(15)乗合馬車はクッション次第
今回は戦闘なしの、ほのぼの日常回です。
馬車の旅の途中で、ルーナの“ものづくり欲”が大暴走。
気づけば、クッション職人と化していました。
ゆるっと楽しんでいただけたら嬉しいです。
せっかく快適に座るために作ったクッション。
自分のために作ったクッション。
ああ、俺のクッション…
心底嬉しそうな、おばあちゃんに、
そんな事など言えずに、ただ苦笑いするのだった。
しかし、勝手に馬車を停めて、皆に迷惑をかけてしまった。
そろそろ出発したければ、予定通りに目的地に着けない。
そう思っていたが、御者はとんでもない事を言い出した!
「お嬢さん! 俺にも作ってくれないかい?」
「ええっ?!」
「「「「ザワザワ…」」」」
「で、でも、マイーヤの到着予定は4日後だよね?
作るのは構わないけど、間に合うの?」
「いや、いい! 乗り心地が良くなれば、
今までよりも、速く走れるはずだからな!」
「!…なるほど」
「「「「おおお~~~」」」」
確かに、そうかもしれない。
特に御者の乗る座席は、取って付けたような
間に合わせかよとツッコミたくなるような始末なモノ。
乗客もそうだが、御者が安全に尚且つ楽に座れなきゃ、
事故を起こさないように安全に走行できないかも?
快適な旅などできないのでは?と思った。
実際、馬車の事故は多い。
荷馬車であれ乗合馬車であれ、台車は壁に囲まれているが、
御者台には囲いなどは無く、激しく揺れて御者が振り落とされ
事故になることもあるのだ。
「ふぅん…
廃材は村でかき集めたモノがまだまだあるし、
幌もまだ結構残っている
…うん! 作れるかも?」
「本当かい? 助かるよ!」
「でも、時間が…」
「じかん? なんだいそりゃ?」
『ああもお…
時間感覚の違い、ほんと怖い…』
(心の声)
「ん? どうかしたのかい?」
「ああ、いや、なんでもない!」
「とにかく、1日くらい遅れても、取り戻せるさ!」
「…そうかな わかった」
「おおっ! ありがとよ! お嬢ちゃん!」
「お嬢ちゃんはやめて!」
「はっはっはっ! すまないねぇ」
「…」
『仕方ない。御者用のクッション…
座席シートを作るか。』
という訳で、御者用の座席シート、もとい、
クッションを作ることになった。
御者の座る御者台は、他の馬車は分からないが、
この乗合馬車の場合、長方形の板を
L字に組んだだけの簡素なモノ。
長時間座ることなど、
まるで考えられていない。
座れたらOKというだけのモノだろうか?
簡単な作りで安全性も無視してる気がする。
そして、1時間後。
完成した新しい御者台には、腰ベルト付きで、
カチッと留めるバックルの本格的なモノ。
もちろん、白野菜で一から錬成した。
安全性にも気を使ったのだ。
サミと一緒に、御者台を分解して、
新しく作った車のシートのような御者台を設置。
「できた!」
「おおっ! 素晴らしい!!」
「足を乗せるステップ…足掛けも付けたよ」
「ありがとう! ありがとう!」
ブンブンブンブンッ
「どぉっ…いっ…った…しまっ…してっ…(汗)」
(どういたしまして)
御者は、嬉しさのあまり興奮していた。
ルーナの手を握り、激しく上下にブンブン振る。
大人と子供ほどの身長差があるので、
片足が浮いてしまう。
腕がちぎれそうで、勘弁してほしい。
でも、これでやっと、ゆっくり座れる。
って、自分のが無いじゃないかーー!!
なので、また新しくクッションを作り始める。
「ルーナちゃん まだ作るの?」
「だって、自分のが無いんだもん」
「そうだね…」
「…なに?」
「うんや?」
(首を振るサミ)
「…」
(怪訝な目でサミを睨みつけるルーナ)
サミは、もの欲しそうな目でルーナを見る。
どうやら、自分の分も作って欲しいようだ。
「…」
(チラッと他の人を見るルーナ)
「「「「……」」」」
「……(汗)」
なにやら不穏な気配を感じたので振り返ると、
他の皆も、物欲しそうな目でルーナを見ていた。
『そんな死んだ魚みたいな目で見るのやめて。
マジで怖い…(震)』
ルーナは、視線を逸らした。
「わかりましたよぉ!!
作ればいいんでしょ! 作ればぁー!」
「「「「わあ~~~!!」」」」
パチパチパチパチ!
「はぁ…(困)」
結局、全ての乗客分のクッションを作る羽目に。
ところが、人数分のクッションを作るには、
枯れ草が足りないような気がした。
山ほどにあったはずの枯れ草は、乾燥させて縮んだせいか
かなり減ってしまったように見えた。
「ううむ…何か代用する物はないかな?」
ルーナは、御者と他の乗客たちに、
何か不要な物は無いかと聞いてみた。
「これは?」
「それは、グラウンド・フロッグの胃袋だよ」
「胃袋?! グラウンド・フロッグってカエル?
そんなものを、いったい何に使うの?」
「小さいものは、子供用のボールに、
大きいものは、バックパックなどに使うかな?」
「へえ~…」
ルーナは、グラウンド・フロッグの胃袋を、
両手に持って、左右に引っ張ってみた。
ゴムみたいに伸縮するのだが、結構硬い。
人の息の力で膨らませるのは無理そうだ。
胃袋って言うより、ゴム製のボールのようだ。
なるほど、面白いと思った。
ここで、ルーナが思い出した!
日本での暮らしで、踵に風船が仕込まれた靴があった。
人が歩いたり走ったりすると、踵から着地する。
すなわち、一瞬だけ踵に全体重がかかるのだ。
そこで、踵にある風船で衝撃を吸収する仕組みだ。
『風船! その原理を使えば?』
ルーナは、その人から、ありったけの
グラウンド・フロッグの胃袋を買い取った。
そして、草を乾燥させた時のように、
空間魔法を発動。
そしてその中にグラウンド・フロッグの胃袋を入れた。
だが今度は真空ではなく、空間内の気圧を1.5倍に上げた。
そして、空間内で風魔法にて、胃袋を膨らませる。
形よく膨らんだら、胃袋の穴を錬成形成して塞ぐ。
その後、空間魔法を解除すると、胃袋は圧迫していた
空間から解放されて風船のように膨らむ。
それは、直径10cmほどのゴムボールのようだった。
「お~! まるで、ゴムボールだな!」
「ごむぼおる?」
「いや、コッチの話…
それより、この胃袋風船を包み込むように
草を詰め込めば、クッション性が良くなるかも?」
ルーナは、クッションの中で胃袋風船がズレないように、
縦横5個ずつの2段重ねの合計50個にし、錬成接着した。
それを中心に草で包み込むように、幌で作った袋に詰め込んで、
木の枠で囲むと、完成である。
俺たちの分には、背もたれは無いが。
これが、正解だったようだ。
おばあちゃんと、御者のモノよりも、
ハイクオリティーなクッションができてしまった。
さすが異世界!
まさに、なんでもありの、ご都合主義である。
「最高だよ、ルーナちゃん!」
「うんうん! 座り心地がいいわあ!」
「おねえちゃん、ありがとう!」
「こりゃあ、いい!」
「どうもどうも! 喜んでいただけて嬉しいです」
「でも、ちょぉーっと、小さい気もするが……」
「あっそっ! 文句があるなら……」
「あっ! うそっ! 嘘で御座います!
だ、だい、大丈夫ですっ!
ありがとうございまぁーーっす!!」
「うむ よろしい」
「……(汗)」
サミは、自分だけクッション無しに
なるかもしれないと思い、
慌ててクッションをわきに抱えながら、
ルーナに向かって激しく敬礼!
サミに渡されたクッションは、
他の皆と同じ背もたれの無いもの。
ただ、体の大きいサミに合わせると、
ずいぶんと小さすぎるようだ。
製作者はルーナなのだから、
ルーナの基準で作れば、そりゃあ、
サミには小さいわな(汗)
何はともあれ……
全てのクッションが完成した頃には、
もう日は傾きかけていた。
「ぷはぁ~~~働いたぁ~~~」
「お疲れ様! よく頑張ったね!
ルーナちゃん、偉い!!」
「きゃあ! や、やめろ!
やぁ~めぇ~ろぉおぉおぉおぉ~~~」
ブンブンッ
クッションが完成したのがサミも嬉しかったのか、
ルーナを、お姫様抱っこで、クルクル回る。
ルーナは、口ではやめろとは言うが、
もう、サミに逆らい抵抗する気力など無かった。
『そんなサミも、俺の手伝いをさせられて、
かなり疲れているはずなのに、
まだそんな力が残っているのか?
まったく、頑丈な奴だ(汗) 』
そしてまた、ルーナのレベルは、爆上がりしたのだった。
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《ルーナ》
性別︰女性
職業︰魔女
年齢︰55歳
LV︰55←(42)
HP︰68 ←(54)
MP︰88/2714←(1670)
STR︰7←(5)
ATK︰4←(3)
DEF︰3←(2)
INT︰119←(93)
SPD︰5←(4)
DEX︰3←(2)
LUK︰39←(26)
EXP︰50327←(27069)
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魔法特性︰無属性魔法(MAX)/全属性魔法(MAX)/
創造魔法(MAX)/空間魔法(MAX)
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錬金特性︰オールマイティー(MAX)
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加護 ︰自称神様の加護
・⋯━━☆★☆━━⋯・
称号 ︰悲劇の魔女/憑依魔女/オジサン魔女/
無自覚男たらし/魔道具研究家
なんちゃって1級建築家/
神の手を持ちし者/魔導具発明家/
使える便利な娘/断り下手娘/
・⋯━━☆★☆━━⋯・
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
快適さを追求し始めると止まらないルーナ。
そして、気づけば巻き込まれる周囲の人々。
次回も引き続き、旅は続きます。
よろしければ、またお付き合いください。




