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初めの始まり

オウガは自分でやると言った。ならば、私達はそれを見守るしかない。まだ7つのオウガは身体は大人でも心はまだ少年、無理をしないと良いのだが……


「……ガルマン様、オウガはどうして試練をクリアしようとしてるの?ここから出られる方法さえ見つければ帰れるのに……」

「オウガにもオウガなりの考えがあってだろう。どう考えているかはオウガに任せる。まぁ、食料が三日分切ったら強制帰還だがな」

「だよね……ガルマン様までここに残るなんて言い出したらどうしようかと思ったよ……」

「ふふっ…流石に食料なしでやっていけると思うほど馬鹿じゃない。安心してくれ」


クスクス笑いながらそう言うとキールは少し驚いた表情をした。どうしたのか聞くと「なんでもない!」と返してそっぽを向く。私何かした?


少しばかり気になって考えていると、ズシンズシンと重々しい音が響き渡っている事に気がつく。その音は徐々に私たちの方へと近づき、その音の正体である青色の鱗を持つ竜が暗闇から姿を現した。紛れもない竜状態のオウガだが、何か様子が可笑しい


「どうしたオウガ、やっぱり帰るか?」

「そうだよね、やっぱり帰るよね!」


元気に肯定を求めるキールに対し、オウガは首を振る。すると途端に私とキールを掴みあげて神殿の外に歩き始めた。何がしたいのかさっぱりではあるが、とりあえず様子見をしようと思う


『試練、考えた。でも、わからない……だから、二人、帰す』

「別に私は残っても構わないぞ?」

『ダメ。キール、心配する。寂しくなる』

「まだ7つの子供が言う台詞じゃないだろ……でも、オウガがそう言うなら仕方ないか……。食料などは持ってくるが、それはいいな?」

『助かる』


どうやらオウガはここに残る気でいるようだ。岩が崩れて通れなくなった道に俺たちを下ろし、一つ一つ岩を退けていくオウガを手伝うため掌に魔力を込める。なるべく周りに亀裂を入れないよう調整出来たら良い方だろうか


「オウガ!ちょっと退いてくれ!」

『うん……』


ゆっくりと後ろに下がったオウガを見て火球を放った。岩に直撃し、煙に覆われるのを眺めていると、キールがボソリと小さく呟く


「これって…ねぇ、ガルマン様……」

「…ぽいな」


キールの言いたいことは、もう分かっていた。煙が晴れていくにつれてその光景は明確に現れる


「さっきの魔法……強い、よね?」

「あぁ。中級で扱える、それなりに強い魔法の筈だ。だがそれは効かなかった……」


岩に近づき、ジッと文字を見つめる。彫られた文字には特徴的な事は無いはずなのに、何故効果がなかったのか。掌に治まる物を手に持ち、360°転がして見回した


『……あっ』

「?どうしたオウガ」


オウガが何かに気付いたのか、私とキールを下がらせて拳を強く握った。いや、確かに第二の試練は力だったが、まさかそんな─────


ドゴォンッ!!!


「マジかいな」

「オウガ凄ーい!」


竜の姿で拳を振るったオウガの風圧や拳の力で、中級魔法でも壊せなかった岩が粉々に砕け散った。私は唖然とし、キールは盛大な拍手でオウガを称える。オウガ自身はキラキラした瞳で私を見ていて、どう答えたらいいのやら分からない


「よくやったなオウガ…私には全く分からなかった…。いや、オウガは頭の回転が速いな、よしよし」

『ガルマン様、褒めた。俺、嬉しい。ぴょんぴょん、跳ねそう』


頬を真っ赤にして鼻先をグイグイ押し付けてくるオウガを撫で回していると、キールがグイグイと服の袖を引っ張ってきた。私よりも小さな身体で抱きつき、擦り寄ってくる。いつも通りの嫉妬だろう


「じゃぁ帰るか……だが、第三の試練は記されてなかった。ずっとここに残るつもりか?」

『まだ、全部、謎、解いてない』

「私はもういいと思うけどなぁ……オウガがしたい事をやるといい」


ポンポンと鼻先を優しく叩いて食料を置いて帰路に足を向ける。キールも帰ってくるので私の手を握ったが、私の掌にやっと握れる程の硬い鱗に覆われた物が左手に割り込んできた


「……あれ、残るんじゃ?」

『……やっぱり、帰る』


不満そうにキールを見るオウガに(あ、この子も嫉妬してるのか?)と考えが過ぎる。だが、それだけでは頑なに残ると言って聞かなかったオウガが帰るようになるとは思えない。第三の試練には検討がつくのだろうか


『ガルマン様、俺、また、ここ、来たい。壁字、読める、その時来る』

「じゃぁ、普通に使われている文字と壁に記されている文字の二つを学ぶと言うんだな?オウガは覚えがいいから大丈夫だろうな」

「あっ、僕も勉強するからね!ガルマン様!」

「ん。その意気込みや良し」


なんだか妙に二人が張り合っているような気もするが、それよりも自分をどうやってこれから鍛えていこうかという方向の方が少し気になったので、若干睨み合ってる様な感じのする二人を連れて地上に戻った。竜神の神殿から、その時一瞬だけ笑い声のようなものが聞こえたのはきっと空耳だろう

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