子竜の名前
子供の竜を拾い、手当や餌の工面をしてやってると時間は過ぎ、もう朝になっていた。キールはなぜかご機嫌で私の背中に引っ付いており、子供の竜も私から離れない。懐かれたなぁ
「そう言えば、お前名前あるのか」
『なまえ?なまえって、何?』
「名前自体知らないのか……。わかりやすく言えば、その個体を表す特別な物だ」
『それ知らない。でも、りゅうって言われてた。僕はりゅうなの?』
「んー、それはお前の種族を表すもので……」
『しゅぞくって、なに?』
「…………」
子供の竜とは会話が成り立たなかった。仕方ないと考え、私はゆっくり説明していく
「───────わかったか?」
『うん、わかった』
簡単に説明するのは骨が折れる物だと背筋を伸ばすと、後ろにいたキールが立ちあがり食料棚に向かった。飯の準備をしてくれる様だ
「キールありがとう。助かるよ」
「ガルマン様にはお世話になってるから……」
照れたようにして肉を焼き始めるキールに、可愛いものだと何度目か忘れたことを考えながら、子供の竜に巻いていた布を取り替えることにした。結び目を解くと、子供の竜はぴょんぴょん跳ねて元気であることを表し始める
「分かった、元気なのは分かったからお前落ち着け!」
『うんっ!』
飛び跳ねていた子供の竜の体を見ていると、どこにも傷がないことがわかった。翼なども見てみるが、明らかに怪我をしていない
「驚いたな……竜関連の種族は回復能力が高いのか?」
「そうだよガルマン様。竜はその生命力から、エルフ族や吸血鬼族達より長生きなんだ」
「ほぅ……」
ジーッと見ていると、子供の竜は照れたのか前足で顔を隠した。可愛い
「そう言えばガルマン様。竜の言葉がわかるの?」
「?キールは分からないのか?」
「動物種の言葉は、相手が亜人姿か、聞く側の魔力が高いか、亜人であるかの三つの条件の一つが必要なんだ。聞く側が亜人だった場合は、同種じゃないと分からないらしいよ」
「私は悪魔なんだが……」
亜人ではないし、残るは魔力だが元は人間の私だ。下級悪魔なのもあって魔力なんてそんなにないだろうし、該当する条件が一つもない。ただ、今まで鍛えて強くなったと言うならば話は別だ。まぁ、それは今考えなくてもいいだろう。意思疎通が出来るならそれでいい
「よし。まずは子供の竜、お前の名を決めなくてはな」
『なまえ、くれる?』
「あぁ、やるとも。そうだな……何がいいか」
うぅむと考えていると、キールが朝飯を作り終えた。どうやら海から採ってきた岩塩を使って肉を焼いたらしい。一口食べると、塩が肉の味を引き立ててより美味くなっている。キールは料理が上手い
「美味いぞキール!やっぱり料理が美味いやつが作るに限るな」
「そ、そうかな……えへへ」
嬉しそうに笑ったキールに対し、尽くすタイプなのか?と考えた。いいと思う、尽くすタイプ。前世は尽くされたいって凄い煩いくらい言ってたから
『おいひ~♪』
「そうかそうか。キールの料理は美味しいだろ?」
「りょ、料理と言えるほどではないけどね……」
『キール?キールがなまえ?』
「そうだぞ」
『キールありがとー』
可愛さ満点な子供の竜に私は悶えた。あぁ、子供ってやっぱり可愛い。前世は三十路まで子供どころかパートナーも出来なかったし、今回は人生のパートナー作りたいな
なんて考えていると、食欲旺盛な子供の竜はガツガツと肉を平らげていく。この様子だと足りないだろうか
『たりなーい』
「だろうな……そうだと思った」
「でも、今日の分は……」
「私が取ってくる。子供の竜の面倒を頼む」
『いっしょにいくー!』
「駄目だ。お前はまだ少し早い」
『やだー!』
怒り始めた子供の竜の周りに、パチパチと火でも電でもない光の集まりが、現れては弾けて消える。これは少々危険かもしれない
「……なら、名前つけてやるからここで待機。いいな?名前欲しいだろ?」
『うー……』
「名前をやったらお前のことを呼びやすくなるし、同じ名前がある同士もっと仲良くなれるかも知れんぞ」
『……ほんと?もっと仲良くしてくれる?』
「あぁ」
『……ならまつ』
チョロいものだと思いながらキールと一緒に名前決めが始まった。うずうずして見上げるその姿が可愛らしい。将来カッコイイ竜になるようなら、かっこいい名前がいいような
「うーん、タクトはどう?」
『やっ』
「嫌だそうだ」
「そんな……」
キールが出した案を全て拒否する子供の竜。どうしたものかと考えていると、ふと頭に浮かんだ物を言ってみた
「オウガはどうだ?」
『オウガ?僕、オウガ?』
「あぁ、どうだ?」
『僕オウガが良いー!』
「今のはわかった、オウガで決まりなんだね?私のは全部嫌って言ったのに……」
「この差はなんだろうな」
そう言いながら私はオウガを任せて狩りに出た。洞窟からオウガの切ない声が聞こえてくるが、今は無視する他ない