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虚勢頼りの最強青年  作者: 月宮零次
1章 世界の謎
3/12

1‐3 少女

少し予定より遅れましたが、投稿します。

 少女は俺を不思議な眼で凝視した。

 乱れた黒髪のツインテール、そして幼いその身体、小学生が良い所だろう。

 一見、ただの少女だが、所々擦り切れた傷の跡を見ると、何かしていたのだろう。

 虫取り…違うな、虫カゴも虫取り網も所有していない。

 ならば、何か。


「お前はここで何をしている」

「それは、こっちのセリフ」

「なに…?」


 少女から返された言葉は予想し難い物だった。


「ここは、わたしの家」


 ……?

 ここは、わたしの家。というのは本来の現代語で訳せ、ということだな。

 つまり、この木々が密集した虫だらけの楽園が、こいつの住居だと。

 信用できない。


「ここはお前の土地なのか」

「ちがう」


 ほらみろ、やっぱりそうだ。

 こいつは人の住居の屋根裏に、不法侵入したホームレスと何ら変わりはない。


「でも、わたしはここにいる」

「あのな……」


 一から順に説明する。

 人の土地に勝手に入ってはいけないこと。

 更にそこに住居を作って暮らしてはいけないこと。

 それ等をまとめて懇々と説明する。


「そうだったの…」


 納得したように頷き、少女は俺の言葉を理解した。

 ただ、問題はこれからだった。


「なら、わたしは何処にいけばいいの…?」

「そりゃ……」


 自分の家に帰ればいい、そう言おうと思ったところで口を噤む。

 そもそも帰れるなら、このような場所にいる必要はない。

 というか、こんな幼い少女が何故、森の中などで暮らしているのか。

 迷子、というのはありえる話か、とりあえずは名前から聞いてみよう。


「お前、名前は?」

「留美奈」

「国籍は?」

「日本」

「なるほど、そうかそうか日本か、俺と一緒だな……なに?」


 日本、だと。

 ちょっと待て、この異世界に連れて来られたのは俺だけじゃないのか。

 問いただしてみる。


「おい、お前…どうやって、この世界に来た」

「おじいさんに、つれてこられた」

「そいつはもしかして、ワシは神だ…とか、ほざいている爺のことか」

「うん」


 何てことだ。

 あの爺、気に入った人間を片っ端から異世界に送りやがっている。

 しかもこんな幼い少女まで送り込みやがるとは、何たる外道だ。

 初対面の人に殴りかかる奴並に外道だな。


「そうか…そういうことか…」


 1人納得する。

 だが、神様爺がこの少女を異世界に連れて来た理由は何なのか。


「(確か…俺の時は、お前の人生はこの世界には、もったいない。という理由だったな)」


 過去から要点を引きずりだす。

 つまり、神様爺が人を連れて来る理由は、そいつの人生が特別ってことだ。


「えーと、宮下。1つ聞いていいか」

「うん」

「お前、今までどういう風に生きてきた?」

「ただ、ずっと家にいただけ」

 

 ふむ、引きこもり気味の少女だったというわけか。

 もしかして、学校で虐めにでもあっていたのかもしれない。

 だが、そこまで特別な過去でもないだろう、普通にありふれている話だ。


 思案する俺を見て、少女は小声で呟いた。


「そう、ずっと…家にいただけ…」

「…どういうことだ?」

「わたし、外の世界のことはあまりしらない…ずっと、まどから見てただけ。ママとパパ、いつもいなかった」


 寂しそうな少女の目、徐々にそれが光を帯びる。


「だから、おじいさんが外に行っていいって言ったから、わたしは、ここに来た」

「……もしかして、お前……」


 もしかして、こいつは、生まれてからずっと家に閉じ込められていたのでは──?

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