(7)ゴミ捨て場から始まる魔導具革命
第7話です。
今回は、村のゴミ捨て場から始まる魔道具回になります。
「こんな物、誰が使うんだろう?」という不用品が、
ルーナの手にかかると、ちょっと世界を揺らす代物に。
ゆるっとした日常から、
少しずつ“異世界の常識”が書き換わっていく回です。
どうぞ、気楽に読んでいただけたら嬉しいです。
カッポンギャアー!
カッポンギャアー!!
「どわあっ!!
なんだ?! なんだ、この変な音はっ?!」
バサバサバサッ…
「はん?!…なんだ、鳥かよ
って、また変な鳥だなぁ~?」
いつの間に寝てしまったのだろうか?
キョロキョロと周囲を見渡してみて、
日本の自分のアパートの自室ではない事を認識する。
窓の外には、飛び去る鳥のような魔物が。
「ああ、そっか ここは異世界だった…」
などと、ひとり呟く。
ベッドに上半身だけ乗っかり、
顔をシーツに伏せるように寝ていたようだ。
窓の外に居たのは…
クチバシがラッパのようになっていて、
それでいて足は獣のような?
鳴き声も、木魚を叩いたような声の後に、
まるで、尻尾を踏んずけた時の猫の叫び声みたいな、
鳥のような、鳥でないような。
なんとも奇妙な生物だった。
翼があって、空を飛ぶのだから鳥なのだろうか?
ルーナは、のそのそと起き上がる。
「ふわぁ~~~うみゃうみゃ…
いやぁ~体が軽いわ~流石は、若い体だな!
って、同い歳だったな
うわ、汚ねえっ! ヨダレだ」
ボリボリ…
ルーナは、左手で頭を掻きむしながら、
右手で頬に付いたヨダレを拭う。
そして、お尻をかきながら小屋の中をヨタヨタと歩く。
女の子らしからぬ姿である。
これも中身がオジサンだからだろうか。
「まったく、我ながら歳頃の女の子らしくないわな。
…って、歳頃なのか?」
自分が女の子らしくないと、
一応は自覚はある様だ。
そして、ついいつもの様に、髭を剃ろうと思い、
T字型の髭剃りを探しながら鏡の前に立ち、
自分の顎を手でさする。
「あれ? ツルツル…
そうだった…俺、女の子だった
女の子に髭なんて無いよな」
頭では、今の自分は女の子なのだと理解はしているが、
どこかでまだ、完全には受け入れられていないようだ。
「ははっ、髭剃りしなくていいのは楽だよなぁ」
ま、そんな程度である。
そして、顔を洗おうと思い、洗面所を探すが、
この小屋には洗面所なんて無い事を思いだす。
「!…洗面所、無いんだっけ?
ルーナって、今までどうやって顔を洗っていたんだ?
まあ、洗浄魔法を使えば済むことか クリーン!」
シュルルルル…
俺は顔に向けて、洗浄魔法の”クリーン”を発動した!
すると、シュルル…と小さなつむじ風が起こり、
顔がスゥ~っと、一皮むけたような気がした。
確かに、こうやって洗浄魔法を使えば済むことだ。
でも、やっぱり水で洗わなきゃ、スッキリしない。
「…なんだか、物足りないな」
そんな事をしていると、
レオの母親が朝食を持って小屋にやって来た。
コンコン!
「ん? あ、はーい!」
カチャ!…
「おはよう! ルーナさん
朝食、持って来てあげたわよ!」
「ありがとうございます!
レオ君の、お母さん」
「やだよぉ! いつもみたいに、
マティって呼んでおくれよぉ!」
「あははっ はぁい(汗)」
へぇ…
レオの母親の名前は、マティというのか。
元のルーナは、この人を名前呼びしていたのか。
でも俺は知らなかったんだから仕方ないよな。
「あれ? ソレは、なんだい?」
「はぁい? どれですか?」
「ソレ…」
「!…ああ」
マティが指をさしたのは、魔導ミキサーだった。
文字通り、魔力で動くミキサーである。
一見、ごく普通の電動ミキサーにしか見えないが、
異世界人にとっては、初めて見る代物だろう。
興味が湧くのは、自然な心境だ。
ミキサーの各部品は、
村のゴミ捨て場に捨てられていた物を流用。
大きなガラス瓶を容器に、
回転するミルカッターは、
フィールド・マンティスの腕の鎌を、
回転部の内蔵されたミル容器台は、白野菜から錬成、
動力はもちろん魔法である。
風属性の魔石の魔力で、刃が高速回転する仕組みだ。
全ての部品を、一から白野菜のみで錬成すると、
魔力の消費がハンパないので、
形ある物は、できる限り原型から少しだけ、
錬金術にて理想の形へ錬成させることで、
消費魔力を抑えることに成功したのだ。
そして容器の中には、切り刻まれたハーブ。
もう解るとは思うが、魔法薬の精製前の原液である。
すり鉢ですり潰すよりも、格段に早いはずだ。
それに、超楽チンである。
昨夜は、この魔導ミキサーを作り、魔法薬の精製まで
試験的にやっていたら、いつの間にか寝落ちしたようだ。
「あれは、魔導ミキサーですよ」
「まどーみきさー? なんだいソレは?」
「ほら、こうやって…」
ポチン! ギュウゥウゥウゥ~~~ン…
「あらあらあらあら!」
「ふふふ♪」
マティは、頬に手を当て驚いていたが、
一度実践してみせたら、魔導ミキサーとは、
どういうモノなのかを、すぐに理解したようだった。
「これは凄いねぇ!」
「えへへ 凄いでしょお~~~」
「ソレ、ちょっと貸してくれない?」
「………へ?」
おいおい、いきなりかよ?!
コレ、ひとつしか無いのだが?
「えええ? でも、コレひとつしか無いんですけど?」
「じゃあ、また同じ物を作ればいいじゃないの?」
「そんな無茶な!!」
また、同じミキサーを作るにしても、
また同じ不用品が見つかるとは限らない。
なので、同じ魔導具の量産は難しいのだ。
「じゃあ、ちょっと借りてくねー!」
「うわあ! 嘘でしょー?!」
ミキサーを貸し出すなんて
俺は承知していないのに、
マティは勝手にミキサーを持ち出して
大喜びで帰って行った。
中身が入ったまんまで…
「まったく、ムチャクチャな人だなあ?
まあ、三食たべさせてくれているんだから、
強く断れないよなぁ…(汗)」
俺は仕方なく、また新しくミキサーを作ることにした。
だって、一度楽をしてしまうと、
もう元の辛く不便な仕事になんて戻りたくはないものだ。
と、そのときだった!
フワッ……
「うおっ!?・・・・・・なんだ?」
一瞬、頭の中がクラッときた。
めまいがするほどじゃなかったが、思わず頭を抱えた。
すると・・・・・・
『あっらぁ~! 面白いものを作ったわねぇ?』
「んあっ!? で、でたな出鱈女神!!」
ルーナの頭の中に出鱈女神の声が響く!
『うんうん! でも、出たって言うのは少し違うわぁ?
だって物質的な肉体は無いんだから、
貴女に姿は見せられないんだもの・・・・・・』
「はぁん? どうでもいいよ! で、何の用だ?」
『ちょっと気になっただけよぉん』
「気になった? 何がだ?」
『ふぅん さっきのあの魔導具、あなたの国に
あった物を模して作ったのかしらぁ?』
「!・・・・・・そうだけど、それがどうした?」
『うぅん! 別になんてことはないわ!
ただ・・・・・・』
「・・・・・・? なんだよ、俺の方が気になるじゃん」
『ま、いいわ でも、作るのは構わないけど、
なんでもほどほどにね?』
「・・・・・・??? わかってるよ!
この世界に持ち込んで世界のバランスが
崩れるようなことにならないようにするさ」
『そうね! それが分かってるんならいいわ
でも、時々見に来るからねぇ~ん またねぇ~』
「見に来るだと?・・・・・・うぅむ」
そう言って、出鱈女神は帰ったようだ。
なんだったんだ?
ま、気にしても仕方がない。
俺は、ゴミ捨て場へ向かった。
・⋯━☞村のゴミ捨て場☜━⋯・
村のゴミ捨て場には…
魔物の使い物にならない部位だったり、
冒険者たちの壊れた武具だったり、
魔法薬精製専門の魔術師が使っていた壊れた容器だったり、
その他、家屋の修繕で出た廃材だったり、
壊れた馬車の部品だったり、
こんな小さな村から、よくもこんなにも沢山の
ゴミが出たもんだなと関心するほどだ。
なにせこの村は、王都に次ぐ大きな街から一番近い村であり、
その街の冒険者たちが、遠征に出る時や、
街に戻る時に休憩地としてよく利用してくれるそうで、
そのため、冒険者たちの出すゴミも増えるんだとか。
なので、時々掘り出し物があることも。
「何かないかなぁ?」
ガサゴソ…
「おっ! コレは使えそうだな!」
俺が今回見つけたのは…
「これは、冒険者が捨てたマジック・バッグ?」
それは、ショルダーバッグ・タイプの
マジック・バッグだった。
マジック・バッグとは、見た目よりも多く物を収納できる
とても便利な、収納魔導具である。
「ふぅん…特に問題なく使えそうなのに
どうして捨てちゃったんだろう?
普通に買えば、数百万チャリンはするだろう
まだ使えるのに、勿体ないなあ…
ま、そんな事なんて、どうでもいいか!」
その、マジック・バッグは、
長財布を2つ並べたほどの大きさで、
収納容量は、馬車1台分程度のもの。
鑑定魔法で詳細を見てみた。
・⋯━━☆★☆━━⋯・
《マジック・バッグ(ショルダーバック・タイプ)》
分類 ︰空間拡張収納魔導具
収納可能容量︰40000ℓ
収納可能重量︰10t
空きスロット︰100
スロット容量︰400ℓ
適正販売価格︰500万チャリン(500万円)
適正買取価格︰150万チャリン(150万円)
状態 ︰空間属性魔石にヒビが入っているため
空間属性魔法の発動にムラあり
・⋯━━☆★☆━━⋯・
買えば、500万チャリンほどする。
そうそう。この世界の通貨は、”チャリン”だそうだ。
貨幣は、全て硬貨である。
印刷技術が発展していないせいだろう。
100万チャリン=大金貨
10万チャリン =中金貨
1万チャリン =小金貨
1000チャリン =銀貨
100チャリン =銅貨
10チャリン =鉄貨
通貨を初めて聞いた時は、思わず吹き出してしまった。
鑑定では、日本円でも表記されていた。
日本円とほぼ同等で、つまりはこのマジック・バッグは、
日本で買ったとしても、500万円もするって訳だ。
ただ、調べてみたら、かぶせ(蓋)を開くと、
物を出し入れできる仕組みのようだが、
時々かぶせを開いても反応しない事があるようだ。
空間属性魔石に、ヒビが入ってるらしい。
電気製品で言うところの、接触不良のようなものか。
たっかあ~~~!!
こんなに、小っちゃいのに?
まあ、このマジック・バッグには、
それほどの価値があるってことだ。
「これは、良い物を拾ったぞ!」
俺はこの時、ミキサーの事など完全に忘れていた。
小屋に戻って、早速作業に入る。
・⋯━☞小屋☜━⋯・
カチン! コロコロ…
「おっ!取れた!
ふぅん…普通のクリスタルだよな?」
マジック・バッグから取り外したそれは、
ごく普通のクリスタルに見えた。
直径30mmほどの、なかなかの大粒だ。
俺は、魔石 (クリスタル)を鑑定してみた。
・⋯━━☆★☆━━⋯・
《クリア・クォーツ(クリスタル/和名︰水晶)》
属性︰魔力増幅/活性化/空間/浄化/光/水
状態︰ヒビが入っているため、効果にムラあり
対策︰錬金術により再錬成することで使用可能
・⋯━━☆★☆━━⋯・
「おおっ! まだ使えるじゃん!」
これは、本当に掘り出し物だったと思った。
20MP消費して再錬成してから、
魔物の骨から削り出した根付にセット。
根付も、ゴミ捨て場で見つけたものだ。
そして、新しい空間拡張魔導具として錬成した。
・⋯━☞詠唱開始☜━⋯・
「エコ・エコ・アザラク、
エコ・エコ…
--以下省略--
収納対象物は1つとする!
収納時には、”格納”と発言すると、
生成した異空間に対象物を取り込み、
取り出す時には、”搬出”と発言すると、
生成した異空間から取り出すとする!
さあ、魔法はかけられたり!
大地と海と…
--以下省略--」
・⋯━☞詠唱終了☜━⋯・
そして、新しい空間拡張魔導具は、あっさり完成!
収納対象物をひとつにしたのには理由がある。
収納物を無指定にすると、本体に顕現する
スロット数が、本体によって変動するため、
収納可能容量が少なくなる可能性があるらしい。
その理由は、収納物の種類数を増やすと、
収納物の大きさを、制限しなければならなくなるため。
つまり、収納物の種類を増やすと、
あまり大きな物は収納できなくなるのだ。
なので、あえて収納対象物をひとつに限定することで、
収納可能な最大のサイズの物を収納できるって訳だ。
「ふふふ 完璧!!
これで、最大のコンテナーの半分のサイズ
の物でも収納できるぞ!!」
この時ルーナは、この世界での収納概念を
覆すほどの発明をしてしまったことなど、
知る由もなかった。
ルーナは、小屋を出て魔導具を使ってみた。
・⋯━☞村の馬車置き場☜━⋯・
「何かないかな? お! これにしよう!」
ルーナが目をつけたのは、村で唯一の馬車だった。
大きさは、ワンボックスカーほどのもの。
ルーナは、馬車に向けて魔導具を発動してみる。
「ええと…格納!」
ヒュン!…
「うおおおおおおー!! 消えたぁ!
できたぁーーー!! いええーーい!」
「ああん? なんだ?」
「え? ルーナちゃんかい?」
「なにやら、嬉しそうだねぇ?」
村人たちは、ルーナがなぜ嬉しそうに
はしゃいでるのか知らない。
だが、たまたま村に来ていた行商人が居たのだが、
彼は、ルーナの使った魔導具を見逃さなかった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
魔導ミキサーに始まり、
今回は「収納」という分野で、
ルーナがやらかし始めました。
本人は便利になった程度の感覚ですが、
周囲から見れば、じわじわ危険な発明です。
そして最後に、それを見逃さない人物が一人。
次回から、少しずつ波紋が広がっていきます。
よろしければ、引き続きお付き合いください。
”マティ”とは、どこかの国の言葉で、”母”という意味だそうです。




