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さまざまな短編集

世界で一番の理想的状況

作者: にゃのです☆

 心電図のモニターがゼロになりかける頃。

 人はどんな感じで逝くのか……。


 結果から言えば人さまざま……。

 ただし、唯一全員に共通することは涙を流すということ。

 どんなことが見えて涙を流すのかはわからない。

 涙を流す原理も確立されているが、私はそう思いたくはない。

 ここでは幻想でも、妄想でも残された人たちが一番幸せだと思う状況を作り上げていきたいから。


 なぜ? と思ったのはまだその世界に入って間もなく。

 人間にとっては喜怒哀楽が大事だということは小さいことも学校でも習って来た。

 死に直面した現場では怒と哀しかないように思っていた。

 しかし、それはある場面に出くわしたことで崩された。


 逝く人は涙を流し、送る人は笑顔という場面だ。

 状況を完全に違えているのではないか?

 場違いにもほどがある。空気が読めていない。

 そんな考えしかなかった。

 だが、空気を読めていないのは自分だった。


 その空気の場を作り上げたのは一人の人物。

 逝く人の遺言でも送る人の希望でもない。

 第三者がその世界を作り上げたのだ。


 どうやって?

 ただ話しただけ。

 その人はそう言ってその場を後にした。

 不思議な空間。

 その場所がまるでそこにずっといた場所のように和やかになっていた。

 茶化しているわけでもなく、ごく自然に。

 初めての経験。

 

 それ以来。

 同じ場所に立つことは叶っていない。

 あれから数年を経ているが同じ場面はあれっきりだ。

 どんな会話をしたのかもよくわからないままその人も去っていった。

 これまでと同様。

 逝く人も送る人も涙を流す。

 それは私も。

 

 願わくは……。

 あの状況を作れないか。

 自分の技量では到底、成しえることができないあの空間を。

 雲をつかむような思い。または、魔法を錬成する思い。

 無茶なことに手を出しては失敗。

 何事にもやってみて失敗に失敗を重ねた。

 あの時の状況はいまだに実現していない。


 偶然か……。

 諦めていた。

 確かにいろいろな条件、人、経過が必要だと知った。

 宗教、常識をも超えて、魔法のように。

 それぞれが干渉しないように緩く穏やかに舞わす。

 魔法と表現したのは当てはまっているかもしれない。

 その時の場に立ち会った人が涙を我慢し、その人の人生を語り始めたからだ。

 人生は周りの人にも影響を与える。

 良し悪しはとにかく、偶然か奇跡か。

 自分もそこまでに至るのに一言二言しかきっかけを与える言葉を発していないが、話は盛り上がり、自分も含めてみんなで笑って送ることができた。

 最後の最後は皆さん泣かれていたが、それは自分もだった。


 後輩から。

 そのことを見ていたらしい後輩から自分が数年前にした質問が来た。

 どうやって?

 ただ話しただけ。

 あの時の状況に比べたらまだまだだが、何かを掴めた。

 魔法が使えたんじゃないか。

 ただ、こんなことを魔法としたら様々なことが魔法になってしまうかな?

 だけど、一連の流れは常人ではできない。

 自分でもこの空間だけは作り出せることは叶わなかったのだから。


 今後も……。

 いまだに理想郷を求めて精一杯やっている所。

 いまだ理想は届かない。

 だから、理想郷。

 どんな場面であろうとも状況を変えられる人になれればいい。

 かつてのあの人のように。



 追記



 逝く人のことも含め、すべてを幸せの中でというのは難しく。

 逝く人の人生観、送る人のイメージが一致していないと実現できない。

 どちらとも幸せな状況だったあの時は、まさに追い求めるべき理想郷。

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