ギャルとお酒
夜。
祖母の家では、縁側を開け放ち、親戚一同が宴会をしていた。
ビール、日本酒、焼酎、ジュース。テーブルには手作りの料理がずらりと並び、大人も子供も笑い合っている。
僕はというと、子供たちに囲まれてかき氷を配っていた。
一通り役目が終わって、縁側に出ると――
「たっけるぅ〜〜♡♡♡」
いきなり背後から飛びつかれた。
柔らかくて、どこかアルコールの匂いがする身体が、ぴったりと僕にくっついてくる。
「おい……ウメコ、もしかして飲んだのか?」
「んへへへ……♡ ちょっとだけ……おちょこに一杯だけ♡」
「誰の?!」
「わかんな〜い☆ なんかタケルの隣にいたおじさんの、勝手に拝借♡」
※ちなみにウメコは、霊的存在なので物に干渉できるかどうかは“気合”と“執着”次第らしい。
「お酒ってさ〜、のどの奥がじゅわ〜ってして、んで、身体がぽかぽかして、タケルが100倍好きになるやつだよね♡」
「待て。最後のは違う」
「ううん、合ってる♡」
ウメコは僕の肩に顔を埋めて、猫のようにすりすりしてくる。
瞳はとろんとして、普段より語尾が三割増しで伸びている。
「たけるぅ……うち、いま超さみしい……ぎゅ〜〜ってして……?」
「……今、親戚いるから、ちょっと――」
「やだ〜〜〜っ! やだやだ! ぎゅうしないとウメコ、消えるかもっ♡」
「酔ってるなお前……」
甘えん坊モードMAXである。
普段から構ってちゃんなのに、酔うとそれが全開になるタイプらしい。
しかも困ったことに、ウメコは「霊的に酔っ払ってる」ため、酔いが覚めるまでに時間がかかる。
「ねぇ、タケル〜……タケルぅ……
ウメコのこと、かわいいって言って……♡」
「酔いが覚めたら自分で殴りたくなるぞ」
「いいの♡ タケルにかわいいって言ってもらえるなら、もう一生酔っててもいい……♡」
「だめだそれは」
その後、親戚の目を避けて僕はウメコを自室に連れて戻った。
布団に転がるやいなや、ウメコは僕の布団に入り込んできた。
「タケルぅ……あったかいぃ……♡ もふもふ……♡」
「もふもふは俺じゃないだろ」
「タケルが一番ふわふわ……♡ うそじゃない……♡ ぜったい、ぜったい、タケルが、いちばん、すき……♡」
すっかり泥酔モードである。
普段より無防備で、やたら距離が近い。
酔っ払いギャル妖怪。新ジャンルすぎる。
「……ったく」
僕は仕方なく、横で寝転がるウメコの頭を撫でた。
彼女は子猫のように満足げな表情を浮かべ、うとうとと眠っていった。
……その寝顔は、いつもよりちょっとだけ“人間らしく”見えた気がした。




