表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴミ箱は魔女の宝物 ~ゴミばかり集めてたら最強魔女っ娘になってました~  作者: 嬉々ゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/26

(12)馬車の旅は尻から始まる

今回は、いよいよ村を出発する朝のお話です。

早すぎる来訪者に振り回されつつ、

初めての乗合馬車で、ルーナはまたしても

「ちょっとした違和感」を見逃しません。

旅の始まりは、どうやら穏やかではないようで……。



   ••✼••翌朝••✼••


 ・⋯━☞ルーナの家☜━⋯・


 コンコンコン!


「ルーナちゃん! ルーナちゃんってばぁ!」


「……(苛)」



 昨日、村人のエアンツから紹介されたサミ。

 そのときは、ルーナはまだ直接話していない。

 エアンツの話では、朝一に家へ来てくれるとのことだった。


 

「ルーナちゃあーん!! 起きてるんでしょおー?」


 コンコンコンコンコンコンコンコン!!


「ぁあああああーーーーうっとうしいっ!!」



 朝一とは聞いていたが、まだお日様は昇っていない。

 世間一般的には、こんなの「未明」と言うのでは?

 この世界へ来てから、2週間ってところか。

 数日前にも、『何時ごろ?』と村人に聞いたときに、

 『なんじとは?』と逆に聞かれてしまった。

 どうやらこの世界では、”時間”という概念が無いらしい

  …というのが分かった。


 なので、

 朝と言えば、日が昇る頃。

 昼と言えば、日が真上に昇る頃。

 夕方と言えば、日が沈む頃。

 夜と言えば、真っ暗になった頃。


 だから、朝一と言えば、

 地平線が少し赤く染まる頃?


 …なのか?

 おぃおぃ、マジかよ。


 だからってサミの奴、早すぎるってのっ!!

 このまま放ってはおけないので、(煩いから)

 仕方なく、玄関の鍵を開錠して扉を開ける。



「はいはい! 今開けるから!」


 カチン!…カチャ…


「もう~ルーナちゃあん!」


 ガバッ!


「きゃぶっ!! んん~~~!!」



 サミは、ドアを開けるなり飛び込んで来て、

 ルーナを頭から被さるように抱きしめる。

 ところがサミの身長は178cm。

 そしてルーナと言えば、150cmに満たないチビ。

 本当に小学生並みの背丈しかない。

 なのでサミは腰を曲げ、ルーナに覆い被さるように、

 一歩間違えれば、魔物が人に喰らいつく絵面である。



「んんん~~~! んんんん~~~!!」

 (やめて~~~! 苦しい~~~!!)


「今日もルーナちゃんは、可愛いなぁ♡」


「んんんんん~~~!!」

 (死ぬうぅ~~~!!)

 


 なんということでしょう。

 まるでフォレスト・ウルフに

 幼気な少女が、襲われているようでは

 ありませんかあ~

 (某戸建建築リフォーム番組の名台詞風~)


 するとそこへ、レオの母親のマティがやって来る。



「おやおや、こんな朝っぱらから

 見せつけてくれるじゃないか、うぅん?」


「あはっ これは、マティさん!

 今は、僕たちの愛を確かめ合う

 とてもとても貴重な頃合いなのさ

 だから、邪魔をしないで、く、れ、る?」


「ほぉんんわあげわあ~~~い!!」

 (そんなわけなあ~~~い!!)



 ”頃合い”ってなんだ?

 もしかして、時間という概念が無いから、

 そう表現するしかないからか?

 などと、考えている場合じゃない。



「はいはい! お熱い、ことですね!

 ご馳走様!」


「ぎああああ~~~う!!」

 (ちがあああ~~~う!!)



 何を勘違いしているのかマティさん!

 ルーナは、このままでは逃げられないと悟り、

 最終手段へと移行!

 唯一自由な右手で、サミの急所を…



 ムギュッ!!


「うんぎゅ~~~!!」


 バッ!



 ルーナは、右手でサミの股間を、

 下から思い切り掴みあげてやった!

 たとえ、見た目少女のひ弱な力でも、

 男のシンボルを掴まれては、

 たまったものではない。

 サミはルーナから後ろへ飛び退くと、

 股間を両手で抑えてうずくまる。



「ぷわあはっ!! はぁー! はぁー!

 ど、どうだ! 参ったかぁ!!」


「そんなぁ~酷い~~~(汗)」


「あははは! これは決まったねぇ(汗)」



 うずくまるサミの後ろで、大笑いするマティ。

 ルーナは、髪をボサボサにしてフラフラだった。

 だが、うずくまるサミを見下ろして、

 勝ち誇ったように、こう叫ぶ!

 


「ふはははははっ! 参ったか! どうなんだ?

 男の痛いところは、よく知ってるのだよ!!」

 (中身はオジサンだからな!)←心の声


「そ、そんな…ルーナちゃん?」


「ぷぷぷっ あんたも、相変わらずだねぇ?」


「…」



 相変わらず?

 

 マティのそんな言葉に、

 ルーナは、ある思いにふける。


『そう言われるということは、

 以前の、元のルーナも、

 結構な男勝りな性格だったのだろうか?』


 などと、思いふけるのだった。



 そして…


 ••✼••日本時間で朝の7時頃••✼••


 ・⋯━☞リーフ村中央☜━⋯・



 そろそろ乗合馬車が到着とのことで、

 ルーナたちは村の中央広場の井戸前に集まった。


 そのとき、ふと何の気なしに、

 井戸の中を覗き込んでみた。


『そう言えば、この井戸使った事がないな』



 それもそのはずである。

 ルーナには魔法があるわけで、

 水魔法でなら、魔法薬に最適な純水から、

 体に良いとされる清涼飲料水まで生成できる。

 わざわざ井戸や川などから水を汲む必要がない。

 だから使ったことがないのだ。

 なので、今日改めて井戸を見て、

 あまりの使い勝手の悪さに驚いた。


『こんな不便な…それに疲れるだろうに』



 見ると、ロープの繋げられたバケツはあるものの、

 滑車なども無ければ、ロープを巻き上げる

 ハンドルさえもない。

 力任せに、ロープをたぐい引き上げるしかない。


『これは、酷いな…

 村に戻ったら、真っ先にポンプを

 作って設置してやるとしよう』


 そう思ったのだった。

 いつでも便利さを考えるルーナだった。


 そして、いよいよ乗合馬車が村にやって来た。

 …が 



「…え?」



 思わず呟いた。

 乗合馬車とは聞いてはいたが、

 思いのほか小さく見えた。

 今回、乗合馬車を手配したのは、

 村長のラングらしいのだが、

 驚いている様子がないことから、

 きっと、この世界では当たり前なのだろう。

 見た目は、”中世木製馬車”と呼ばれるタイプ。

 木製の土台に、竹材をドーム状に曲げて、

 (ほろ)を被せたもの。

 異世界あるあるで登場するような、

 まんまの馬車のようで思わず感動したが、

 ただ、サイズが小さい。


 それに、馬なんかじゃねぇー!

 コイツ、恐竜じゃねぇーの?!


 乗合馬車を引いているのは馬ではなく、

 全体的に見ると、肉食恐竜のラプトルを

 ずんぐりと太らせたような?



「ラプトル…なのか?」


御者︰

「らぷとる?」


「いや、なんでもない…」


御者︰

「ライド・リザードというんだよ?」


「へぇ~ ライド・リザードかぁ!」



 この、魔獣の名は、”ライド・リザード”というらしい。

 まんまだな。

 後脚はトリケラトプスのように太く、

 そして二足歩行である。

 前脚は物が掴めるかのような4本指で、

 安全のためか爪を切られている様子。



「ほぉ~~~」


「あっはっはっ! 怖いのかい? お嬢さん」


「いや、そんな事は…」


 

 御者がそう言う。

 いかん! 怖がっていると思われた?


 

 目が異様に大きくカエルのように突き出ている。

 その顔はレオパという名前のトカゲのようで、

 少しかわいいと思った。



「可愛い♡」


「ルーナちゃんの方が可愛いよ♡」


「うっさい」


「つれないなぁ~~~」


「…」



『しかしなんでサミの奴、

 必要以上に俺と近いんだ?

 体温を感じるのでは?

 と思うほどに寄ってくる。

 距離感、バグってね?』←(心の声)


 それより、胴や足を見れば、

 力強くたくましく見える。

 重い馬車を引くには適してるかも知れない。



「しかし、たくましい足してるなぁ~」


「そう? 鍛えてはいるけど、

 ムキムキのバッキバキは嫌だしなぁ?

 ルーナちゃんは、ソッチ系?」


「…」



 お前に言ってねぇ!

 と言いたかったが、構ってらんねー

 

 でも、ダイナソーが引く荷台がコレ?

 小っさ過ぎじゃね?

 軽ワゴン車ほどしかねぇ!

 今回の乗合馬車に乗る乗客は、

 ルーナ、サミ、服屋の夫婦と子供2人、

 そして、村のおばあちゃんの計7人である。

 …狭いよね?


 そこで思いついたのが、”空間拡張魔法”だ。

 ルーナの持つウエストビーチタイプの

 マジック・バッグには、以前に作っておいた

 空間属性のクリスタルを幾つか入れている。

 それを使えば、荷台の中を拡張できるかも?


 ルーナは、馬車の荷台の乗り口付近に寄り、

 クリスタルを縫い付けた布切れを、

 荷台の邪魔にならない隅っこに、

 押しピンで、固定した。

 

 そして、起動呪文として設定していた、

 ”スタート”と、唱えた!


 

 フォン!…


「「「「?!…」」」」


「うん! 上手くいったようだな」


「「「「…?」」」」



 他の皆は、ルーナが何をしたのか理解していない。

 でも、馬車の荷台は、以前よりも2倍ほどの

 広さになっていた!



「わあっ! ルーナちゃん、何をしたの?」


「「「「ザワザワ…」」」」


「え? 空間拡張魔石で、中を広げただけだよ?」


「「「「広げた?!」」」」


「え? あ、うん」


「どれどれ? ちょっと見せておくれ?」



 ラング村長と御者が、荷台の中を覗き込む。



「おおっ! これはっ!」


「お客さん、何を?!」


「えっと、ダメでした?」


「ふむ いいんじゃないか?」


「うん! いいよいいよ!」


「えへへ」


「「「「はあ~~~…」」」」



 何の気なしに、ただ狭かったから

 魔法で広げてみただけ。

 それだけの事のつもりが、大騒ぎとなってしまった。



「それじゃあ、そろそろ出発しますか!」


「「「「はい!」」」」


マティ︰

「気をつけるんだよ?」


「はい!」


ラング︰

「これを、持って行きなさい」


「これは?」


ラング︰

「200万チャリン入ってる」


「200万?! な、なんで?」


ラング︰

「いいから! お小遣いだと思って」


「…ありがとうございます」



 思いがけず、ラング村長からお小遣いを貰った。

 欲しいものは何でも魔法で作れる自信があったので、

 特に何かを買うつもりはなかったのだが、

 お小遣いと言われると、嬉しいものだ。



「では、出発!」


 グワァー!(ライド・リザードの声)

  ガラガラ…



 いよいよ、魔導大国の街、

 マイーヤへ向けて出発進行!

 だが、旅は順調…とはいかず、

 30分も経たずに、ルーナは悲鳴をあげた。



 ドン!


「ぎゃっ!」


 ガシャン! ガン!


「きゃあ! あいっ!!」


「「「「…」」」」



 乗合馬車の駆動部は、当然タイヤなどではなく

 木製の車輪であり、振動や衝撃を吸収する

 サスペンションのような気の利いたモノなど、

 あるはずもない。

 

 車輪が大きな石を蹴りあげれば、

 ダイレクトに振動が荷台に伝わる。

 下手に喋ると舌を噛みそうだからか、

 誰ひとりとして、話す者はいない。


 板で作られた座席部は、

 シートも無ければ、座布団もない、

 見るとただの箱だ。

 振動のたびに骨盤に直接叩きつけられる

 感覚だった。

 

 そして、ルーナは我慢が出来ず…



「すとーっぷ!!」


「どぉー! どぉー!」


「クワァー!」


「「「「!!…」」」」


 ガチャン!



 馬車が急停車して激しく揺れる。

 皆、何事かとざわめく。



「どうしたんだい? ルーナちゃん」


「もおーーー無理っ!」


「え?」


「お尻っ!!」


「お尻? ここ?」


「触るなー!!」


「ごめんごめん! 確かに痛いよねぇ?

 でも、お尻が痛いのは、

 ルーナちゃんだけじゃないんだよ?

 我慢しなきゃ」


「無理ったら、無理っ!!」


「「「「ザワザワ…」」」」


「クッション作るから、ちょっと待ってて!」


「「「「くっしょん?」」」」



 突然馬車を停めて、クッションを作ると言うルーナ。

 その瞬間、全員の視線が、

 『クッションとは何だ?』とでも言いたげに

 ルーナへ集中した。

 

 いったい、何をする気なのだろうか?



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

馬車の旅は、想像以上に過酷でした。

特にお尻。

異世界の生活や移動手段は、

便利とは言えないものが多いですが、

ルーナはそれを見過ごせない性格のようです。

さて、次回は馬車の中で、

ルーナが「ある物」を作り始めます。

この旅は、まだ始まったばかりです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ