ギャルと再び
時は流れた。
あの夏から何度か祖母の家に行ってはいるが、ウメコと会うことはなかった。
一所に遊んだ川にも、山にも、隣町にも……。
しかしウメコは僕の中にいる。
そう、思っている。
学生を卒業して社会人となった僕――**タケル**は、もう20代も半ばに差し掛かる年齢になっていた。
大学で知り合った女性と結婚し、家庭を持ち、
そして――一人の娘が生まれた。
**
「名前は……“ウメコ”にしよう」
そう妻に言ったとき、少し驚かれた。
でも、それ以上に優しく笑って、うなずいてくれた。
「なんだか可愛い響きだね。ちょっと古風だけど、華がある」
そうだろう?
僕にとっては、忘れられない名前なんだ。
あの夏。
この命を繋いでくれた“座敷童子”。
ピンクの髪で、笑って、泣いて、僕にまとわりついてきた妖怪――
ウメコ。
**
時折、不思議なことがある。
娘がまだ赤ん坊だったころ。
目が合ったその瞬間に、ふっと笑った気がした。
生まれて間もないはずなのに、どこか懐かしい“気配”がそこにあった。
「……まさかね」
でも、娘が成長していくにつれ、
僕の中の“まさか”は、少しずつ確信に変わっていった。
ウメコが好きだったものを、娘も不思議と好む。
りんご飴が大好き。
梅ジュースを飲みたがる。
浴衣を着るのが妙にうれしそう。
川遊びで泳げないくせに突っ込んでいっては、びしょびしょになる。
そして何より――
「パパぁ〜♡」
甘えた声で僕に飛びついてくるその仕草が、
昔とまったく同じだった。
「ウメコ……?」
ある日、そう問いかけたとき、
まだ幼い娘がにこっと笑ってこう言った。
「うん♡ ウメコだよ〜♡」
冗談のように、ふざけたように。
でもその笑顔には、あの夏と同じ温もりがあった。
**
僕にしか見えなかった“座敷童子”。
あのとき命を繋ぎ、消えてしまったウメコは――
今度は“ちゃんと生きて”僕の隣に帰ってきてくれた。
誰にでも見える、笑って泣いて成長していく“命”として。
「今度は、ずっと一緒だな」
そうつぶやくと、娘――ウメコは、不思議そうに首をかしげたあと、
「うんっ♡」と満面の笑みでうなずいた。
またあの夏が始まった気がした。
違うかたちで、でも同じ想いを抱いて。
--そうだ、庭に梅の木を植えよう。
田舎にあった、あの梅の木のような。
この先、どんな季節が巡っても。
僕の隣には、やっぱり君がいる。
たとえ何度生まれ変わっても、
きっとまた――君に会える。
~終わり~




