表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/16

彼女

 シャワー付きのネットカフェで夜を過ごし、朝から夕方は公園のベンチに座るという生活を繰り返した。メシは、その日によって弁当やらおにぎりやらサンドイッチやらいろいろ食べてみたが、やはりメロンパンが一番うまいと思った。特に、サクサクしてるメロンパンが好みだった。

 ルキは、夜になるといなくなり、朝になると戻ってきた。おそらく、狩りに行ってるんだろうと思う。そのことについては、ルキは何も言わなかった。


『この公園が好きなんですか?』

 いつもの公園でメロンパンを食べていると、ルキが不思議そうに訊いてきた。まあ、毎日毎日同じ公園で過ごす人間も変わってるかもしれない。

「まあな」

 俺はメロンパンの端っこの、一番サクサクしてる部分を味わいながら言った。目の前のマンションを見上げる。今日も、その部屋のカーテンは閉まったままだ。

 彼女はきっと今日も、薄暗い部屋で一日を過ごすのだろう。何もかもに絶望して、何もかもを拒絶して。


 今なら、彼女と話せる。今なら人間になったから、俺の言葉は彼女に伝わる。だけど会って、何を話すんだろう。何を言えるんだろう。


 俺はその部屋のカーテンを見つめ続けた。



 晩飯を買って外に出ると、ルキの姿がなかった。外で待ってると言ったはずなのに。たまにあることなので、今更気にしない。俺はそのままネットカフェに向かおうとして、足をとめた。

彼女はきっと今頃、マンションの屋上にいるはずだ。

「…。」

 俺はきびすを返し、もう一度コンビニに戻った。さっき買ったはずのお気に入りのメロンパンと、ミルクティーを買う。

 焦りのせいか緊張のせいか、手が震えてメロンパンを落としかけた。


 …会いに行こう。彼女に。


 きっと俺は何もできない。だけど、話してみたかった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ