(17)冒険者ギルドにおける無自覚魔力バカ幼女魔女の測定器破壊および現場混乱発生の件
※今回は、商業ギルドと冒険者ギルドを巡る回です。
前半は少しコメディ寄りですが、後半から一気に様子が変わります。
ルーナの「異世界あるある」が、まさかの事態を招く第17話。
どうぞお楽しみください。
ルーナとサミは、商業ギルドにやって来た。
・⋯━☞商業ギルド☜━⋯・
ザワザワ…
「おおお…」
「やっと、到着だな」
「うん」
(キョロキョロするルーナ)
「…ルーナちゃん?」
『いつもはもっとシッカリしているのに?』
本来なら、ルーナは何度も商業ギルドに来ているはずだった。
だがそれは“元のルーナ”の話であり、
中身オジサンの今のルーナにとっては、初体験も同然だった。
「…どうしたの? 受付は、コッチだよ」
「あ、うん」
(サミの服の裾を掴むルーナ)
「!…(嬉)」
実はルーナは、日本でも役所のような場所が苦手だった。
お堅苦しいと言うか、そんな雰囲気がどうもダメだった。
忙しげに歩き回るギルド職員たち。
『邪魔をしてくれるな』と言いたげな視線。
『早くしろよ!』と心の声が聞こえてきそうな顔をしかめた商人たち。
ざわついているものの、小声で交渉し合う様子がまた、
お堅苦しいという雰囲気を醸し出していた。
声をかける気も萎えると言うものだ。
ルーナは、そんな落ち着かない雰囲気にのまれて怖気つき、
耐えかねてサミの服の裾をそっと掴むのだった。
「大丈夫かい? 気分でも悪くなった?」
「うう…」
「…じゃあ、ギルド札の再発行の手続きをしよっか!」
「…うん」
テクテク…
サミが受付へ向かって歩き出すと、
ルーナもサミの裾を掴み、
頬をサミの腰に押し付けながら後をついていく。
・⋯━☞商業ギルド受付☜━⋯・
「いらっしゃいませ!
本日は、どのようなご要件でしょうか?」
「はい 実は、この娘が商人札を紛失してしまいまして、
再発行の手続きに来たのですが」
「左様でございましたか
では、仮の商人札をお持ちでしたらコチラに」
そう言って受付嬢が手を差し出す。
だがルーナは…
「…(硬)」
(緊張のあまりに、カチンコチンに硬直するルーナ)
「…?」
(微笑みながら首を傾げる受付嬢)
「ルーナちゃん?」
クイクイッ!
(ルーナの肩を揺するサミ)
「ひゃいっ!!
にゃん! にゃんでしーょか!」
ビシッ!
「「?!…」」
ビクッ!
「「「「ザワザワ…」」」」
ルーナは、肩を揺すられて思わず悲鳴をあげ、
自分でも訳が分からない返事をする。
サミと受付嬢は、ルーナのその声に驚き、
豆鉄砲を食らったかのような顔に。
直後ルーナは緊張が絶頂に達し、思わず直立!
「ぶふうっ!!(吹)」
「クスッ!(吹)」
そんなルーナが可愛らしく、そして可笑しくて、
堪らずサミと受付嬢は吹き出してしまうのだった。
「クスクス…ルーナさん?
もしかして、商人札を紛失した事に責任を感じて
咎められると思って緊張しているのですか?」
「へ…う…え?」
(キョトンとして目をパチクリ)
この時ルーナには、自分に向かって微笑む受付嬢が、
迷える子羊に救いの手を差し伸べる女神に見えた。
「大丈夫ですよ! 事務手数料は必要ですが、
特に罰則はありませんから安心して下さいね」
「…(照)」
(頬を赤らめ見惚れるルーナ)
「……?」
(そんなルーナの様子に困惑するサミ)
「では、手数料として、小金額1枚を頂きますね!」
「……(照)」
(まだ見惚れている)
「…ルーナちゃん?」
「………(照)」
(やっぱり見惚れている)
「…?」
(あれ?と思う受付嬢)
「ルーナちゃあん!!」
(ルーナを強く揺するサミ)
「はいーーーーっ!!」
ビシッ!
(サミの大声で咄嗟に敬礼!)
「「?!…」」
ビクッ!
「「「「!!…ザワザワザワ」」」」
「………あっ(汗)」
(ようやく我に返るルーナ)
しぃーーーーーーん…
(しばらくの静寂)
ルーナは、何を思ったのか、
サミの大声に、かつての社会人時代の癖が
反射的に出てしまい――
社会人時代の癖が、最悪のタイミングで炸裂した。
その直後の静寂に思わず息が止まる。
そして…
「「「「「どわはははははっ!!」」」」」
(商業ギルド内で大爆笑!)
「「「?!…」」」
(驚くルーナとサミと受付嬢)
さっきまでの緊張が嘘のように解けるルーナ。
胃がよじれ漏らしてしまいそうなほどの張り詰めた空気が、
一気に解放され、気持ちも楽になるルーナ。
「あはは…あはははは(汗)」
「では、手続きに移りますね!」
「あ、はい お願いします」
「ホッ…」
この後、なんとか無事に商人札の再発行ができたのだった。
・⋯━☞冒険者ギルド前☜━⋯・
そして、冒険者ギルドへやって来た。
《うるせぇーよ!》
《お前のサポートが遅えんだろぉー!》
「「?!…」」
《ワイワイガヤガヤ》
まだ、ギルドに入ってもいないのに、
ギルド内の冒険者たちの喧嘩にも似た叫び声が聞こえてくる。
思わず、足が止まってしまうルーナだった。
「サミ…ここは、さっきの所より“騒がしい”よ」
「何が起きても、俺の後ろにいな」
「う…うん」
争い事は苦手だ。
できる事なら、冒険者ギルドになんて登録したくない。
でも、魔物から採れる特殊な属性の魔石や、
魔物特有の素材をゲットするためには、
ギルドに依頼するよりも、自分で取った方がいい。
それに、なにも自分が魔物を狩らなくても、
冒険者も兼ねてるサミとパーティーを組めば、
自分はサポートだけでいいとのこと。
素材と魔石が手に入るだけでなく、報酬まで貰える。
オマケに、レベルも上げられるのだ。
それと、先立つものがほとんど無かった。
この街に来るまでの馬車でのクッション作成の一件で、
他の乗客からグラウンド・フロッグの胃袋を
大量に買ったので、今は手持ちが乏しい。
手っ取り早く稼ぐのなら、やはり冒険者だろう。
「さ、行こうか!」
「お、おう!」
ルーナとサミは、冒険者ギルドの扉を開けた。
・⋯━☞冒険者ギルド内☜━⋯・
ドン! キィ~~…ガタン!
「「「「!!…」」」」
(一斉に2人を見る冒険者たち)
「…」
「ひっ!…(汗)」
(大勢の視線に晒されサミの後ろに隠れるルーナ)
ほんの束の間の静寂が冒険者ギルド内を支配すると、
サミが、そんな空気にいたたまれなくなったのか、
意を決してルーナの手を引いて歩きだす。
「…行くぞ!」
「う、うん」
「「「「ワイワイガヤガヤ」」」」
するとまた、何もなかったかのように、
元のざわめく空間へと戻っていた。
そして、冒険者ギルドの受付へと向かう。
・⋯━☞冒険者ギルド受付☜━⋯・
「ようこそ、マイーヤ冒険者ギルドへ!」
「どうも! ペニーさん」
「サミさん、いらっしゃい!
あら、ルーナさんじゃないの!」
「ふぇ!?…(汗) 」
ルーナは、驚いた!
この受付嬢、”ペニー”という名らしい。
いや、今はそんな事など、どうでもいい。
まさか、冒険者ギルドでも、自分を知る人物がいるなんて
まったくもって予想外だった。
ルーナもシリルも商人ギルドに登録しているのは理解できる。
でも、冒険者ギルドなんて縁のない組織だと思っていたのに、
名前を呼ばれたときは、頭の中が真っ白になった。
なぜなら、あまり元のルーナを知る人に関わりすぎると、
いつかボロが出てしまうのではないかと、不安になるのだ。
なので、今ルーナは居心地が悪くて仕方がない。
ここは、さっさと登録を済ませて出ていこうと思った。
クイッ クイッ…
(サミの裾を掴んで引っ張るルーナ)
「ん! どうしたの? ルーナちゃん」
「早く済ませて出よう?」
「!?…そうだな。わかった!」
サミは、ルーナの気持ちを察してくれたのか、
二つ返事で同意してくれた。
「ペニーさん!」
「はいはい」
「実は俺たち、この後大事な用事があるんだよ
だから、なるべく早く手続きをしてくれないかい?」
「…わかりました!
では、ルーナさん この水晶玉に手を触れてくれますか?」
「水晶玉?」
「この水晶玉で、魔力量を測るんだよ」
「!…なるほど、はい」
『これも異世界あるあるの王道だな』
ルーナは、ペニーさんが出してきた”水晶玉”に右手を伸ばした。
『ふむ これも、異世界あるあるなシチュエーションだよな?
確か、属性によって色が違ったり、魔力量によって、
光の強さが変わるんだったっけ?
まさか、パリーン!って割れたりするテンプレな事が、
起きたりしないよなあ?』
「「…」」
(もの言わず水晶玉を凝視するサミとペニー)
『…なに? この重い雰囲気』
(ズゥ~~ズン……ズゥ~~ズン……♪
ズゥ~ズン…ズゥ~ズン…♪ズンズンズンズン♪)
この時ルーナの頭の中には、アクション・スリラー映画、
人喰いサメのテーマが流れていた…ような気がした。
ところが、次の瞬間だった!
まるで吸い付くように、ルーナの右手が水晶玉にくっ付いたのだ!
ピカァーーーーーーーーッ!!
「はあっ?!」
「「?!…」」
「「「「おおおっ!」」」」
突然、なんの前触れもなく、水晶玉が眩しく光り輝いた!!
その光は直視できないほど眩しく、
まるで太陽を見ているようであった!
しかも! なぜか右手が水晶玉から離れない!
慌てるルーナを無視して、
水晶玉はどんどんルーナの魔力を吸い続ける!
それと同時に、周囲の空間が歪んでいく!
まるで空間そのものが歪んでいるようだった。
その現象は、誰が見ても命の危険さえ感じるものだった。
この時、数秒なのか、数分なのか解らなくなっていた。
「ルーナちゃん!!」
「ルーナさん! 手を離してえっ!!」
「えっ?! でっ、でも、離れない~(汗)」
「「ええっ?!」」
「「「「ザワザワザワザワ」」」」
ルーナは、力いっぱい水晶玉から右手を離そうとするが、
まるで強力な磁石のようにくっ付いて離せない!
これほど引っ張れば、水晶玉が動いても不思議ではないのに、
なぜかカウンターに硬く固定されたかのように動かない!
「うあああ~~~! なんだよコレ~~~!?」
「ルーナちゃん、手を離してっ!!」
(ルーナの右手を水晶玉から離そうとするサミ)
「は~な~れ~な~い~~~(汗)」
「なんだこりゃあ! どうなってやがる?!」
バタバタバタバタッ!
(慌てて駆け寄って来る男性)
「いかん! それ以上は危険だっ!!」
「マスター?!」
「「?!…」」
すると騒ぎを聞きつけてか、ギルドマスターが駆けつけた!
ギルドマスターは、かつてない水晶玉の危機的状況に、
こう叫んだのだった!
「全員退避ーーーっ!!
水晶玉から離れろっ! 命が惜しければ走れっ!!」
「いやあぁあぁあぁ~~~! 死にたくない~~~(汗)」
(慌てて逃げ出すペニー)
「「うおおーーいっ!?」」
(見捨てられたと焦るルーナとサミ)
「「「わあ~~~!!」」」
(逃げ惑うギルド職員たち)
「うわっ! ちょっ、助けてぇ!!」
「ルーナちゃん! 早く右手を離すんだっ!!」
「手が離れないんだよぉ~~~(汗)」
「ほら、もっと力を入れてっ!!」
「いれでるお~~~!! ゔゔゔゔ~~~ん!!」
ルーナは、足をカウンターに押し当てて、
必死になって右手を水晶玉から離す!
すると、離されたルーナの手の平から水晶玉には、
魔力の青白い光の帯が伸びているかのようにリンクしている!
このままでは、ルーナの魔力が枯れるか、
水晶玉が耐えきれずに暴発する――
誰の目にも、そう見える状況だった。
水晶玉から離れているにも関わらず、
尚も水晶玉は、ルーナの魔力を吸い続ける!
サミもルーナを助けようと近づこうとするが、
磁石が反発するように跳ね返されてしまう!
「うおっ! なんなんだコレ?! 近づけねぇぞ!!」
「あっちぃっ! あっつういっ!!」
「ルーナちゃん! 燃えてる?!」
ブウゥウゥウゥウゥ~~~ン
「なんだか水晶玉が振動しているわ!」
「違う! 水晶玉がキャパ以上の魔力を吸って、
魔力暴走を起こしているのではないのか?!」
「「「魔力暴走?!」」」
(ハモるルーナとサミとペニー)
やがて水晶玉は真っ赤になり、水晶玉を乗せていた座布団が発火!
「ええええええ~~~!! 燃えてるぅ!
熱いよぉ~~~燃えてるよサミーー!!」
「ルーナちゃん! ルーナちゃん!!」
「ヤバいよ! マジ、ヤバいよコレーー!
死んじゃう! 死んじゃう~~~!!」
「ルーナちゃん…んぐぐぐぐ…」
サミは、必死にルーナに近づこうとするが、
反発する力がジワジワと強くなる。
そして、水晶玉から発する熱も耐え難いものとなっていく。
ルーナとサミの顔の皮膚が焼かれるように、
熱が空気越しにジワジワと迫ってくる!
「ルーナちゃん!! くっそぉーー!!」
「あっつぅいよ!! あつうぅうぅうぅ~~~い!」
ついに水晶玉は、赤から金色に輝き始める!
もう、ルーナは熱くて堪らない!
まるでストーブに顔を近づけているようだった!
そして…
「おぅるるるるあああ~~~!!!!」
ガバッ!
「ひゃ?!」
「「「「?!…」」」」
サミは、渾身の力を振り絞って、ルーナの脇を抱え持ち上げる!
そして、ルーナを頭の上でクルリと回して、
そのままルーナを肩に俵担ぎで猛ダッシュ!!
「うをおおおおおおおーーー!!」
(ルーナを俵担ぎでまるで鬼瓦のような、
真っ赤に燃える怒気の表情のサミ)
「んみやぁあぁあぁあぁあぁ~~~!!」
(サミに俵担ぎをされ、
操り糸の切れたマリオネット状態のルーナ)
バタバタバタバタッ!!
「「「「「うわあーーーーー!!」」」」」
「「「「「ぎゃあーーーーー!!」」」」」
(殺される~みたいな表情の冒険者たち)
ドタバタドタバタッ!!
ドタバタドタバタッ!!
サミがルーナを俵担ぎで退避したのを合図かのように、
冒険者たちも、蜘蛛の巣を散らすかのように、
水晶玉から距離を置くように走り出す!
冒険者ギルド内は、まるで地震のように振動する!
なかには、転びそうになったり、人を押しのけるように、
誰もが我先と逃げだすのだった。
だが…
シュウゥウゥウゥウゥ…
「お、おい! 光が弱く…消えていく…」
「「「「おおおお…」」」」
ルーナが水晶玉から遠く離れたからか、魔力の吸引は治まり、
水晶玉は金色から赤に、そして元の色に戻ったのだが、
しばらく、何の音も振動もなく静まったかと思えば…
パキーーン!
「「「「?!…」」」」
「ヒビがっ! 水晶玉に蜘蛛の巣のようなヒビが入りました!」
(恐る恐る、水晶玉に近づくペニー)
「う、うむ…治まった…のか?
まさか…マナ・バーン(魔力焼損)を起こしたのか!?」
(椅子を盾にして、水晶玉を覗き込むギルマス)
ようやく水晶玉の暴走が終わったようだ。
しかし、表面が硝子のように鈍く濁り始め、
水晶玉は段々と真っ黒になり、そして崩壊した。
マナ・バーン(魔力焼損)とは…魔力が過負荷になると、
魔導具は黒化して崩壊する現象だ。
パカン! パラパラパラ…
「どういう事? 水晶玉が黒焦げになって壊れるなんて…」
「恐らく、膨大な魔力により、水晶玉の性質が変化したのではないのか?」
「ふぅん…なるほど」
ギルドマスターとペニーは、
水晶玉が黒く変色し崩壊した理由を、そう結論づけた。
「…記録係!
今回の件は、”事故”ではない。 規格外事案として残せ」
「…はい」
「はぁ…領主様に、どう報告すればいいのやら…(困)」
「…ありのままに報告すれば良いのでは?」
「誰がこんな話を信じるんだ?
先々代の聖女様の時に、水晶玉が欠けた話は知ってるが、
真っ黒になって崩壊しただなんて、前代未聞だぜ
これじゃあ、錬成修復もできねぇ!」
「…ですよねぇ~」
「「「うんうん……」」」
ギルマスの話によると、
過去に先々代の聖女が水晶玉にヒビを入れた
ことはあったそうだが、崩壊したことはないそうだ。
「ああ~~ 国宝級の水晶玉が~~~
また、始末書ものだよコレ
この水晶玉、いったいどれだけすると思ってんだ?
定年まで、減給ものだなあ…」
「世知辛いっすねぇ~」
「「「うんうん…………」」」
私は関係ありません……と言いたげなペニー。
そして、いつの間にかペニーの後ろに
集まってきていた他のギルド職員たち。
「お前たち……なにを無関係を装ってるんだ?」
「「「「えっ?…………」」」」
「お前たちもだぞ!」
「「「「そんなぁ~~~(汗)」」」」
まさか、自分たちにも責任を押し付けられるとは
思ってもいなかったギルド職員たち。
「どう転んでも俺たちの連帯責任だろ!」
「いえいえっ!
そこはギルマスが胸を張って責任を持つと
言うところでしょお?!」
「んなっ?!」
「そうですよぉ! カッコいいところを
見せてくださいよおー!」
「……お前たち……そんな事を言うのか……」
「「「「………………?」」」」
「俺の賠償分は退職金で処理する!」
「「「「ええーっ!!」」」」
「という訳でぇーー…………辞職する!」
「「「「ええええええーーっ!!」」」」
退職金を賠償金にあてると言って、
ついには、ギルドマスターが辞職を口にする。
そんなことをされては、自分たちだけで
残りの賠償金を払わなければならなくなるので、
なんとしてでも、それを阻止しようとするギルド職員たち。
「ダメですよぉ~~~ギルマスぅ~~~」
「私たちを見捨てないでくださいよぉ~~~」
「わっ! こらっ! 放せっ!
パンツがズレるじゃないか!!」
「辞めないと言うまで離しませーん!」
「辞めるなら呪ってやるー!」
「呪うっ?! やめろおーーー!!」
「「…………(汗)」」
(呆れて見ているルーナとサミ)
ギルド職員たちは、皆壊れていた。
まるで、昭和の喜劇舞台を観ているようだった。
一方、この騒動の元凶であるはずのルーナは、
完全に無関係を装って、お客様気分でいた。
そんななか、冒険者たちは……
「も、もういいぞ! そろそろ降ろしてくれるか?」
「あ、はい…」
ストン!…
背の丈ほどの大きな盾を持つ図体のデカイ男性冒険者が、
背の低いドワーフの女性冒険者に、
子供を抱くように抱えられており、
男性冒険者にそう言われて下に降ろす。
そしてドワーフの女性は、男性冒険者を見上げて微笑む。
照れてるのか恥ずかしいのか、男性冒険者は苦笑い。
「…すごっ」
(サミの肩に俵担ぎされ、
サミの顔にしがみ付きながら呟くルーナ)
「あはは…」
(ルーナを俵担ぎのまんま呟くサミ)
また、古傷だらけの鎧を装備する高ランク冒険者が、
腰を抜かし床にへたり込んでガタガタ震えている。
「おおお…おおおお…(震)」
「しっ…師匠! もう、大丈夫ですって!
シッカリしてくださぁい!
高ランクのジェイドクラスでしょ?!
ししょおーーー!! 」
「うっ…するせぇ!
ちょ…ちょい…ちょいと躓いただけだよ!」
ブルブルガタガタ…
「ほんとですかぁ?」
そんな様子の2人を、
他の冒険者たちが怪訝な目で見ていたが、
腰を抜かす高ランク冒険者が
思い出したかのように周囲をキョロキョロ見ると、
他の冒険者たちは、サッ!と視線を逸らす。
立ち上がろうとする高ランク冒険者だが…
「て、手を貸してくれ」
「……はい よいしょ!」
「す、すまねぇな…」
「……はあ~」
「……(汗)」
カクカクカクカク…
なんとか立ち上がった高ランク冒険者。
でも、彼のその足は、
まるで産まれたての子鹿のように震えていた。
「……何アレ? 酔っ払い?」
(サミの頭の上によじ登り、
サミに肩車の姿勢に乗ってそう呟くルーナ)
「なんだろな? それより、どうなったんだ?」
(肩車のルーナの腰を両手で支えながら呟くサミ)
「…真っ黒になって壊れちゃった なんで?」
「ルーナちゃんのバカみたいに多い魔力のせいじゃない?」
「ひどっ! 言い方っ!」
「「「「「……(睨)」」」」」
(ギルド内の全ての者たちの視線がルーナに集まる)
「?!…な、なんだよぉ~~~
わ、私が悪いのぉ~~~?」
後に、マイーヤ冒険者ギルドで起きたこの事件は、
『無自覚魔力バカ幼女魔女の水晶玉黒焦げ崩壊事件』
と、呼ばれる事になったとか…
「「「「「じぃ~~~~~~~~~」」」」」
(ギルド内全ての者たちの死んだ魚のような視線)
「…すん…すん…理不尽だ(泣)」
思いもよらず、恨めしい目で睨まれ泣きたくなるルーナだった。
水晶玉に触れたら光る。
それだけのはずだったんです……本当は。
ギルドの皆さん、お疲れさまでした。
そしてギルドマスター、どうか強く生きてください。
次回、ルーナの“規格外”が、じわじわと周囲に認識され始めます。
”ペニー”とは、どこかの国の言葉で、”依頼”という意味だそうです。




