。この地域は()()()()場所だと言うのに


「このディストピアでよくそんな事が言えるものだな。無法地帯であり弱肉強食である場所でそのようなことを言うとは……。弱ければ狩られ、強ければ狩るのがココだろう。お前達新人でもあるまいしそんなこともわかってないのか?」

「それは分かってる!だが、うちは若いのが沢山いて──」

「なら、協力して狩りに出ろバカもん。私たちに謝っている間にも食に困るのでは無いのか?弱肉強食の世界で仲間以外に謝る必要は無い。敵は皆牙を剥くものだと思え」


一通り説教じみた説明などをしてオーク達を強制的に帰した。オウガにも念の為しっかり教えておいたが、やり返すかやり返さないかは本人に決めさせようと思う


「……ガルマンしゃま……」

「どうした、オウガ」

「僕ね、強くなりたい……強くなって、ガルマンしゃまとずっと居たい……」


悲しげにそうつぶやくように吐いた言葉を私はしかと受け取った。頭をワシワシと撫でてやると少し嗚咽を漏らし出したが、キールもそれを見て少し微笑んだ後先に洞窟の方へと帰っていった。暫くオウガの嗚咽は治まらなかった、それでもオウガの心の中でなにか強い決意と意思が芽生えたと言うならば、私はそれを支えてやろうと思う

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