(27)ルーナ、捕まえすぎる
第27話です。
今回は、スライム回。 ……ですが、数がおかしいです。
益獣とはいえ、捕まえすぎにはご注意を。 そして、無自覚なやらかしは今日も健在です。
それでは、お楽しみください。
・⋯━☞ ハンドール公爵領 ☜━⋯・
・⋯━☞通称商業街マイーヤ☜━⋯・
・⋯━☞ 街の外壁の周辺 ☜━⋯・
ルーナとサミは、ハンドールから出て、
外壁を横目に左回りに歩いていた。
「……いないね?」
「いるよ!」
「ええっ! どこ?」
「そこら辺に、うじゃうじゃいるよ!」
「はあ? うじゃうじゃ?」
「うん!」
「そんなに、いるの? トイレスライムが?」
「うん! 隠れてこちらの様子を見てる」
「!……マジっすか(汗)」
トイレスライムとは、今でこそ”トイレスライム”と、
正式名称として登録されてはいるが、
かつては、”デビルスライム”と呼ばれ恐れられていた。
なぜなら、食べるのは魔物の死骸だけではなく、
大昔から、”獣葬”の文化が今でも残っている国もあり、
”人の死肉を食らう悪魔の獣”という認識だったという。
だが時は流れ、獣葬の文化もほとんど見なくなり、
デビルスライムの本来の生態も広く知られ、
今現在は、”益獣”として人々に認識されるようになり、
”トイレスライム”と、呼ばれるようになる。
だが、人間のように、肉、魚、果物、野菜などの、
何でも食らうものの汚物では、浄化のために
かなりのエネルギーが消費されるため、
特に人間に”トイレスライム”として飼われる個体は、
生涯に1度だけしか、分裂できない。
本当の好物は、”虹のキノコ”であり、
それを食べたなら寿命が伸びる効果がある。
……と、トイレスライムのステータスに、
”トイレスライムの歴史と生態”として紹介されていた。
「……って、ことで、今では”益獣”として
世界中で知られてるんだって!」
「へぇ~! ルーナちゃん、博識だね?
その話、いつどこの誰に聞いたの?」
(興味津々のサミ)
「へっ?!……あ、ああ~~~ん~~~
どこだったかなぁ~~~?
あっ! お姉ちゃんに、教えてもらったの!」
「!……そっかあ そうなんだぁ……」
「うんうんうん!」
(激しく何度も頷くルーナ)
『シリルさん! 嘘吐いて、ごめんなさい(汗)』
(心の中で、シリルに謝るルーナ)
まさか、ステータスで見た!なんて言えない。
どうやらこの世界の人達には、
”ステータスの概念”が、無いらしい。
ルーナとサミは、しばらく歩き続けると、
そこそこの大きさの湖が姿を現した。
その湖の周辺には、トイレスライムばかりではなく、
湖面がぷるぷると波打ち、緑や青や赤や橙などの
色とりどりのゼリースライムたちが、
うじゃうじゃとうごめいている。
一見すると全身に鳥肌が立つほどのおぞましい光景だ。
「ひぃいぃいぃいぃ~~~(怖)」
「は? ダメよ! 大きな声を出しちゃあ!」
「だっ……だって……(汗)
俺、沢山の虫が動くとか見ると、
気色悪くて鳥肌が立つんだよぉ~~~」
「ええ~~~?」
「うわあー! いやだあ~~~(泣)」
(まったく男らしくないサミ)
「乙女かよ!」
なんともはや……
ああ、サミよ……
スライム程度で怖気付くとは、情けない……
・⋯━☞スライムの湖☜━⋯・
うじゃうじゃうじゃうじゃ……
「っほぉーーっ! たっくさんいるねぇ~」
「うげぇ~~~気色悪いぃいぃ~~~(汗)」
「さっきから、うるさいわよ!」
「だってぇ~だってさぁ~~~」
「まったく……見損なったぞ?」
「がーん!……(凹)」
ドッ…ドタッ!……
サミは、ルーナの口撃に打ちのめされた。
そして、糸の切れたマリオネットのように、
その場に膝から崩れ落ちた。
「うそよ! うそ!
そんなこと思ってないから、元気だして?」
「ゔゔゔゔ~~~ん……」
(ダンゴムシのように丸くなるサミ)
「ダメだこりゃ……」
結局、ひとりでトイレスライムの捕獲に
向かうルーナだった。
トイレスライムは動きが非常に遅鈍で、
ルーナでも、あっさりと捕まえることができた。
各壺には、2匹ずつトイレスライムが入っている。
「何匹捕まえたんだ?
壺が、ひぃふぅみぃよぉ……
ええいっ! 面倒くさい! とにかく、いっぱい!」
実際には、72個の全ての壺に入っているので、
144匹のトイレスライムをゲット!
「ふふん! 壺が72個だから、72×2で、
全部で154匹のトイレスライムをゲットだぜ!」
「144匹だろう?」
「?!……そなの?」
「うん……」
「(*ノω・*)テヘ♡」
出鱈女神の迷惑な加護の力が働いているせいか、
ちと、計算が苦手になった、おバカなルーナだった。
「それよりさぁ、そんなに捕まえてどうすんのさ?」
「え? 沢山いた方が、その分沢山のスライムトイレが
作れるんだから、いいんじゃないの?」
「はあ~~~もぉ~~~正気かよぉ?」
「うん!」
この時、サミには話していなかったが、
ルーナは、日本でよく見る”公衆トイレ”を、
イメージしていたのだ。
つまりは、日本の公園にあるような、
誰でも使えるトイレを作りたい。
なので、大量のスライムトイレが必要だった。
家族3~5人程度なら、
1~2匹のトイレスライムで十分だ。
だが、ゴミ捨て場のような広い場所で、
不特定多数の使用するトイレとなると、
いったい何匹のトイレスライムが必要なのか、
想像もつかなかった。
なので、ルーナの行動は、
”備えあれば憂いなし”なのだ。
そしてルーナとサミは、冒険者ギルドへと戻った。
・⋯━☞冒険者ギルド受付前☜━⋯・
「ただいま~ペニーさん!」
「お帰りなさいルーナさん!
おや? サミさん、どうされたんですか?
なんだか、疲れきった様子に見えますが……」
「あ、気にしないで?」
「はぁ……そうですか」
「ゔゔゔゔ~~~」
サミは今でも、両腕を前に垂れ下げ、
口を半開きにヨダレを垂れ流し、
左右にゆらゆら揺れながら歩くその様子は、
まるでアンデットのような有様だった。
まったく、ルーナとこの街に来てからというもの、
サミは、とんだ災難続きの、踏んだり蹴ったりだ。
「あの、もしかして、
もうトイレスライムを捕獲できたのですか?」
「はあい! 全部で174匹です!」
「ひゃくななじゅ~よんひきい~~~?!」
「「「「ザワザワザワザワ……」」」」
ペニーが、驚くのも無理はなかった。
トイレスライムの捕獲といえば、
普通なら多くても、4~5匹いれば大収穫だ。
なら、ルーナはどうやって捕獲したのか?
「そ、そんなに、どうやって?」
「うん!
この壺の中にエサとなる魔物の肉片を入れて、
トイレスライムが、2匹入れば、
勝手に蓋が閉まる設定にしてるの!」
「へっ……今、なんて?」
「え? だから、この壺の中に肉片を……」
「いえいえいえいえっ!
そんな、高機能な魔導具なんて、
今まで聞いたことありませんよ!」
「……はぁい?」
そんなとき、
ギルマスの低い声が背後から響いた。
「また、やらかしたな? お嬢ちゃん」
「「ギルマス?」」
「ゔゔゔゔ~~~(泣)」
そんな話をしていたら、ギルマスがエンカウント!
ペニーの発狂にも似た声を聞き、でてきたようだ。
「えっと……そうなの?
私は、便利だからと思って……」
「はあい? ルーナさんが作ったの?!」
「え、え? あ、はい……」
「お嬢ちゃん、ちょいと奥へ来てくれるか?」
(チョイチョイと手招きするギルマス)
「……私、なにか、またやらかした?
なんか、嫌な予感しかしない(汗)」
「あゔゔゔ~~~(泣)」
こうしてルーナとサミは、
ギルド長室へ、連行された……
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
ルーナ的には「備えあれば憂いなし」。 ですが、世界的には「ちょっと待て」な回でした。
次回は、ギルド長室からお届けします。 サミの精神は、果たして無事なのでしょうか。
次話も、よろしくお願いします。
”ナズオール”とは、どこかの国の言葉で、”統括”という意味だそうです。




