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虚勢頼りの最強青年  作者: 月宮零次
1章 世界の謎
5/12

1‐5 神の子 (行間Ⅰ)

PV1200アクセス+ユニーク500アクセス突破!

嬉しかったので、続いて投稿します。

 これは、7年前の出来事。

 新垣月夜が、異世界に来る前までの話。

 とある男の、物語──。



□ ■ □ ■ □



 私は、街の中央に居座っていた。

 噴水付近にある砂場の中心で戯れる子どもたちを見守る。

 微笑ましい限りだ、あの少年、少女には未来がある。

 まるで悪意のない純粋無垢な心に、私は心惹かれていた。

 だが、それが悲しい。

 このような少年少女たちの笑顔を奪う計画を、私は実行しようとしているのだから。


「(さて、始めようか)」


 ゆったりとした動きで、子どもたちに接近する。

 1人の少年が、私の姿に気が付いた。


「お兄さん、だれ?」

「ただのしがない、革命家さ」

「革命家…?」

「そう、自分の価値観を人に押し付けようとする、悪者だ」

「お兄さんは、悪い人なの?」


 少年の言葉に、薄ら笑みを浮かばせた。


「ああ、だから、君たちは、私のようにはならないように生きなさい」

「……」


 何を言っているのか分からなさそうに、少年は首を傾げた。

 隣で呆然とする少女も、また、その意味は理解できていないのだろう。


「さようなら。次に会う時は、敵同士だ」


 少年と少女にそう言い、私はその街の外に向かった。




 数刻の時間が過ぎた。

 そろそろだ、腕時計を見て、そう呟いた。




 瞬間──巨大な爆発が、街中を包み込む。


「始まったか……」


 人に被害はない、被害があるのは、その街にある全ての家屋だけだ。

 勿論、家の中にいる場合は死ぬこともあるだろう。

 それに付随する、食料なども、当然焼き払われてしまうだろう。

 騒音が街の外まで流れ込む、悲鳴、喧騒、さまざまな声が重なっていた。


「(行こう……)」


 騒然とする街中に、私は入って行った。




 外から見ると、分からないものだが、中から見ると、その全てが目に映る。

 逃げ惑う人々、そして崩れ落ちる想像以上の家屋。

 全てが終わりを迎えた、その空間で、1人の男が避難を始めていた。



 ルギッド・アナトール。



 この街の町長を務め、そして、この街が腐った元凶。

 あらゆるコネを使い、この街の町長の座に居座った老害だ。


「どこに行こうというのですか」


 大量の荷物を持ち、避難を始めていたルギッドに語りかける。


「誰だ、キサマは!?」

「お察しを、この騒ぎを起こした者ですよ」

「な、なにぃ!?」

「そう慌てずに、街を見渡して下さい。見ましたか…? これが、あなたの街ですよ」


 焼け落ちるその全て、漆黒の黒煙に包まれる空をルギッドは見た。


「……何が目的だ、金か…!? 金なら渡さぬぞ…!」

「ふっ、面白いことを言う。自分の息子と娘の命より、金を優先しますか……」

「なっ……!? あの子たちをどうした!?」

「何もしていませんよ。あなた次第、ですがね」

「ここまで街で騒ぎを起こして、これ以上、何を求める気だ……!」

「救いを、全ての者に、平等の暮らしを」

「な……どういう、ことだ……!?」


 その意味を理解できていないルギッドは、先ほどの子どもたちと変わらない。

 思えば残酷な話だろう。

 街の住民の安全すら確認せず、金目の物を持ち出して逃げる。

 息子、娘などより金を優先する。

 そして、それ程の財力があるのに、重税で苦しむ人間に分け与えない。

 町長としても、親としても、そして人としても、腐り切っている。


「……さて、余興はここまでにしましょう」

「な……!?」


 私は懐から取り出した銃を、ルギッドに向けた。


「キ、キサマ……これ以上の暴挙は、神が許さぬぞ……!」

「ご心配には及ばない、神によって私は、この世界に導かれたのですから」

「……すると、キサマは、神の子……!?」


 神の子、それは面白い捉え方をしたものだ。

 引き金に力を込める。

 最後に、ルギッドが言い放った。


「キサマの名は、何だ……!?」

「──“キリスト”。とでも名乗っておきましょうか」

「キリ、スト……?」

「お休みなさい、そして、神の祝福を──」


 乾いた発砲音が、街中に響いた。

 断末魔をあげて、脳天に穴を開けられたルギッドが倒れ込む。

 それを気にする者はいない、大半の住民が避難し切ったその中で、少年と少女はいた。


「パパ、パパ……!」


 ただの肉塊に声をかける、少年と少女。

 私はルギッドの持っていた荷物に手を伸ばす。

 そして、それを持ち去って行った。


 最後に、少年がこちらを見たのに気付いた。

 ゆったりと、振り向いてやる。

 これが、物語の始まりだ。


「また会おう、少年」


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