(10)快適な暮らしは規格外(ただ快適にしただけ、のはずだった)
第10話です。
今回はルーナの「快適にしただけ」が、
どれほど“規格外”なのかが分かる回になっています。
掃除をしようと思っただけなのに、
なぜか魔導具が生まれ、家が生まれ変わり、
周囲がざわつき始めました。
どうぞ、気楽にお楽しみください。
行商人ゲパックが村を後にして王都へと向かった。
せっかく作った、”車庫いらず”ではあったが、
今のルーナにとっては、必須アイテムではなく、
ただ、思いつきで作っただけの物。
この時のルーナには、既に他に興味が移っていた。
・⋯━☞ルーナの小屋☜━⋯・
「どっこいしょ!」
パフッ!
俺は、ベッドに腰掛けた。
そして、ひとつため息を吐いて、こう呟く。
「ふう…いやぁ、まったく
ゲパックさん、嵐のような人だったな
いや、村長の方がヤバいよ(汗)
ゲパックさんが嵐だとしたなら、
村長は流星雨の雨嵐だな…(意味不明)
ぷぷっ! 世界が滅びちゃうよ(笑)」
なんて独り言を言いながら、小屋の中を見渡す。
「…ここも嵐が去ったような有様だな(汗)」
まさに、言葉のとおりだった。
テーブルの上には、魔法薬の精製に使われるであろう
道具たちがゴチャゴチャと乱雑に置かれ、
床や、テーブルの下すらも、世間一般的には、
”ゴミ”と、呼ばれるであろうオブジェたちが
無造作に散らかっている。
それに、釜戸から、棚から、ありとあらゆる所に、
いったい何年掃除していないんだ?と思うほどに、
ホコリが積もっている。
蜘蛛の巣が天井から垂れ下がり、
棚の上には謎の瓶が転がっていた。
こんな有様でもマティが何も言わなかったのは、
きっと気を使って何も言わなかったのだろう。
「元のルーナは、家事が苦手なのか?
浪人生の部屋だって、ここまで汚くはないぞ?
よくこんな環境で暮らせたものだな?」
と、そう呟くのだった。
「おっと! いかんな!
こんな偏見のある発言は、浪人生に失礼だな
日本中の浪人生の皆さん、ごめんなさい!」
ポリポリ…
俺はいったい、何をしているのだろうか?
ひとり、舌を出して頭をかく。
「なーんて言っていても、仕方がない!
よしっ! 掃除するか!!」
俺は、意を決して掃除をすることにした。
かと言って、ここは魔法の異世界である。
なにも、日本でのようにバカ正直に、
普通に掃除などしたりはしない!
この世界には、魔法という便利なチカラがある!
どうせなら、魔女としての研鑽を高めるためにも、
積極的に魔法をバンバン使ってやろう!
そう思ったなら、やる事はひとつ!
また、便利な魔導具の開発である!
魔法の知識や技術が上がる。
掃除が簡単にできるようになる。
まさに、一石二鳥!
先ずは、ゴミの片付けだ。
この小屋にある物は、本来は元のルーナのもの。
だが、元のルーナの記憶が無いのだから、
何が必要で、何が不要なのかは分からない。
だが!!
「もう今となっては、俺がルーナだ!
今のルーナのもの! 俺のものは俺のもの!
ルーナのものは、俺のものーー!!
俺が、俺のものを、どうしようとも俺の勝手でしょ!」
俺は、空間拡張収納魔導具には、
”空間属性の魔石クリスタル”があれば作れると
学んだので、魔力でクリスタルを生成。
だが、ちょいと力みすぎたのか、
直径50mmもの大きなクリスタルができてしまった。
「…ま、いっか」
その、クリスタルを使って、ゴミを集めるための
名付けて、”ゴミ収集袋”を、錬成した。
・⋯━☞錬成開始☜━⋯・
エコ・エコ・アザラク…
--以下省略--
我が求めるは、この円の中の品を異空間に
ゴミを貯蔵する道具に聖別することなり!
それと……ああもうっ!
面倒くさい!! よくわかんない!!
魔導書に書いてるとおりにできない!!
よしっ! 俺のなりに……っと!
えーっと……
とりあえず、ここに置いたこの袋。
これをさ、
変なとこにつながる袋にしたいんだけど。
異世界、じゃなくて異空間?
もっと言うと、
世界の裏側の、理のすき間?
使用者が「これはゴミだな」って思った物だけ、
吸い込んで、向こうにしまって。
「吸引」って言ったら吸って、
「停止」って言ったら止まって。
で、
「排出」って言ったら、ちゃんと戻すこと。
勝手に出したり、溜めっぱなしはダメ。
……うん、たぶんそれで大丈夫。
あとはまあ、
精霊さん、いい感じによろしく。
……変な副作用は、あとで考えるから。
はい、これで。
魔導具になれ!
さあ、魔法はかけられたり!
大地と海との全てのチカラと……
--以下省略--
・⋯━☞錬成終了☜━⋯・
「ほい! 完成!」
またまた、あっさりとゴミ収集魔導具が完成!
見た目は、ただの巾着袋。
でも、その実態は、掃除用魔導具である。
「あはは できたのはいいけど、安直だよな(汗)」
我ながら、そう思った。
見た目も、発想も、
思いつきなのに簡単に、できてしまう。
早速、使ってみた。
漫画かよ! と突っ込みたくなるほど、
ゴミがみるみるうちに、巾着袋に吸い込まれていく。
その、あまりにもシュールな光景に夢中になり、
あっという間に、小屋中の全てのゴミは姿を消した!
「ふっふっふっ…
見事だな、坊主! だが、
自分の力で勝ったのではないぞ!
その魔導具の性能のお陰だということを忘れるな!
うわははははははっ!」
…と、
ゴミやホコリが消えて、スッキリした小屋を前にして、
ひとり得意げに、某人気ロボットアニメの、
敵の主要キャラの名台詞を、もじって叫ぶ!
しかしここで、ある事に気づく。
「あれ? 自分で空間属性魔石のクリスタルを
生成できるのだから、ゲパックさんが、
わざわざマジック・バッグを集めなくても
別に、いいんじゃね?」
盲点だった。
ただ、誰も聞いてはいないので、なんの反応もなし。
しばらく静寂の中で、沈黙したのだった。
「……さ、DIYしよ!」
今更なので、ゲパックさんの事は、
知らなかった事にしよう!
ルーナは、再び立ち上がった!
今度は、隙間だらけの壁を、ゴミ捨て場から
ゴミ収集魔導具にてかき集めてきた、
比較的綺麗な廃材と交換。
もちろん、交換作業もオリジナル魔法である。
★手持ちの物と、指さした物との、入れ替え魔法
古い木材と新しい木材とを交換時に利用。
★異物を取り除く、排除魔法
異物を取り除いたり、釘を抜く時に利用。
★釘を打ち込む、釘打ち魔法
釘を打ち込む時に利用。
★ペンキなどを吹き付ける、スプレー魔法
壁、床、屋根などの塗装に利用。
★物体を浮かせ移動させる、反重力魔法
重い物や高い位置の物を移動や設置に利用。
もう、ご都合主義の、なんでもありである。
「いぇーい! できたぁー!!
うん! 我ながら完璧!
やっぱり俺は、やればできる子!!」
朝から作業を始めて、昼過ぎには、
すっかり小屋は、まったく別物へと変貌していた。
あの、ボロボロの、今にも崩れ落ちそうな小屋は、
こぢんまりとした、小さな一軒家と化していた。
また、クリスタルは、”光属性”でもあり、
照明の魔導具にも最適。
どの家でも、ランタンが主流の薄暗い明かりのに、
ルーナの家だけは、真昼のような明るさである。
ついでに、家の玄関前にも、街灯を設置。
夕方頃には、ルーナの家の周囲だけが別世界である。
この時、ルーナのステータスは、
どえらい事になっていた。
・⋯━━☆★☆━━⋯・
《ルーナ》
性別︰女性
職業︰魔女
年齢︰55歳
LV︰42←(18)
HP︰54 ←(32)
MP︰98/1670←(125)
STR︰5
ATK︰3
DEF︰2
INT︰93←(45)
SPD︰4
DEX︰2
LUK︰26←(15)
EXP︰27067←(3855)
・⋯━━☆★☆━━⋯・
魔法特性︰無属性魔法(MAX)/全属性魔法(MAX)/
創造魔法(MAX)/空間魔法(MAX)
・⋯━━☆★☆━━⋯・
錬金特性︰オールマイティー(MAX)
・⋯━━☆★☆━━⋯・
加護 ︰出鱈女神の加護
・⋯━━☆★☆━━⋯・
称号 ︰悲劇の魔女/憑依魔女/
オジサン魔女/
無自覚男たらし/魔導具研究家
なんちゃって1級建築家/
神の手を持ちし者/魔導具発明家
・⋯━━☆★☆━━⋯・
そして、夜。
突然、玄関の扉を激しく叩かれる。
ドンドンドン!!
「うわっ! ビックリしたぁ! だれー?」
「ルーナ! 俺だよ! レオだよー!」
「あ、はーい! 開いてるよー!」
ガチャ!…パタン!
豆鉄砲を食らったかのような顔したレオが、
ルーナの家に、やって来た!
「ルーナ! なにこれ?! どーしたの?!」
「どうしたのって、家を綺麗にしただけだよ?」
「綺麗にしただけって、なんで?!」
「なんでって、言われても…(困)」
”なんで?”と言われても困る。
俺はただ、ボロっちぃ小屋を、
綺麗な一軒家に建て替えただけ。
本当に、ただそれだけなのだが…
「ルーナさん! いったい、どうしたの?!」
「オバサン…(困)」
今度は、レオの母親がやって来た。
ルーナの夕食を持ちながら、
お尻に火でもついたのか?と思うほどに
慌てた様子で、ルーナに詰め寄る。
「いや、ですから…
ボロボロだった小屋を、
新しくしただけですってば(汗)」
「ボロボロって、どうやれば、こうなるの?!」
「どって、魔法で?」
(なぜか疑問形)
「「魔法?!」」
本当に、魔法でやったのだから、
そう答えるしかない。
「それで、この明るさはなに?!」
「ああ、蛍光灯と…いや、
ただの明るく光る魔導具だよ?」
「明るくって、なんだいこの異常な明るさは?!」
「え? そうかな…」
そう。
この世界での、灯りを点ける手段は、
ランタンや蝋燭の明かりが普通である。
たとえ魔導具の明かりでさえも。
明かりと言えば、薄暗いのが当たり前であり、
眩しいほどの明かりなど、考えもしない。
したがって、ルーナの魔導具のように、
蛍光灯やLEDライトのような明るさなんて、
絶対に、有り得ないのである。
「まるで、真昼のようじゃないの!!」
「ねぇこれって、魔法なの?」
「うん ああ、いや、魔導具…かな?」
「「魔導具?!」」
「うん ほら、アレ」
「「?!…」」
ルーナが指さしたのは、天井に貼り付けられた、
照明魔導具である。
見た目は、丸い円盤型の蛍光灯に見えるが、
これもゴミ捨て場から拾ってきた物から作った、
円形の木製の盾の再利用である。
盾を白に塗装して、光属性の魔石 (クリスタル)で
光るように錬成したものである。
そして街灯は、ゴミ捨て場から拾ってきた植木鉢を
逆さまにして、中にクリスタルが発光する仕組みだ。
「ふふぅ~~~ん よくできてるでしょ?」
「「はあ~~~…」」
「うん?」
レオとレオの母親は、揃って呆れて肩を落とす。
そんな2人を見ながら、首を傾げて「?」なルーナ。
「どうしたの?」
「どうしたのって…(汗)」
「ルーナさん、あんた本当に規格外よね?」
「へ? そう?」
「魔導具ミキサーといい、車庫いらずといい、
そして、この家の異常な明るさの照明といい」
「ふぅん…?
私はただ、快適にしたかっただけなんだけどな」
「「はあ~~~…」」
今日もまた、ルーナは人を呆れさせたのだった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
今回の錬成魔法陣は、
「精霊に魔力を借りて行う儀式魔法」
という設定になっています。
そのため、ルーナの詠唱も
だいぶ本人らしい形になりました。
「快適にしただけ、のはずだった」
その結果は、次回以降にじわじわ効いてきます。
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