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捏造エッセイ  作者: 里見
3/10

3.風土記について

※このエッセイは捏造です。

 実在の人物・団体・動物・行動・自然現象等には一切関係ありません。


「おお勇者(我が自治体の某地域に在住する兼業農家のセガレ。第一次産業への補償金とひきかえに無理難題をおしつけてやった相手)よ! よくぞ姫(我が家の花嫁修業中、ニートじゃないんだからねの長女)を魔界(夢あふれるねずみの国と海)の魔王城ラグジュアリーホテルより無事に連れ帰ってくれた!」



 王(私が住民税を納めている自治体の事実上のトップである今年で5期目の知事)と王妃(知事の奥様)が、城(血税を使って建てられた知事公舎)の大広間(玄関の三和土(たたき))で、側近(トイレの電球が切れたから買ってくるよう指示された地方公務員である総務部長。自主的な奉仕活動という名のもとに時間外勤務を命じられている)とともに笑顔で姫と私を出迎えてくれた。

 長旅(某ランドから知事宅までの長距離移動)を終えたばかりなので立ったまま話をするのは正直いただけない。

 だが、謙虚な日本人としては、自分から応接室(国外有名店から輸入した超高級応接セットがあると噂される居間)で座って話をしたいとは言い出せない。



「いえ当然の務め(遊びに行ったまま帰ってこない娘からもっと連泊したいので宿泊代を送金するよう連絡があったが、これ以上公費を横流しするとまずいので何とかして連れ帰るよう依頼された件)を果たしたまでです」


「聞いたか妃よ。なんと謙虚な物言いであろうか(できればこのまま補償金の件もなかったことにしたい)」


「その通りでございますね。ぜひ王太子(次の議員選挙に向けて秘書として修業中の浪費壁のある長男)に見習わせたいものですわ」


「私のようなものには勿体ないお言葉です(住民間でささやかれている黒い噂は事実らしい)」


「いいえ!いくら感謝しても足りないくらいです。私がこうしてここに居られるのも勇者様が魔王(某ランドの経営陣)にかけられた暗示魔法(某ランドと周辺ホテルに行くと金銭感覚がおかしくなる不思議な現象)を解いてくださったおかげです」


「そうですわよ、勇者様」



 私は疲れてるので早く帰りたい。この上辺だけの会話はいつまで続くのだろうか。



「陛下、姫様も勇者様もお疲れのご様子です。応接室でおくつろぎいただいたほうがよろしいのではないでしょうか?」



 側近(空気が読める総務部長)よありがとう。

 上の人がアレだと苦労するよね。じゃあ早速移動しようではありませんか。

 あ、そうだ。姫の荷物は宅急便で時間指定で送ったから。はいこれ控え。



「ところで勇者殿、褒美の件なのだが・・・どうであろう、姫を嫁」


「陛下、お話をさえぎる無礼をお許しください。

 私には将来を誓い合った相手がおりまして、里に帰り次第、式を挙げる予定となっております。

 式場・披露宴・新婚旅行の準備、招待状の発送、ウエディングドレスとお色直しのドレスも決まっておりまして、あとは私が礼服を着るだけであります」


「そ、そうであったか」


「勇者様!では城へ帰るまでの旅の間の優しい言葉の数々はいったい何だったのですか」


「高貴かつお美しい姫様に無礼の無いよう、精いっぱい務めさせていただいたのですが、もしご不快にさせてしまったのでしたら申し訳ありません(帰りたくないとゴネるあんたを宥めすかすために、どれだけ苦労したと思ってるんだ。知事から預かった資金で宿泊費を支払ったら残り少なくて、夜行普通電車とローカルコミュニティバスを乗り継いで帰ってくるときも、散々文句言ってたよな。だいいちあんたに農家の嫁がつとまるのか。超地方都市をなめるなよ)」


「そんな・・・(これ以上婚活せずに済むと思ったのに)」


「妃よ。姫は疲れているようだ。寝室に連れて行って休ませてやってはくれまいか」


「わかりましたわ陛下」



 激しく舌打ちした王妃と姫はご退室とあいなった。



「では改めて褒美の話をしよう。勇者よ、何を望む?」


「農業用水路の改修工事を。そして軽トラ20台、耕運機、田植え機、農薬散布用ラジコンヘリ、コンバインをそれぞれ1台ずつ最新型未使用のものをいただきたい」


「なんだと!いくらなんでもボッタクリすぎではないか!?」


「おやご不満ですか。今回の件をネットに投稿して炎上させてもいいのですよ。

 有権者はどう思うでしょうねえ。

 陛下は今期で引退を考えておられるのですか?」


「ぐっ・・・仕方ない・・・だがせめて少しマケてくれぬか」


「いいでしょう。私も鬼ではありません。では軽トラを10台に減らすことで手を打ちましょう。

 側近様(実は私の叔母の夫の弟)も証人になってくださるようですし。

 さあ、この書類にサインと捺印をお願いします」


「なにい!側近、きさまもグルか!」


「申し訳ありません陛下。私とて実家の母からの突き上げがきついのですよ」


「ぬぬぬ」


「陛下、ボールペンと朱肉と印鑑はこちR」



**



 突然パソコンのスクリーンが真っ暗になった。というか私の周囲が真っ暗だ。

 心霊現象だったらどうしよう。

 自慢ではないが私はたいへん怖がりなのだ。


「あなた大丈夫~。電柱にカラスが巣を作ったせいで、このあたり一帯停電してるみたいよ」


 妻が懐中電灯を片手に近付いて来た。

 そうか心霊現象ではないのか。よかったよかった。いや、よくない。


「ぬおおお。入力してた文章がオールクリアされた!せっかく地元の風土記を捏造してたのに」


「だからコマメに保存するようにって前から言ってるでしょうが。まあどうせくだらない内容でしょ。投稿されるサイトにとっても被害が減ってよかったんじゃないの」


 そんなことはない。断じてない。ないったらないんだ!きっと全世界で誰かひとりくらいは見てくれてるはずだと信じたい。・・・いるといいなあ。


※上記の文章は全て捏造です。


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