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虚勢頼りの最強青年  作者: 月宮零次
1章 世界の謎
4/12

1‐4 救い

 少女の言葉には何よりも重みがあった、ただ、辻褄は合う。

 神様爺が気に入りそうな人生だろう。

 何よりこの決定的なまでの常識の無さ、それ等が全て決め手となっている。

 思わず、言葉を濁した。


「それは…大変な人生、だったな…」

「……? いつものこと、だよ……?」


 いつものこと。

 そう、この少女にとってはこれが常識なのだ。

 その純粋な瞳からは少女の残酷な過去が表れている。


「お前、ずっとここで暮らすつもりだったのか」

「うん」

「いつから、ここに居た…?」

「んと、3日かな」

「しょ、食事とかは…?」

「これ」


 そう言い、少女は木の実のような物をポケットから取り出した。

 取りだされた木の実は、紫色、そして毒々しい形をしている。

 俺の本能が手を動かす。


「バカっ! そんな見た目危なさそうな物、口にするな!」

「……!」


 少女の手から木の実を奪い取る。

 危なっかしくて見ていられない。


「返して」


 少女が手を差し出して来る。

 そもそも言葉は何処で覚えたのだろうか、テレビ辺りから吸収したのか。

 残酷だ、俺は今、残酷なことをしている。

 人とまともに触れあったことのない少女に、最低な行為を犯している。

 少女からすれば、自分のものを取った悪人にしか見えないだろう。

 だが、俺はそれでも絶対に返さない。


「返すわけねーだろ!」

「どうして…?」

「死んで欲しくねーからだよ!」


 大声で一喝した。

 少女は目を丸くしている。

 なぜだろう、何故、俺はこの女の子を見捨てられないのだろう。

 こいつとは会ったばかりで、何より無視して去ればいいものを、何故。





 俺は、こいつに生きて欲しいと願うのだろう。



「……わりーな、怒っちまって…」


 俯いた。

 こんな小さい女の子に怒鳴った自分に後悔した、嫌な気分だった。

 最悪だ…。そう呟いた俺を、少女は見据える。


「だいじょうぶだよ、心配、しないで……」

「そうか……」


 少女の慰めの言葉に、俺は決心した。


 得意の、虚勢を張る。


「俺が、してやる…お前を、この世界で不自由なしに生きられるように…してやる」


 確証などない。

 それでも、この少女を元の世界にそのまま帰すわけにもいかない。

 そして、このまま放っておいてやるわけにもいかない。


「俺に全て任せろ、俺についてこい…!」


 自分勝手な意見だ、少女の言葉すら聞かずに自分の意見だけを押し通そうとする。

 いつから、こんなバカな虚勢を張る人間になっちまったんだろうな。


「俺が、お前を救ってやる。だから、ついてこい」


 言い切った。

 俺のしたいこと、この世界で成さなければいけないこと。

 それ等全てを決意して、言い切った。


 少女はひたすらに目を丸くしている。

 だが、意味は伝わらずとも、少女は俺の手を取った。


「ありがとう」


 優しい目で、俺を見つめた。


 その後、俺たち2人は森を出た。

 そして、強化した視覚で全貌を見回す。

 街が見えた、そこで、こいつに普通の暮らしをさせてやろう。

 そう思い、俺は少女を連れ歩いた。

 異世界で少女を救う、バカげた話だ、だが、まだ俺は知らなかった。


 これが、旅の、始まりだということを──。

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