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視察という名のお掃除開始その2

語彙や文章力の無さを毎回実感しております。

 まったりとしたお茶会が終わり、エセルは王太子に頼まれて空間に入れておいた荷物を取り出した。エセルのが空間にたくさんのものを収納ができるのをいいことに王太子はいろいろなものをエセルに預けている。彼女は王太子付きの専属女官としていつも一緒に行動することが多いために、何かあればすぐに必要なものを出せるために、便利なスーツケース扱いである。この荷物は視察の前に預かったものだ。




「これに着替えろ」


 王太子は普通の庶民の服を取り出し、エセルに差し出す。だぼっとしたブラウスとくるぶしまでのスカートにエプロン付き。これって、庶民の奥様のスタイルだ。冥土の虎の穴時代に、決められた金額で庶民の暮らしを経験するという過酷任務があった。ああ、今、思い出しても恥ずかしい黒歴史。王太子と知らなかった頃の彼とペアを組んで冒険者ギルドで冒険者登録をして傲慢な冒険者を鼻をへし折りぶいぶいと言わせ、二人で無双したのだ。だってさ、決められた金額って少なすぎるし、美味しいものを食べたくてお金がもっと欲しかったから当時は簡単にお金を稼げる職業って冒険者しか思いつかなかったんだよね。魔物を狩りまくって、冒険者ギルドを恐慌に陥れたのはエセルだけの罪じゃない。目の前の彼が強すぎたのだ。


 あれ?そう言えば、冥土の虎の穴と羊の虎の穴(執事・従僕などの養成学校の別名、なぜ、羊なのかは突っ込まない)の合同授業が多すぎたのはなんでだろう?いや、いや、それよりもあの当時、彼もまた魔法学校に通っていたよね?もしかして、彼も二重生活を送っていた?今頃になって知った事実にエセルがが~~んとしているうちに、さっさと王太子は庶民の若者の典型スタイル(シャツにズボン)に着替えていた。


「遅い、お前は何をしている」


 上司(王太子)の叱責に一応しゅんとしてみせる。これ以上叱責されないための彼の直属影さんたちの中のお姉さんたちから伝授の必殺技。上目使いで少し涙目になり、反省してますって顔をする。これで王太子はイチコロだとかいうが、そうだろうか?


 うん?「なに、あなたは赤くなっているんですか」と突っ込んでいい?





 着替えをすますと、二人で近くの町に歩き出す。探索魔法を使いながら、ついでに有効な薬草や毒草はもちろん高額な料理の材料なども採取する。これは地道にやっておかないとストックがありませんでしたってなると拙い。料理魔法を駆使して、薬効のある薬や香料などをどんどん造り出す。それを王太子が経営しているという商会におろして、今は小金持ちになっているエセルにとっての採取は欠かせない作業だ。彼だけに儲けさせるのは腹が立つ。なので、彼の商会を利用して、小金を貯めこんでいる。


 将来がどうなるのかわからない現状では、お金があるって保険だよねと実に堅実な考え。必要経費はすべて王太子持ちの彼の専属女官もいつまで続けられるかわからないし、もう一つの顔も今は婚約者であって王太子妃ではない。それにこんなにゴミ(腐敗貴族)が多い国の未来って怖くないか?賄賂や使い込みが多すぎて国庫は大丈夫かよと心配になる。そのうち国がつぶれるんじゃないのかと戦々恐々となる。まあ、王太子の個人資産は彼の経営する商会が儲かりすぎて、かなりの金額らしいので、国がつぶれかけても上司(王太子)がしっかりしているならと少しは期待している。それに商会の方も他国にも商会の支店があるので、倒産の危機はないらしい。彼はいざとなったら(国がつぶれる)商人にでも転身するのかもしれない。実に安定企業だ。羨ましい。それに便乗しているエセルもエセルだが。


 彼は魔法学校で魔道具科に通っていたらしく、庶民にも簡単に手を出せる金額で便利な魔道具を作り薄利多売の利益を上げている。前世で言う百均の店?それに並行してエセルの造ったただ同然(採取してくる薬草や毒草などで作るので実質人件費のみ)の薬を高位冒険者や国の騎士団などに高額で売りつけている。その売り上げの半分をエセルが貰ってはいるのだが。そこはちょっと悪徳商法っぽい?まあ、儲かっているからよいかとすぐに深く考えないようにする。目の前の男と仕事している今は深く考えたら負けだ。


 貴重な材料を求めて寄り道ばかりしていたら、王太子から「いい加減にしろ」とお叱りが来た。


 こんな貴重な材料の宝庫で宝の持ち腐れしているよりも有効的に使った方がいいじゃないかと突っ込むと、盛大に溜息を吐かれた。


「お前は危機感がなさすぎる」


 王太子に言われたかないわい。何のためにこっちが探索魔法を常時作動させ、常に結界魔法を張っていると思っているのだと憤慨する。そもそも、今回の任務の詳しい説明がない。説明プリーズと言ったらスルーされた。なら、好き勝手したっていいじゃないかと一人で自己完結する。


「あまり、遅くなると夜の森は危険だ」


 かつて、冒険者としてぶいぶい言わせていた頃、何度も野宿したのに今さらと呆れた。仕方ないので、空間から冒険者時代に彼から預かっていた武器と防具を出した。もちろんエセル用も出し、防具(皮の胸当て)を身に着ける。ちなみにエセルの武器はナイフ。そろそろ、夕食の材料を狩りたい。今夜は久しぶりの野宿だ。ワクワクする。肉が欲しい。肉が食べたい。


 


 う~~ん、なんでこうなったんだろうとエセルは頭を抱えた。


 王太子と背中合わせで、周りをたくさんの怪しい男たちに囲まれて、ただ今、危機に陥り中。


 森の中で迷子になったわけではない。野宿をする予定で、喜々としてお肉を狩りまくっていたら、いつの間にか、森の奥に入り込み、そこに怪しい家があった。王太子と二人で顔を見合わせて、その家にいろいろと探り(探索魔法など)を入れてみたら、子供たちが何人も捕らわれていた。


 見逃しておけないと二人でその怪しい家に突撃して今に至る。


「お前といるといつもこうだ」


 と王太子はぼやくが、その言葉をそっくり返してやる。王太子といると何故か、トラブルに巻き込まれる。不思議だ。というより、この怪しい家を見逃せなくて突撃したのは二人ともなのだが。そこはとりあえず、脇に置いておくことにする。突っ込むなよ。


 王太子はこんな奴なのだ。王太子のくせに彼はなぜなのか、他人の不幸を見逃せない。たとえ敵が何人いようとも、人質を助けるためなら、こんな怪しい家にも平気で突っ込み、エセルも含め影さんたちを何度泣かせてきたことか。「王太子なら、まず一番に自分の身の安全を図れよ」と何度も忠告したが彼が聞き入れたことはない。ふと、遠い目をして現実逃避を図るエセル。それでも、なんのかんのとみんな(彼直属の影さんたち)が彼を見捨てないのは、昔、こうやって彼から助けられたという過去があるからだと思う。


 こうなったら腹を括るしかない、結界魔法を強化して、裁縫魔法を駆使する。


 忍法影縫いって忍術があったけれど、あれ実は生活魔法の一つである裁縫魔法の応用なのだ。つまり、床と敵の影を見えない針と糸で縫いとめる。でもさ、影を縫いとめたって、影が消えたら無駄だよね。なので、エセルは本人を床に結いとめてしまう。あら不思議、縫いとめられた本人はその場から動けなくなる。ついでに足だけだと手が動くから身体全体を動けないようにとその場の空気にも縫い付ける。それがエセルの影縫いの真実。


 空気が実は酸素と窒素などという原子からなる存在を知らなければ、これって無理だよねと前世で化学で原子について教わったことが無駄にならなかったなあと思いながらも、周りを囲むたくさんの敵を一人ずつちまちまと裁縫魔法を使い、床に空気を作る酸素や窒素という原子たちに縫い付けていき、あと喚かれると煩いからついでに口も縫っておく。魔法はイメージだからね。見えない原子でもイメージで縫い付ければOK。やはりチートだ。相手からすれば、身体を一歩も動かすことができずに、口まで閉じられ、話すこともできない。恐慌状態に陥るのだが、周りはそれに気づかない。なんてお得な魔法なんだと自画自賛。できれば、時間短縮か広範囲を組み合わせて、なるべく早く縫い上げることが今後の課題。


 背中合わせの王太子からどんどん緊張感が消えていく。エセルが裁縫している間にそれ以外の襲ってくる敵を彼が難なく床に沈めていくので、エセルはずっと裁縫魔法に係りきり、全員を縫い付け終わると良い仕事をしたとばかりに、出てもいない額の汗をぬぐう仕草をする。ああ、懐かしい。こうやって冒険者として二人で無双してきた時代を懐かしむ。と、いきなり頭を叩かれた。


「おい、何をぼうっとしている」


 はい、はい、最近の王太子は部下(エセル)の扱いが微妙にひどい。これはブラック企業になりつつある悪い傾向ではと舌打ちしたくなる。


 透明糸電話で王太子直属の影さんたちのボスにつなぎを付け、縫いとめた敵の後始末を頼む。子供たちは王太子が助け出し、さわやかな笑顔で好感度を得る。ずるい。いつもいいとこどりだ。悔しい。


 そこでエセルも王太子に対抗すべく、狩った肉を空間から取り出し、急遽、外に出てバーベキュー大会を始める。もちろん、危なかないようにと怪しい家の周りに不審者や魔物が入り込めないように結界を張る。もちろん、王太子の影さんたちは出入り自由にしておく。結界魔法できっちり閉じてしまうと空気が薄くなり二酸化炭素中毒になると怖いのでこっそりと換気扇をイメージして空気の出し入れができるように条件を付ける。ついでに出す空気の方もバーベキューの匂いの消臭機能もつけておけば完璧。匂いにつられて変なものが来ないとは限らないものね。


「お腹すいたでしょう。一杯食べてね」


 ふふふ、子供たちの目が輝いてお肉にかぶりつく。捕まっていた間はろくなものを食べられなかったらしく、食欲が旺盛だ。やはり、人間は胃袋から掴むに限るとエセルはにっこりと笑顔を振りまき、気が付くと何故かその中に王太子とその影さんたちが混じっている。みんなおいしそうに和みながらお肉を食べている。まあ、お肉はたっぷりと王太子と二人で森の中を狩りまくったから人数が増えても問題はない。問題はないのだが、やるせない思いがするのはなぜ?癪に障るから、お肉にかぶりつく。ああ、やっぱり、お肉はおいひい、幸せ。




 バーベキュー大会が終わると影さんたちは、この場に残り、取り押さえた人間たちの素性とこの怪しい家についていろいろと調べ始めた。王太子とエセルは子供たちからも事情を聴き、親のいる子供たちは親元に戻し、親のいない子供たちは王都の王妃様直営の孤児院へと送り届けさせる手配をするつもりだった。


 子供たちは捕まっていた場所から解放されてなおかつお腹も満たしたので、すっかり口が軽くなっていた。彼らが言うには、親がいる子たちは領主が税金の代わりにと無理やり親元から連れ出されたらしい。親がいない子は、それを嫌がった親が子供の目の前で親を殺してまで連れてきた子らしい。なんて酷い。ここの領主は鬼か?子供たちは奴隷として裏社会の奴隷市場に売られることになっていたという。


 王太子と二人顔を見合わせる。奴隷制度はこの国には基本的に存在しないことになっている。非合法の裏社会があることは知っているが、領主が税金の代わりに子供を奴隷に売るなど言語道断だ。いやそれよりも、親から無理やり子供を引き離して、言うことを聞かなければ、親を殺してまで連れてくるってどうなの?そんな非人道的なことがまかり通る世の中では、いずれこの国は亡くなる。それが一番怖い。


 ゴミ(腐敗貴族)どもよ、ノブレス・オブリージュという言葉を知らんのかと言いたい。まあ、貴族の矜持というものを持っているならゴミ(腐敗貴族)にならないか。


 王太子は難しい顔をして黙り込んでいる。どうもこれは彼が知らなかった事実らしい。国内や国外にたくさんの影を放って、いろいろと情報を探っている彼にしては珍しい手落ちだ。今まで、どれだけの子供たちが奴隷として売られていったのかわからないし、領民まで殺すとあってはこのままにしてはおけないだろう。


 エセルは頭の中に地図を思い浮かべる。この辺りはグランデ伯爵領だ。つまり、彼が黒幕ということなのだろうか?王宮で見た伯爵は穏やかな微笑みを顔に張り付けていた。あの顔の裏側でこんな悪逆非道を行っていたのかと思うと憤りを隠せない。


「おい。まだ、彼の仕業とは決まってないぞ」


 ん?いつから、王太子は人の心を読めるようになった?


「馬鹿者、お前の顔に書いてあるわ」


 ええと盛大にエセルは驚いてみせる。そんなに自分の表情は豊かだったのかと?掃除(潰すともいう)してきた貴族のご令嬢たちからは「愛想なし」とか「鉄面皮」とか言われてきたが、それは彼女たちの間違いで、実はエセルは表情筋が軽やかに動くタイプだったのかと悩む。それは女官としては致命的な欠点ではないかと。


 いやいや、それ以上に公爵令嬢としては不味い。今までは、身体の弱い公爵令嬢で社交界に出ることはなかったが、いずれは王太子の婚約者として夜会や茶会などの社交の場に出なければならなくなる。貴族同志の足の引っ張り合いという荒波の中を泳ぎ渡るには笑顔を張り付け、どんなことが起きても涼しい顔で過ごすことが求められる。表情筋が豊かすぎたらすぐに足元を掬われる。これは実に困った事態だ。


「一応言っておくが、俺だけしか、お前が何を考えているかわからんと思うぞ」


 脱力したように言う王太子。なぜ、ここまで彼はエセルの心が読めるのか?解せぬ。



すみません、いつもつたない文章で情けないなあと思っております。読んでくださるだけでとてもうれしいです。

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