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ディストピアの外

「主様!朝だぜ!」

「んん…もう朝か……ふぁ~」


辛い寝方をしたせいか余り眠れた気がしないのだが、ラルクは私の膝の上で眠っていたためご機嫌のようだ。羨ましいなぁと考えていると、外から獲物を狩ってきたオウガが来て普通に剥ぎ取り始め、それを見たキールが火をおこし始める


「……まさか、私が最後か!」

「そうだぞ?え、今更かよ」

「なんてこった、この私がみんなよりあとに起きるだなんて……」

「いいじゃねぇか起きるのが遅いくらい。ほら、あんたにブラッシングしてもらってふかふかだぜ!これ触って機嫌治せよ!」

「うっ……魅惑のもふもふ……」


昨日丁寧にブラッシングしたもふもふの尻尾をすり寄せられ、若干の幸福感を抱きながら尻尾を抱きしめる。尻尾の先がぴょこぴょこと動くのがまた愛らしく感じられた


「あ、ガルマン様おはよ!お肉焼けたよ~」

「わかった」


尻尾を離すと懐に来て抱き着いてきたラルク。ニカッとカッコイイ笑みを浮かべるもんだから強く言えない。カッコイイ顔してるなぁほんと。凛々しいというかなんというか……


「あ、そういやディストピアの外の地図まだ渡してなかったな。これ渡しとくわ」

「地図あったんだ……」

「ありがとな、助かるぞ」

「へへっ」


地図を受け取った際に頭を撫でてやるととても嬉しそうに笑ってくれたのがまた可愛い。ケモノ可愛いな……


そうこうしている内に朝飯も済み、今度は地図を見ながら森を抜けることに。色々話した末、目的地は魔法に特化しているらしい国、イシュタントで決まった


理由は様々あるが、オウガや私、キールにいい刺激になるのではと考えているのがまず1つ目


2つ目は、ラルクの抑制器的な物が出来れば欲しい。今までを見るとラルクは感情に左右されやすい部分が多くある。ましてや人狼の力は計り知れない為、少しでも無関係のものに被害が行かないようにするため必要なのではと思った。魔法に特化した国ならば、ラルクの負担にならないくらいの抑制器も出来るかもしれない。抑制器の方はラルクにも了承は得ている


「そういや、そのイシュタントって所までどれくらいかかるんだ?」

「徒歩だからな……ふむ、数週間は掛かるだろうか」

「うげっ、そんな歩くのかよ。キールとか無理なんじゃねぇの?」

「失礼だな、僕だって多少鍛えてあるんだから平気だよ!」


プンスコ怒るキールに対し、ラルクはケラケラと笑いながら背中を叩いた。簡素な服に身を包んでいる細身のキールはそれをまた怒り、私の体の陰に隠れるようにしてラルクの視界から消える


「……オウガの背中に乗って行くってのも手だが、それだとその途中での経験とか得られなくなってしまうんだろう。私達がディストピアを出た理由はあくまでも経験を得ること。その辺説明していなかったことは詫びよう」

「あぁ、別にいいぜ主様。俺は別に旅にこだわりとかねぇしよ。あんたについて行けりゃそれでいい」

「ありがとうな」


ニッカリと笑うラルクの頭を撫でると、昨日切った短いサラサラとした髪が指をくすぐる。少しクセになってしまってずっと撫でていると、流石に擽ったく感じたのかラルクに注意されてしまった


「撫でるのうめぇけど、ずっと撫でられっと尻尾が言う事聞かなくなっちまうからよ……なるべくは控えてくれや」

「わかった……二人きりの時とかはいいな?」

「お、おう!二人きり…そうだな、二人きりの時くれぇなら……」


頬を赤くしてモヤモヤと考え始めたラルクの手を引き、私達はそのまま森を歩いた。魔物の強さは微妙ではあるが、ラルクにはいい練習相手になるらしく少しずつ戦い方を覚えてきている。本能的に動くことも多いので、やっぱり戦闘術は磨いておきたいだろう


「森を抜けて二日くらい歩いたらイシュタントかな。森を抜けるのに時間掛かりそう……」

「それくらい、この森が大きい…。大地の恵が多い証……」

「以前精霊が多く住んでいたとされる土地だからな。今もなお、少数の精霊がディストピアなどに行ったりしているのかもしれない」

「精霊なぁ……俺には精霊も妖精も似たような匂いすっから違いわかんねぇわ」


広大な森の中を地図を見ながら進んでいくと、キールが少し不安そうに声を漏らした。その言葉にオウガが返答したあとの会話で、ラルクが言った言葉に取り敢えず説明をつけようと思う


「匂いは定かではないが、能力的違いは大きいぞ?精霊は主に我々とは別時空にて自然を操作する力があって、白黒世界と色の着いた世界があるが、精霊は白黒世界に住んでいるとされている。色の着いたこちらの世界を見ることは出来るが、我々からでは白黒世界を見ることは出来ない状態だ。今この瞬間、白黒世界で精霊がこれを見ている可能性だってある

で、妖精は色の着いた世界で住む精霊以上に高い知能を持ち、精霊を信仰し関連する自然を守る種族を纏めて呼称するものだ。エルフ族は風や大地の精霊を信仰していて森を守っているがドワーフ族や小人族も何らかの精霊を信仰する種族で、特殊な役目を持っている為精霊のうちに入る」


全て説明すると、三人ともへー、と興味深く聞いてくれていたことにちょっと嬉しかった。何せ長ったるくて興味なかったら絶対聞き逃す量だったのだ。欠伸してもおかしくない


「よく知ってるなそんな話……」

「ちょっと読んだからな。というか妖精と精霊の匂いなんてよく嗅げたな。鏡みたいなものだぞ白黒世界」

「まだあの牢屋に入る前に一回迷い込んできたやつがいてよ。姿は見えなかったけど、目の前に気配と…なんか花みてぇな匂いしてた。ウザってぇ価値観押し付けてくるエルフ族の野郎が牢屋入ってる時に来たが、ソイツもそんな匂いしてたし」


若干オウガとキールが置いていかれてる感が出ているが、二人はこの話を以前話したことがあるので耳を傾ける程度で地図に集中している。こうやって話が長くなるといつもこんな感じになるからなんか申し訳ない


「ガルマン様…」

「ん?どうした」

「ちょっと気になったんだけど、精霊ってこっちの世界に来たら基本見えるの?」


いきなり話しかけてきたと思ったらいい質問をされた。ふふん、と教えてあげれる嬉しさにちょっと胸を張りつつその質問に答える


「基本は姿をくらましてると思うぞ。ただでさえ白黒世界から移動してくる意味はないからな。自分たちが外に出てのリスクを考えて姿を現すことは無いだろう」

「……その姿をくらます魔法を見透かす魔法を常に作動してる人って、見えちゃう?」

「見えちゃうだろうな。流石に白黒世界までは見えないだろうが」

「へぇ……」


質問に答えたあと、なぜかジト目でこちらを見たキールが「見つけたら教えてね!」と言って地図に目を向けた。どういう事だとオウガを見てもそっぽを向かれる。なんでなんで?


「あ、主様気づいてねぇの?」

「?気付いてないって何を」

「あー……こりゃ駄目だ。自分の能力把握できてない奴」

「????」


言ってることがさっぱり分からず首を傾げるも溜息を疲れる始末。なんだ、何かあるなら教えて欲しいんだが。いやちょっと待って知らないことあるなら教えて


「なぁ、気になるぞ。なんだ」

「んー、呪われたくねぇんだよな……」

「What?」

「わっ、変な言葉使うなよわかんねぇから」


頭をわしゃわしゃとかいて困ったようにするラルクに、呪われるってなんなのって思いながら取り敢えず進む。気になるなぁ、気になる。気になるぞ…


《数時間後》


「まだ気になる……」

「いや、もういいだろ主様……」

「気になりだしたら分かるまで気になる性分なんだ」


呪われるとか言われたり溜息つかれたりとかされたら気になりまくるので歩いている間ずっと考えていた。もう少しで水辺に近づくって言ってるしそこら辺で一度、目とか見てみよう


「ガルマン様、お魚って食べれるものとか分かる?」

「把握はしてる」

「よし、お昼ご飯はお魚だね!」

「魚ァ?まぁ野菜じゃねぇだけマシか……」

「好き嫌い…良くない…」


可愛いなぁ我が子達はとか考えながらのほほんと水辺に到着した。最初の頃は警戒しまくってたこの世界も、なんだかそこまで警戒しなくてもいいんじゃないかとか思い始めたせいでなんだか妙に前世のようにのほほん出来るようになった。人が変わったみたいとキールやオウガに言われるが、これが素です。のほほん悪魔でもいいじゃないか


「魚…沢山獲る…!」

「よし、私も5匹くらいは捕まえないとな」

「主様もやんのかよ!俺もする!」

「僕火をつけとくね~」


ザバザバと水の中に入って泳ぐ魚を全力で捕まえに行く私達。みんな洞察力半端じゃないからすぐに沢山捕まえられた。こう考えると、人間ってほんと弱いし守られる立場なんだろうが、そんな中で暮らしていけるって凄いよなぁと関心しながら捕まえた魚を魔法で作った木の串で刺していく。いやほんと、あの世界だったから人間は食物連鎖の上に入れるけど、この世界だと人間はどれくらい弱いんだろうか


そんな時、ふと水面を見ると私の顔が映っていた。ジーッと水面を見つめていると、ある事に気付く


「……ん?」

「どうした主様」

「いや、前より目が赤いなぁと思ってな」

「…ガルマン様……眼、力ないのか……?」

「眼の力…?強いていえば、隠された魔法陣を見透かす位だが……」


そう言うとなるほどなるほどと三人は頷いてもうその話は終わってしまった。え、なんだったんだこの会話。とても気になるんだが……?

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