四章 その一
次の日も、学校は休みだった。といっても、騒ぎをうけて休校になったわけではない。単に土曜日だからだ。
太陽はすでに高い。時間は正午を回っているというのに、俺はベッドに寝転んで昨日のことを反芻していた。
反芻と言うより、反省かもしれない。心は半壊気味だ。
だけど、今の気持ちに何より一番近いのはきっと、後悔、だろう。
やってしまった。あんな言い方、するつもりじゃなかったのに。
やりようなんて、いくらでもあったはずだ。だというのに、なんで俺は、あんな最悪に近い方法をとってしまったのか。我ながら酷すぎる。
頭に血が上っていた、と言ったら、言いわけになるだろうか。
どう考えても、昨日の俺は正気を失っていたとしか思えない。それくらい、自分らしくない激昂っぷりだった。
一晩寝て起きれば、さすがに頭も冷える。冷静さを取り戻して最初に思ったのは、アンジュに謝らなくては、という使命感にも似た思いだった。
「アンジュ」
ベッドの上から、パソコンに向けて声をかける。つけっぱなしのディスプレイは、スクリーンセーバーが虚しく動いているだけだった。
実は今朝から何度も呼びかけているのだが、結果はこの有様だ。
幾度となく彼女の名を呼ぶ。だが発した言葉は、何かに吸い込まれるように消えていった。
朝からずっとその繰り返しだった。そして気がつけば、もうこんな時間だ。
別に、アンジュが本当に姿を消してしまったのがショックなわけではない。もともと根無し草のような奴だったのだ。いつかはこうなる運命だった。それが唐突だったから、少し驚いているだけだ。
そんなことは、とうに理解している。そのはずなのに、どうしても心の中には、もやもやとしたものが依然としてわだかまり続けていた。
せめて、姿だけでも見せてくれれば。そう祈らずにはいられなかった。
いつか離別の時が来るにしても、そのときは堂々と、笑顔で送り出したい。
あんな喧嘩別れのような「さよなら」では、俺だって納得できない。
だから、アンジュ。
お願いだからもう一度、その姿を俺に見せてくれ。




