表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/16

天使失格

 気持ちのいいそよ風が吹いて、頭上の木の葉が揺れた。それを見ながらそっと目を閉じる。風の音、木の揺れる音。それ以外は何も聞こえない。

 天上界は、今日も平和だ。と思っていたら、

「…エル!アズウェル!!」

 木陰で昼寝していた俺の方に、黒髪のフェインが飛んできた。フェインは翼をたたむと、走ってこちらに近づいてくる。足音が俺の耳元で止まった。

「お前またこんなところで仕事サボってたのかよ!なあ、そろそろやばいって…」

「なにが」

 俺は上半身を起こしながら、フェインの方を見る。ぼさぼさ頭で釣り眼の俺と違って、丸い目で黒髪のフェインはいかにも真面目そうだ。俺は笑った。こういう奴が、神サマに好かれるんだろうなあと思う。

「なにがって…アズウェルお前、このままじゃ天使失格になっちまうぞ」

 心配そうなフェインを見て、黙りこむ。

「なあアズウェル…、なんで仕事しないんだ?」

 黙りこんだ俺の顔を、フェインは覗きこんだ。フェインの着ている服が、光を反射して7色に光っている。

「ちゃんと仕事すればさ、神様も…」

「ははっ」

 俺は頭をかきむしりながら笑った。

「お前は本当に『天使向き』だな、フェイン」

 そう言うと俺は立ち上がり、たたんでいた翼を広げた。天使に与えられる翼は白い。俺は、この翼も嫌いだった。白い翼なんて、天使のことを綺麗に見せるための道具なんだと思う。7色に光るこの服も。天使が綺麗なら神サマもきれいな存在に見える。すべては、神サマの自己満足だろう。

「待てよアズウェル!」

 飛び立とうとする俺に、フェインが焦ったような声を出した。俺はフェインの方を振り返り、笑った。

「まあ、お前はせいぜい頑張れよ。『神サマ』のもとで、さ」

 何か言おうとするフェインを置いて、俺は飛んだ。行き先は決まっている。


 神判しんぱんの部屋。神サマの裁きを、受けるための部屋。



 神判の部屋に来たことのある天使はどれくらいいるんだろうか。少なくとも、俺が知っている限りではいない。滅多なことじゃないと、こんな部屋には呼ばれない。

 明かりも何もない真っ暗な神判の部屋に、神サマの荘厳な声が響き渡る。

『…久しぶりだな、アズウェル』

 俺は答えない。答えたくもない。

『何故、この部屋に呼ばれたのか分かっているな…?』

 天使としての仕事をしていないから。俺は心の中で呟いた。

『お前に訊きたいことがあるのだ』

 俺が返事をしないのは無視して、神サマが問う。

『なぜ、私の言うことを聞かなくなったのだ…?何故、与えられた仕事をしなくなった?』

「…ははっ」

 神サマの質問に、思わず笑ってしまった。何故?

「何故かって?そんなの簡単ですよ」

 俺は上を見上げた。真っ暗で何も見えない部屋だが、この上には神サマがいるはずだったからだ。俺はまっすぐ上を睨み、神サマに向かって吐き捨てた。

「あんたがクズだからだよ。神サマ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ