コツン
寒空
駅まで5分
前を歩く学生と学生
手を繋ぎお互いの存在は近く
それを確かめるように
1人歩くこちらを見て
また視線を前に戻す
そんな季節だ。
交差点
信号待ち
吐息はすっかり白く
マスクのせいで
メガネが曇る
時間が経てば
徐々に視界は開けるけれど
生きてる証拠だ吐息
また曇る
青信号
初めの一歩出遅れる
曇っているせい
そんな季節だ。
電車
座席は埋まってる
スーツ姿の皆さま
今日も頑張ったきっと
お疲れ様です
右手で手すりに掴まる
空いてる左手
電車の中でも手を繋いでら
学生と学生
羨望の眼差し
そうだ
羨ましい至極単純
ちらっと自分の前
下向きボブ女性
お疲れ様です
この人は
1人
この人は
ここまで
どんな気持ちで来たんだろう
目を閉じている
おそらく気づいていないな
目の前の僕に
この人は
どんな顔だろう
普段は
どんな人なんだろう
興味が沸々と
つま先にコツンと
足を当ててみようかな
いや
寝てるところ
お疲れなんだろう
うん
でも邪な心がふっと
勇気を出してみようかな
うん
何の勇気だ
これは勇気か
勇気じゃない
欲が溢れ出そうになっているだけだ
分かっていても
心と体は不一致
…
コツン
…彼女が目を覚ます
顔を上げ…
ヴィーン
…あっ
降りなきゃ