三章 その二
昼休み。俺は早速、行動を開始した。
まず、三年生の教室を訪れた。三年二組。部長が所属するクラスだ。
「失礼します。真田さん、いらっしゃいますか」
開けっ放しになっていた戸から顔だけ出して、教室内に呼びかけた。やはり上級生のクラスは緊張するが、そんなことは言っていられない。
ややあって「はいはーい」と軽快な声が返ってきた。そして目の前に、タレ目でふくよかな女生徒がトコトコと歩み寄ってきた。この人が真田さんか。直接話すのは俺も初めてだ。
「すみません、お昼時に。一年の三田村です」
「あー。君が新聞部の。心春のこと聞きたいんだって?」
彼女の言葉に、俺はこくん、と力強く頷いた。
そう。俺は例のサイトを調べるために、関係者から話を聞いて回ることにしていた。
俺にも何か手伝えることはないかとアンジュに相談したら「私が調べるから、初は適当に待っているといい」と言われてしまった。
ありがたい申し出だったが、本当に指をくわえて待っているだけなんて、とてもじゃないができない。何か行動をしていないと、いてもたってもいられなかった。
ネット方面はアンジュが調べてくれる。ならば俺は、別口から手がかりを探そう。そう考え、まずは色々な人から話を聞いて回ることにした。足を使うのは、ブン屋の基本だ。
そこで最初に声をかけたのが、椎野部長のクラスメイト――この、真田さんだった。
真田さんと部長が一緒にいるところは、何度か見かけたことがある。二人はそれなりに仲の良い友達同士だったはずだ。そうあたりをつけて、彼女に話を聞くことにした。建前上は、新聞部の取材として。
「ここじゃ何なので、お話は新聞部室でお願いできますか」
「おっけ。ちょっと待っててね」と言って、彼女は一旦自分の席まで戻って、小さな包を持ってきた。多分お弁当だろう。
「時間ないし、話しながら食べてもいいよね?」
真田さんは律儀にも後輩の俺に確認を取ってきた。「大丈夫です」と彼女に答えてから、自分の昼食について、何も考えていなかったことに気がついた。弁当は、教室に置きっぱなしだ。
ミスったなぁ。取りに戻るのも時間がもったいないし。仕方ない、我慢するか。
空腹を訴える腹を小突いて、俺は真田先輩とともに部室へと向かった。