表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚勢頼りの最強青年  作者: 月宮零次
1章 世界の謎
6/12

1‐6 到着

 少女、留美奈を連れた俺は、遠い街を目指していた。

 強化した視覚で見たせいか、近そうに見えても遠いのが実情だ。

 隣を歩いている留美奈は、ずっと家に閉じ込められていたせいか、たった3日間だけだが、路上で生活していたこともあり、相当に疲れているようだ。


「大丈夫か、辛かったら言うんだぞ」

「うん、わかった」


 さっきからこの会話の繰り返しだ。

 俺が心配性すぎるのかね……。


 歩いてから1時間は経った頃か、やっと、目的の街に着いた。

 入口には、壊れたまま腐りかけている看板が落ちていた。

 その内容は、“ようこそ、ルギッドシティに”。そう書かれているだけだった。

 暴徒にでも壊されたのだろうか、治安は悪そうだな。


「よし、まずは泊まれる所を探そう。それから、飯を食おう」


 と、言ってみたはいいものの。

 金がない、これでは異世界であろうと泊まれる所を探すのは不可能だろう。

 異世界でモンスターを倒せば手に入る、などという夢設定もありはしない。

 どうしよう、内心困っていた、その時だった。


「あれれ、旅人さんかな…? 珍しいね、こんな辺境の街に」


 慎ましやかな女性が声をかけてきた。

 見た目から察するに、俺と同年齢か、それ以下だろう。

 日本語が使えるのか? いや、異世界に日本語なんてマイナーな言語があるとは思えん、もしかしたら神様爺からの言語に対しての配慮かもしれないな。

 俺も言葉を返す。


「あの…唐突で悪いのですが…」

「何でしょうか?」

「この子にご飯を頂けないでしょうか、もう3日もまともな物を口にしていないんです」

「そうなの? それは大変ね、ちょっと待ってて、兄さんに言って来るから!」


 大急ぎで駆けて行き、暫くすると、戻って来た。


「うちに来て下さい。簡単な“魔法食”ですが、身体を暖めるにはちょうどいいですよ」

「ありがとうございます!」


 素直に頭を下げる。

 しかし、魔法食とは一体どういう料理だろう。

 優しそうな人だから毒を入れるとは思えないが、どうなんだろうか。


 女性に付いて行くと、どこにでもありそうな一軒家についた。

 遠慮しがちに家の中に入って行く。


「おっ、来たか。そこの席につけよ」

「お邪魔します」

「お邪魔します? 変わった挨拶だな、まぁ座れよ」


 活き活きとした男性が、食卓の上にある料理を見て言った。

 どうやら、言語に違いはなくとも、文化に多少の違いはあるらしい。

 魔法食なんて存在するんだから、分からんでもないが。


「ほら、留美奈。挨拶しろ」

「えと、お邪魔します」

「おう、たっぷり食っていけ!」


 留美奈を席に座らせると、俺も横の席に座った。

 対面には女性と男性の2人が座る。


「まず自己紹介からな、オレはディル・アナトール。この街では商人をやっている」

「わたしはラビィ・アナトール。兄さんとは2つ離れているけど、仕事を手伝ってるわ」


 外国人似の名前、ということは、俺もそっちに合わせた方がいいのだろう。


「手前はゲツヤ・アラガキです。この子は、ルミナ・ミヤシタ、ちょっと事情があって旅に出ています、それと、聞きたいことがあるのですが……」


 聞きたいのは勿論、魔法食についてだ。

 

「その前に、さっさと料理を食っちまおうぜ。話はそれからだ」


 俺の言葉を制すように言った。


「あ、すいません……」

「いえいえ、ゲツヤさんもルミナちゃんも遠慮せずに食べて行って下さい」

「うん」


 言葉を返す留美奈の目は既に食事に向いている。

 俺も少し腹が減った、まずはここで腹ごしらえするのがいいだろう。


「いただきます」


 手を合わせておじぎをする。

 留美奈は挨拶をすると、遠慮もせずにスプーンで料理に食い付いた。


「あ、留美奈、こぼしてるぞ。ほら、ちゃんと食え」

「ふふっ、兄妹のようですね。似てませんけど……」


 そりゃそうだ、俺と留美奈に血の繋がりはない。


「オレたちも色々聞きてーことがあるけど、まぁ、ゲツヤ君も遠慮しないで食えよな」

「ありがとうございます」


 俺もスプーンを手に取り、食事に手をつけはじめた。

 食い散らかす留美奈の面倒を見ていたせいもあって、ゆっくり食うことは出来なかったが、2人はそんな俺たちを微笑ましく見守っていてくれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ