↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/35

三章 その六

 教室前は、阿鼻叫喚の地獄絵図だった。

 泣いている女子がいる。興奮して叫んでいる男子もいる。携帯電話で写真を撮ろうとする不謹慎な奴も、気持ちが悪くなって嘔吐する奴も。

 そんな生徒たちの人だかりを遠ざけようと、五人ほどの教師が体を張って教室を塞いでいた。岸川先生も、普段の穏やかさからは信じられないくらい声を張り上げて「みんな、戻りなさい! 解散、解散!」と怒鳴っていた。きっと放課後じゃなかったら、もっと沢山の野次馬が集まっていたに違いない。

 ほんの少しだけ開いている教室のドアの向こうに見えたのは、首吊り死体だった。

 警察が来るまでは手を出さないつもりなのか、死体は天井から吊るされたままだ。

 その表情は、正しく断末魔。

 煮固めた絶望を目の当たりにしたように目を剥いて、その瞳からは流涙の跡が見てとれた。きっと体中の穴という穴から、あらゆる汁が漏れ出しているのだろう。つま先から滴っている液体は、果たしてどこの体液なのか。

 ドアの隙間は、ほんの十センチ程度しかなかった。だけど、それで十分だった。

 十センチしかドアが開いていなくても、どれだけ距離が離れていても、リアルな死体の衝撃は、決して薄まることなく、ダイレクトに俺の心を貫いた。

 隣で海法が何かまくし立てている。後ろから神達が俺の腕を引っ張っている。だけど俺の体は動かない。心も凍りついたように、動かない。

 まるではりつけにされた様に、もしくは魅入られたように。

 俺はその場から、一歩たりとも動くことが出来ないでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。