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到着、魔法の国

「くっそがぁぁぁっ!!」


ドガァァァァンッ!!


今現在、ラルクが大暴れ中である。先程の情けない自分に腹が立って敵に八つ当たりすると言っていた為、その()()()()()中だろう


「力はあるが、ただ蹴ったり殴ったりしてるだけか…ふむ……」


ラルクの動きを見ながら適した鍛錬を予想し、練る。あの動きだとたしかに体術向きではあるが、ある程度の重い武器でも振り回せそうな感じはある。蹴り技と重武器の使い方とか、色々教えてみよう。重武器は私もそこまで使ったことないから国に行ってからのことになるかもしれないけど


「ガルマン様見てみて!」

「おぉ、デカい魔物を狩ってきたな。晩飯こいつにするか」

「わーい!」


性格こそ子供っぽいキールだが、実力のある吸血鬼だ。ラルクも妙に対抗心が強くなって張り切ってくれるし、病気などにすぐ気が付いて薬草を持ってきてくれるので有難い存在である。私やオウガは病気類に掛かっても体質上、すぐに症状がわかりやすく出てこないから……


「……ガルマン様」

「?どうしたオウガ」


空を飛んで巡回してくれていたオウガが帰ってきた。どうやら東方面から鎧に身を包んだ軍隊が進軍してくるそうだ


「ここから早く離れた方が良さそうだな。ラルク!もういいぞ!」

「嘘だろ!まだ足んねぇよ主様!」

「その先でも暴れていいから、取り敢えず行くぞ!」

「うっす!」


最後の敵を殴り飛ばしたラルクが走り寄ってきて尻尾を振りながら頭を出してきた。ヨシヨシすると尻尾は更に動き、ラルクの口元が緩みまくる。わかりやすいケモノ可愛い……


《歩行中》


「それにしても……ムグムグ、なんでこんなに……ハグハグ、戦ってんだ?」

「食べながら話したら行儀悪いぞ」

「ウグッ」


先程ラルクが倒していた敵を食べながら話すので取り敢えず注意しておき、ついでに肉を火で炙っておいた。生でも食えるからとはいえ、怖いものは怖いのだ。食中毒舐めちゃいかん


「戦争は一気に片がつく事もあれば、長引く時もある。長引く時の方が多いと思うが、今回は東から来る軍による、本気の城攻めだろうな」

「奇襲ってやつ?」

「奇襲で合ってるが、オウガの知らせからして失敗するだろうな。勘だけど」

「戦争ってめんどくせぇな……ムグムグ」


会話が終わると思ったラルクがまた食べ始めたので、特に話すことも無く歩く。平原は所々に木が生えているだけで、それ以外に草が生えてある位しか特徴がない。なにかめぼしい物があればと思ってはいたが、何も無ければ話すこともないだろう


「あっ、血の匂い」

「ムグ?」

「ラルクのお肉じゃないよ。ここからそう遠くないところ。森の方じゃなくて、あっちからする」


そう言ってキールは地図上でいう西の方を指差す。先程言っていた東から来ていたという軍隊が行くであろう方角だ


「始まったのか……それにしては早い気がするが」

「うーん、イシュタントはここから北方面だし、シュヘルツかな……」

「しゅへるつ……」

「確か、獣人の多い国だよ。契約の森みたいに契約を主とした場所じゃない、個人と国とで成り立ってる場所。なんだか凄い場所なんだ。本でしか見たことないけど……」

「そうか、今度はそっちにも行ってみたいな」

「うん!」


キールは私よりも世界のことに詳しいが、全てディストピアに来る前に培った物だ。少し嫌そうに「国の事は覚えろって言われてたから」と話してくれた時のことを思い出す。なんだか胸が苦しくて、私はついキールの頭を撫で回した


「わっ!ガルマン様、いきなりどうしたの…?」

「…なんでもない。キール、幸せか?」

「?うん、幸せだよ」

「……そうか」

「はは、ガルマン様変なのー」


少し可愛らしく笑ったキールは、次はオウガと話があるのかそちらに行った。楽しそうに笑うみんなを見ていると、胸が暖かい。私がみんなを幸せに出来たらいいんだが……


「主様、もう魔物出ねぇし飛んでいかね?」

「みんなはどうする?魔物が出なさそうだしそこまで歩く意味が無い」

「じゃぁ飛ぼう!僕久々に自分で飛びたい!」

「…ガルマン様は…」

「私も自分の羽根で飛ぼう。ラルクはオウガに乗せてもらうか?」

「いや、肉食ったし走るぜ!人狼の走り見ててくれや!」

「辛くなったら言うんだぞ。よし、よーい」


準備の掛け声を言うと羽根を広げ、走る準備をする各々。大きな声で「どん」と言った時、その場には宙に舞う草だけがあった


「凄い!僕こんなに早く飛べたんだ!」

「あまり加速し過ぎるなよキール!止まる時身体に負担がかかる!」

「はーい!」


ラルクが尋常ではない素早さで走ってくれるため、今日中にでもイシュタントに着きそうな勢いである私達。なるべくラルクが離れないようにと低空飛行しているが、尻尾をモフりたいとかそんな事じゃないから。危ないからそんな事したら


「主様!どうだ!?俺の走りはよォ!!」

「とても早くカッコイイぞラルク!だがあまり喋って舌を噛んではいけないからつくまではお口チャックだ!」

「おっす!!」


ラルクのテンションが良すぎて少しスピードが上がったが、それについて行くのは何とかなった。二日はかかると思ってた城もやっと視界に映ってきたし、これはもうすぐ着けるだろう


《イシュタント王国・壁門前》


「着いたー!どうだガルマン様俺速かったろ!なっ!なっ!」

「ああ、とても速かったな。凄いぞラルク」

「クゥーンッ」


あれから何時間かした後に普通に着いた。平原を見ている限りでは魔物が見当たらず、空を飛んだのもまたいい経験だよなと自己解釈しておく


「さて、中に入るぞ。……ってこら、ラルク。そいつは売るんだから食うなよ」

「ぐっ」

「お腹空いてるの?」

「いや、なんかつまみてぇ」

「そんな酒を飲んでるみたいに……駄目です」

「ちぇー」


ラルクをつまみ癖を何とかするために手を握っておく事にした。もふもふしててぷにぷにしてる手に触りたいとかそんなやましい気持ち考えてないない


「あっ、お肉屋さんに売れるかな!お金欲しいよね!」

「あぁ、なるべくだったらな。なんか仕事とかないか調べてくるからそっちは任せていいか?」

「はーい」

「承知……」


オウガとキールが肉屋を探しに行ったのを見て、私はラルクを連れてどこか用心棒でも雇ってくれそうな場所を探した。色んな店と交渉する時、ずっとラルクは尻尾を振って私の手を握り腕に抱きついていた。可愛い可愛い


「号外~!」

「?」


ほうきに乗った少女が石のようなものを街に投げていく。地面に落ちたそれを拾うと、それは砕け散る代わりに文字を宙に残した


「精霊王の儀式……?」

「読めるのか主様」

「ん?あぁ、文字は読めるぞ。…ふむ……」


宙に浮いている文字を読むと、どうやら今日の午後に精霊王への日々の感謝を込めての儀式が行われるそうだ。それに伴い祭りごともあるらしく、どうりで一通りが多く屋台のようなものがある訳だと納得する


「屋台か……手伝いで金出ると思うか?」

「やたい?なんだそれ」

「屋根が付いていて、移動可能。飲食物や玩具などを売る店の事だ」

「へぇ……俺食べ物あると食っちまうからなぁ」

「ラルクはオウガと用心棒出来る所とかでバイトだな」

「出稼ぎってやつだな?頑張っぜ!」


そう言って意気込むラルクだが、まだ2人と合流してないのでこのままお店探しになる。ラルクとオウガは用心棒の類として、問題は私やキールだ


「すみません、用心棒やバイトを探している所はありませんか?」

「そうだねぇ、今日は精霊王様への供物を捧げる日だし、屋台のバイトは必要だと思うなぁ。特に食べ物の屋台は人手不足だったと思うよ」

「そうですか。ちなみに用心棒とかは……」

「うーん、変なやつが集まるからって酒屋の人が頼んでたかなぁ」


現代でいうホームセンター的な場所を紹介してもらったのでそこに来てみると、なんとかいい情報を得ることが出来た。良かった良かった、お金を見繕うことが出来そうだ


その後は雇ってくれそうな店を手当たり次第に回ってなんとか焼き鳥作ってる屋台にOKを貰った。前世大学時代に職探しウーマンって言われた私をナメるなよ……今は男だから職探しマンだな


「あっ、ガルマン様~!」


そんなことを考えていると、可愛らしい声が聞こえたのでその声の方を見た。何やら人混みの中からぴょんぴょん跳ねて手を振る生物がいるが、横には頭角を物理的に表しているオウガが居るためキールだろう


「おかえりキール。どうだった?」

「捌くの上手いって雇われそうになったんだけど、一応ガルマン様に報告!」

「日雇いにしてもらっておいてくれ。いつここを出るか分からないからな」

「はーい!じゃぁいってきまーす!」


なんとかこっちに来れたキールは、報告をするとすぐにどこかへ行ってしまった。オウガはと言うと、ラルクを見つめて動かない


「な、なんだよ」

「……暴れたいか」

「!暴れていいのか!」

「……そういう場所がある……ラルクの為になるだろう……」

「ヤッター!主様!俺ちょっくら行ってくるぜ!」

「ん、じゃぁ私は予定場所に行ってくる。儀式前にこの宿屋の前で待ち合わせするぞ。キールにも言っといてくれ」

「……御意」


寡黙なオウガがラルクを連れて人混みに消えていった(と言ってもオウガめっちゃわかりやすいけど)。それを見送り私も先程の焼き鳥屋に直行。美味しく焼けるといいな~、炭火焼き鳥

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