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三話 居た堪れない結末

三話 居た堪れない結末


ナルコレプシー。時と場所を問わず、急に強い睡魔が襲ってくる病気。僕は昔から、時々この病気が発病して意識を失うことがある。今回も、またそうだった。箕輪藤花の白刃が、僕の喉元に突き付けられた所で、僕の意識が途切れた。

「あ、気が付いた。よかったぁー。鵠くん、大丈夫?」

毎日見る天井。聞き慣れた声。よく知るメガネの縁が頬に当たる。温かくて柔らかいハグが、ここがミステリーブレイクの自室だと教えてくれた。でも……。

「店長……。那岐は!?箕輪は!?」

僕は死んでもおかしくない状況にいた。しかし、僕は生きている。店長が助けてくれたのか?それとも……。

「ちょっと、落ち着いて。……那岐は、死んでいたわ。箕輪?……本当に、なにも覚えていないの?」

僕の脳裏には、藤色の瞳。箕輪藤花が那岐を殺して、僕に刃を突き付けた事が鮮明に残っている。思い出しただけでもゾッとする。

「いえ、大体覚えてます。ただ、僕は、殺されかけて、意識を失いました。その後どうなったんですか?」

「ええ、あまりに帰りが遅かったから、心配で私も現地に向かったの。そこには、あなたと那岐が血だらけで倒れていた。幸い、あなたは寝ていただけだけど、那岐の息はもう既に無かった。私もうかつだったわ。最近はあなたの病気も出てなかったから。でも、流石は、私が色々と叩き込んだだけはあるわね。正確に、では無いけど、ちゃんと依頼はクリアされたわ。ゆっくり休んでね。これはボーナスよ。まあ、あなた勝手にバルカンの所で色々買い物したらしいから少ないけど、ね……」

依頼はクリア……?ああ、遺体とはいえ、那岐が回収出来たということか。でも、ヤったのは僕じゃない。

「店長、現場に僕の同級生が居たんです。何か知りませんか?」

「同級生?現場には、那岐の死体しか無かったわよ」

箕輪藤花は目撃されていないのか。でも、那岐の身体は箕輪の日本刀でかなり切り刻まれていた筈。発見と報告が任務だった僕の仕業じゃないのは一目瞭然。それを疑問に思わないで、任務完了か。何かがおかしい。ひとまず学校に行ってみるか。

「あ、まだ寝てなきゃダメよ」

「店長、大丈夫ですよ。大した怪我も無いですし、ちょっと気になる事があるんで、ちょっと外にいってきます」


僕が学校に登校したのは、昼過ぎだった。店長が気を効かせて学校に連絡してくれていたお陰で、今日は風邪ということになっていた。そして、クラスの僕の隣には、箕輪藤花がいた。

藤色の瞳と目が合った。意外にも、最初に均衡を破ったのは、箕輪の方からだった。「お前は、一体何者だ?」と。

「何の、事だ……」

質問の意味が分からない。こっちのセリフだ。箕輪、お前は、一体何者なんだ。

387回目の始業の鐘。廊下の奥から、かつかつとハイヒールの音が近づくにつれ、教室の温度が徐々に下がっていき、教室のドアが、がらがらと鳴る頃には、ひとつの静寂が作られていた。「起立!」

クラス担任の木花(このはな)咲耶(さくや)は、頭の上にちょこんと白い帽子を乗せ、そこには派手な装飾のブローチを飾っていた。細くしなやかな肢体に、身体の線がくっきり分かる、白いスカートスーツ。白く、どこか冷たさを感じる爬虫類系の美しい顔には、薄緑色で大きな切れ長の瞳を浮かべている。咲耶先生は、教室全体を一瞥し、出席簿を指でなぞりながら読み上げた。芯の強い女性という印象を感じさせるその声は、7番目に僕を捉えた。「(くぐい)あひる」

授業なんか耳に入る筈もなかった。隣には、昨日、那岐康介を殺害し、僕に殺気を向けた、正体不明の女。箕輪藤花が居るのだから。この女は、一体どういう神経でここに居るのか、何故、那岐康介を殺害したのか、聞きたい事が山ほどある。








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