ご令嬢とのバトルもしくはゴミの掃除ともいう
前回ノリで書いたのが短編でしたので、連載に変えることができなかったのですみません。
王太子からの任務
まずは親があまりにも黒すぎて面倒で邪魔な婚約候補たちの親ごとの抹殺。
「つまり、ゴミ掃除ですね。掃除魔法は得意ですから、お任せを」
と軽く請け負った。
昼食用のワゴンを運ぶ途中、思いっきりぶつかろうとした貴族のご令嬢、もちろん、常に探索魔法でどこに誰がいるか確認済みなので、彼女の気配を感じた瞬間に方向転換。ついでにそっとドレスの裾を踏んでみたので哀れぶつかろうとしたご令嬢は勢いよく床とキスをした。鼻から血が流れていたようだが、得意のスルースキルで放置。床の掃除しとけよと言いたいが、後で掃除魔法を使っておこう。
王宮の舞踏会では、女官は忙しい。その理由は貴族ご令嬢のお得意技。わざとワイングラスをライバルのドレスにこぼしましたがあちこちで行われる。なので洗濯魔法の染み抜きをその場で何度も披露させられた。「これは役に立つだろう」とそこでなぜかどや顔をする王太子からご褒美のキスを頬に受ける。どこがご褒美なんだ。王太子よ、わざとだな、絶対にわざとだな。ご令嬢たちの殺気による視線が痛い。その殺気がいつか目からビームの殺人光線に変わる日が絶対に来る。
それからは集団嫌がらせ。気配を感じたら、殺られる前に隠密スキル発動。「私は壁、私は壁」と口の中で呟きながら、集団がいなくなるまで待つ。最初は、嫌がらせと言っても他愛もない口撃だけだったのだ。口だけなら耳栓しておけば、何の苦痛もない。最初のころは興味半分で聞いてみた。「下賤な身分」とか言われたら、心の内では「公爵令嬢ですが何か?」と突っ込む。「身の程をわきまえろ」と言われたら「お前がな」と心の中で言う。
流石に「身分が低いくせに王太子殿下のそばにいるなんて恐れ多い」とか言われたときには「仕事ですが何か問題がございますか?」と冷静に突っ込んでみた。その時は王太子が通りかかったふりをしてわざとやって来たので真っ赤なリンゴが幾つも出来上がり、何かもごもごと言いながら去って行った。それはそれは実に下らない口撃だった。
エセルが思ったよりも強かすぎたために彼女たちの嫌がらせは今度は口撃から体罰へと進化した。集団で小突き倒す。結界魔法をかけておいたので痛かったのは彼女たちだと思うが、結界魔法をいちいちかけているのは面倒になったので、相手をせずに壁になることにした。彼女たちは急に消えたエセルに焦っておろおろきょろきょろと挙動不審になり、誰かが悲鳴を上げると蜘蛛の子を散らすように逃げた。お化けとか何とか言っていたが、ここにいますが何か?
「ちょっとそこのあなた」
高圧な態度で話しかけてきたというか、取り巻きを連れて人数で責めてきたというか、一応、王宮の女官に対する態度ではない。大人数で取り囲みエセルの周囲を人垣で固めて、見られないように人影のないところまで連行するって貴族のご令嬢たちはどこかのスパイか何かなんでしょうかと遠い目で訴えたくなる。
まあ、仕方ないか、王太子専属女官はエセル一人。常に王太子のそばに侍り、王太子お気に入りの愛人という噂も出ている。もちろん、その噂の元をばらまいたのは当の王太子本人なのだが。何のハニートラップかと文句を言いたいが、実は面白いこの状況を楽しんでいる自分がいた。
最初は脅迫まがいの勧誘だったが、冥土の虎の穴時代にいろいろとあり、エセルと同じく変装した王太子本人と知らずに会っていた事実を知らされ、彼の前でいろいろとやらかしていたことも知られていた。もうこれは開き直って腹を括るしかないし、料理人を目指すよりも腹黒王太子の極秘任務の方が面白そうだったので話に乗っておいてよかったかもと思う。
任務の発動により、王太子の政務中にも関わらず常にエセルの位置はなぜか彼の膝の上。おい、これって何の罰ゲームと言いたいくらい。恥ずかしい。本来ならば、女官は仕事中は壁になるはずなのに、前世でのバブルという時代にあったという社交場(ジュリ○ナ東京)に羽扇を手にして、お立ち台で踊っていたボディコンの女性たちの様にただ今絶賛目立ち中。
女官のお仕着せも任務によりエセルは今は特注品を着ている。派手派手な真っ赤な身体密着タイプのチャイナドレス。この世界にもチャイナドレスってあったんだと着せられた時には涙目になりながらも何気に現実逃避した。いわゆるボンッキュッボンの身体がわかりやすいのだが、胸はかなり詰め込んでいますが何か?胴回りのお肉は数日の地獄の絶賛ダイエットにより、削りましたが何か?貴族のお嬢様方にはない理想の体型を半ば強制的に特注のボディスーツで作りましたが何か?もちろん、顔も髪も別人仕様ですが何か?ついでに色っぽく泣きぼくろも付けてみたのは御愛嬌。
ここでやはり、あの前世のアキ○の有名なカフェのメイドさん張りに「ご主人様~~」と甘ったるい声をかけた方がいいのだろうかとしばし悩む。ハニートラップ。それはとてもおいしい罠。
昼食も「はい、あ~~ん」とか王太子専属の女官の仕事って一体何なんでしょうねと聞きたくなるバカップルぶり。給仕の顔が少し赤くなるのは造り物の胸を見ているからか?相変わらずの指定席は王太子の膝の上。食べているのはもちろん王太子のみ。彼のお口に餌付けのごとくご飯をいそいそと入れているのはエセル。絶賛ダイエット中の身では食べることを許されず。お腹の泣きが入りそうな頃に味もそっけもないカロリーほぼゼロの寒天で作った携帯食料をこっそりと口に放り込む。
お肉食べたい。じゅるじゅると涎を垂らしそうになるが、そこは我慢。任務が無事に終わったら、好きなものをたくさん作って食べようと決めている。そこになぜか王太子とその影の側近たちが加わっているのはなんでだ?まあ、みんなが知り合いだし、任務終了の打ち上げパーティだと思えばいいのだが、料理するのは大好きだし、美味しいものをたくさん食べたいし、極秘パーティのお金は王太子の個人資産から出るらしいから、いくらでも贅沢し放題。と思っていたら、そこは何か感じるところがあったのか王太子に睨まれた。うう、食い倒れにならないように気を付けよう。贅沢は素敵だが、元金(王太子の個人資産)が無くなったら贅沢はできない。何事もほどほどだよね。うん。
そんなわけであっさり釣れました貴族のご令嬢たち。まるで入れ食い状態。さて、どんな仕掛けをしてくるのかワクワクと期待していると、連れて行かれたのは車寄せ。はいはい、これは誘拐拉致って奴?邪魔者は消せってか。家紋の無い馬車に乗せられて王宮を出る。行き先はどこ?
ご令嬢たちは直接手を下す必要はなく、集団で邪魔者を排除しただけ。あとは殺すか、非合法の奴隷市場なりなんなりに売り飛ばせと言うことか?
おバカだなあとエセルは思う。このことは得意の生活魔法で逐次王太子に報告済み。別名掃除機兼透明糸電話。魔法はイメージだという。空気の振動って便利だよね。掃除の要領で風を操り、この状況を掃除機の要領で王太子に直接届けている。つまり吸い取った情報(ご令嬢たちの実態)を糸電話並みに空気の振動を使って集めたごみ(情報)を掃除機本体(王太子)に届けたというわけ。いやあ、生活魔法チートすぎってどや顔をしていたら。「普通はこんな使い方はしないと思うぞ」と王太子からも褒められ(呆れられ)?今頃加担したご令嬢たちの運命や如何に、まあ、エセルの任務に後始末は関係がない。
馬車の中には誰もいない。とりあえず、一息つこうかとあの前世で有名な猫型ロボットの四次元ポ○ットなみの空間魔法で作った空間(一応は仕切りを作り何が入っているかわかりやすく仕分けしておいた)からマグカップを出し、水筒に入れておいたカフェオレを注ぐ。時間凍結しているから、淹れたてのごとく美味しい。空間魔法は冷蔵庫の応用。料理魔法には冷蔵庫って必要不可欠よね。ついでによくある魔法の時間凍結もできるかなあと試したら出来たもので、お茶の時間にいちいちお茶を入れるのが面倒になり、水筒にいろいろな種類のお茶を美味しい状態に淹れて用意し、それにお茶うけに美味しいお菓子をたくさん作り、三時のお茶の時間に空間から王太子に出したということをやらかしたときに「なぜか、時空魔法まで使えました」テヘッ、ペロって笑ったら、これもまた王太子から「生活魔法はなんでも有りか」とか突っ込まれましたが、そこはスルースキルを行使。
すっかり馬車の中で和んでいたら、いつの間にか目的地に着いたらしい。馬車に揺られるので、お尻の痛み緩和にクッションを出して、寒くないようにひざ掛けをかけ、すっかり寛いでいたことを忘れていた。
馬車のドアが開いたら、目が点になった男たちがいた。苦笑いで誤魔化しながら、「とりあえず、仕切り直しね」とドアを閉めて、空間に片っ端から私物をしまい込んだ。
「おまたせしました」
とドアを開けてにっこり優雅に微笑んで「さあさあどうぞどうぞ、どこでも付いてきます」って言ったら、逆にどん引きされた。なんでだ?
しばらく沈黙した後、男たちは馬車が止まってからのことを見なかったことに決めたらしい。最初の予定通りにエセルを縛り上げたあと、これ以上余計なことを言わせないようにという配慮らしく、猿ぐつわをかませて目隠しをして、どこかのお屋敷の一室に監禁することにしたらしい。
即、殺すつもりはないらしいので、縛り上げられる前にこそっと結界魔法をかけておいたので、相手にしてみれば、きりきりと縛り上げたつもりだろうが、イメージで結界の厚さを広げていくたびに縄が千切れる。やはり、生活魔法チート便利。猿ぐつわも目隠しもとり、得意の身代わりロボットを使い縛り上げられたエセルを造り出す。逃げ出したと思われたら、困るからね。
隠密スキルと前世の黄色い電撃モンスターの得意技高速移動、これも生活魔法(時間短縮)を駆使しつつ、屋敷の探索を始める。探索魔法で人の気配を感じたら壁になる。地道にその繰り返しを続け、この屋敷にある怪しいものを探し出す。探索魔法について王太子といろいろと模索した結果、チート利用が可能になった。つまり、敵の人間の気配を感じる場合は赤ランプ。反対に味方の人間は青ランプ。こちらが探している黒い人間のあくどい証拠となるものは黄色ランプ。そういった色分けのランプで示してくれるので楽でいい。
因みにここは王太子の後援者でもあり、エセルの次の婚約者候補である侯爵令嬢の実家だ。実はこの侯爵家は第二王子の影の後援者でもあるだ。ゆえに本当は彼のご令嬢は第二王子の婚約者として内定している。それを公にしないのは侯爵自身が欲深なせいだ。つまり、娘の婚約者がどっちに転んでもいいようにと保険をかけているらしい。二兎を追うもの一兎も得ずという言葉を知らんのか?
エセルを殺すでなくこの屋敷に連れてきたのは、溺愛されている王太子の愛妾の命と引き換えに王太子の座を奪い取ろうと画策したようだ。
あの侯爵令嬢も頭の中身が異常に軽いくせに悪だくみだけは上手いのは、血筋というわけか。侯爵令嬢も馬鹿だ馬鹿だと思っていたけれども、親もこれほど馬鹿だとは思わなかった。王太子の仕掛けたハニートラップは本当においしい罠だった。駒の一つであるエセルが交換条件に値するとでも思っていたのかと情けなくなる。ちょっと現実見ようよと諭してやりたい。こんな誰にでもわかる簡単な罠に思いっきり飛び込むお馬鹿がいたとはと執務室で侯爵がいろいろとやらかした証拠の書類を見つけつつ、エセルは一人意識を遠くに飛ばしかけた。
普通はこんな悪事の証拠と言えるものは隠し金庫とか、隠し部屋とかもしくは信頼のおける場所に預けておくとかするものではないだろうか?自分の屋敷の執務室に無造作に置いてあるっていうのは、悪事を是非に暴露してほしいということなのだろうか?そこまで殊勝な人間が悪事をするっていうのもねえ?もしかして、あれか、隠し事をするときは「木の葉を隠すなら森の中」を実践しているのか?その割にはあまりにもむき出しになりすぎて、誰かがわざと置いておいたような………これは考えたら負けだと思う案件だ。王太子が別枠で雇っている影の人の仕業かも知れないと思うことにしよう。とりあえず、生活魔法で全部コピーを取り、コピーを放置、本物はまた掃除機の要領で王太子へと送る。あとで何か言われるかもしれないが、散々やらかしているので通常運転。
必要なものを手に入れればまた元の部屋に戻る。あとは王太子たちの手腕に期待しよう。空間からまたクッションとひざ掛けなどを出し、身代わりロボットをしまい込む。部屋に結界魔法をかけてついでに防音効果も付ける。最近、お気に入りの恋愛小説を片手にカフェオレを一口飲んで、まったりとする。至福の時間だ。
のんびりまったりと過ごしていると、ドアを開けた王太子が呆れた顔をしていた。
「あ、終わりました?」
「お前は………まあ、いい、帰るぞ。うまいもんを作れよ。皆が期待しているからな」
部屋の中の私物を空間に放り込んで、王太子たちと王城に戻る。さて、これから打ち上げパーティの準備だ。これがあるからこの任務は辞められない。美味しいものをたくさん作ろう。料理人になりたいという希望はこの打ち上げパーティで少し叶えられた。このために準備しておいた高級食材を惜しげもなく使おう。今日は無礼講だし、楽しみだ。王太子は部下の慰労のためならお金を惜しまない。なんて太っ腹だ。これが国民の血税なら文句を言うが、彼の個人資産なので問題なし。
前にこういうパーティで彼の影の側近さんに彼の個人資産についてこそっと話を聞いたら、王太子の奴、なんと個人で商会をいくつか作ってかなりの金額を儲けているらしい。なんて奴だ。エセルのことを規格外というが、彼の方がもっと規格外だと思う。王太子が個人で商会を作り、金儲けしているってどこの世界にいる?あ、ここにいたか。王太子、侮れない奴。
ノリで書いたもので、語彙や文章力が乏しく自分でも力不足を理解しておりますが、趣味で書いたので、いろいろと設定とかご都合主義になっています。下手な文章ですが、読んでいただけるだけでとてもうれしいです。