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虚勢頼りの最強青年  作者: 月宮零次
1章 世界の謎
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1‐2 異世界

 神様と名乗る、(ハゲ)の力で異世界に強制転移された手前こと、新垣月夜。

 正直な話、異世界に来たといっても異世界特有の言語を話せるわけでもなければ、1人で自活できるほどの器量を持ち備えているわけでもない。


 皆、自分がもしも──異世界で最強の能力を得たら、こうやって生きる。と、夢見ていることだろう。だが実際、残るのは爺への不快感だけだ、覚えておいて損はない。


 さて、これからどうしたものか。


 普通、小説、ゲームの世界だと、手当たりしだい見つけた家に進入してタンスを漁ったり、壺を壊したりするものだが、生憎と、俺にそのような勇気はない。

 というか、何処からそのような勇気が出て来るのか。


 訪問した先が不登校児の家だったらどうするつもりだ。

 いきなり家に変な人が出入りして、タンスの中の見られちゃいけない物とか、壺の中に溜まったティッシュとかをぶちまけられたら、たまったものではないぞ。


 ああ、嫌な光景が目に浮かぶ…。


 閑話休題。


「ま、それはいいとして…」


 来ちまったものは仕方がない、この世界で成す目的など存在しないのだ。

 神様、もとい爺の言葉が脳裏を(よぎ)る。


「(力の使いすぎは、死に繋がる──か)」


 強化したばかりの腕を見る。

 少し念じる、が、強化した部分を強化する前に戻すことは出来ないようだ。

 ならば制御は出来るか、試してみる。

 落ちていた小石を摘み、手加減しながら力を入れる。


「…よし」


 小石は、程良い所で指の圧力に負け粉々に砕け散った。

 加減は出来るようだ。


「なら、次に成すことは…これしかねーよな…!」


 力の強化──俺は、足の強化を念じる。

 いざという時、もっとも必要になるのは力の強さではない。

 虚勢を張って生きて来た時からの教訓、どうしても俺のハッタリが通用しない相手には必須とされた力、逃げ足だ。


「(念じろ…!)」


 両足に強化の力を行き渡らせる。

 淡い緑色の光が俺を包み込み、数秒間、まとわりついた後に消滅した。


「さて…!」


 内心楽しみだった、強化した足の速さはどれ程の物なのか。

 ──走る!


 足は前に前に動いた、当然、視覚では追い切れない速さだ。

 ──転ぶ!


「どわあっ!?」


 草原にうつ伏せになる。

 そ、そうか、走るということは、別部分の運動能力がそれに付いて行かないといけない。例えると、俺がしたことは、世界大会に進出できる陸上選手の足を貰った小学生と同じだ。


「(となると…身体全体の強化が必要になるのか…)」


 腕の方も、近々、このままの身体で維持すると使い物にならないだろう。


「くそっ! あの爺、欠陥能力じゃねーか!」


最初から部分的な強化など期待できない。出来るのは全体強化のみ、ということだ。


「…仕方ねーな…1回、だけだ…!」


 足と腕以外の全体を強化するように念じる。

 なるほど、強化する面積が多いほど念じる時間も必要になるわけだ。

 淡い緑色の光が、さきよりも長い時間、俺にまとわりついていた。


 そして、解放された。


「これで、よし…!」


 気のせいか、先ほどより風の音が感じ取れ、遠い景色が見えるようになった。

 眼と耳の強化のおかげだろう、これも制御出来なければ、後々不便か。


「じゃ、気を取り直して…!」


 今度こそ、俺は走り抜けた──!




 草原をあっという間に走り抜け、移り変わる景色に俺は見とれていた。

 異世界か、案外、悪い物ではない。

 もしかしたら、ここで見つけられるかもしれない、俺の──、


「!」


 いつの間にか草原を抜けていた。

 木々が目の前に広がっている、眼の強化をしていなければ衝突していたかもしれない。


 ガサガサ! と音がする。


「…!?」


 草むらからの影。

 まさか、エンカウントでもしたのか!?

 魔物に虚勢を利かす余裕はないぞ…って、そういや、わざわざ虚勢を張る必要もないか。


 身構えた、強化した身体、初の実戦。

 敵の気配が感じ取れる、よし、強化された嗅覚と聴覚を使ってみるか。


 息遣いからすると、生物であることは間違いない。

 嗅覚で匂いを感じ取る、…女の子の匂いだ。


「女の子…?」


 まさか、森の妖精とかいうオチじゃないだろうな。

 一応、俺は男女とも殴る奴の分別は弁えているつもりだ。

 優先順位は神様爺を筆頭にしているが、殴る奴トップ3の中には老女すら入らない。

 ……少女の幽霊とかでは、ないよな…!?


 ガサガサ!


 何かが出て来た! スライムでありますように!

 ──眼を凝らす、やはり、少女だ。

 しかし、妖精でもドワーフでもエルフでも、ましてや幽霊でもない、正真正銘の人間だった。


「誰…?」


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