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再会

「ということで賭けは僕の負けだったということ。驚いたね、本当に倒せないだなんてさ。それどころか封印もされちゃって大失敗だったね」


 俺の前に現れたのはあの夜空色の龍であった。オヴェリアを殺すと契約をした龍。そして敗れた龍。


「そうなると実質的に御婆様と戦っていた魔戦士ってあんたということになるの?」


 アルマの問いに対して龍は鼻で笑いそれから苦笑いする。


「誰が魔戦士だ、勇者だよ勇者。君のお婆さんの造語で僕を呼ぶのはよしてよね。僕は勇者アーダンとして契約通りオヴェリアを倒すものとなったんだよ。対象が限定的だからこそ能力も向こうに合わせて限界まで達することができたんだ。

 魔王様もあの龍討ちの剣士に手を焼かされていたから、その相手に特化した僕を優遇してくれたんだ。本当に有り難い話だったよ」


「そのオヴェリアちゃんを蘇らせたのはお前になるがな」


「うん、魔王様にバレたら大変なことになるからそこはヒヤヒヤだったね。マッチポンプで出世とかとんでもない話さ」


「そしてディータ御爺様の封印によって五十年にも渡って長く閉じ込められていたわけだな」


 ラムザが言うと龍は首を振った。


「長いと思った? でもね人間にとって五十年は人生の大半だが龍にとってはほんの少しの間。人間的に五ヶ月程度じゃないのかな? もう二度とは御免だけどね。

 まっあれだけ良い思いをしたわけだからその報いだと思えば我慢はできたわけだしさ。それはもう栄光の日々だったよ。魔王軍No.2の時代は。

 魔王様も君のことを覚えていて案外印象良かったし、後半に伸びるタイプで意外と剣の才能はあったよ。普通に魔王軍に入った方が君には良かったと思ったなぁ。まっもう終わっちゃった話で後の祭りさ」


「……御婆様を甦らせ御婆様を殺す契約をしたというのは事実なのね」


 まだ理解が追い付かないようなアルマが確認するかのように尋ねると龍は頷く。


「お孫さんが不審がるのも無理はないが事実そうなんだ。

 僕は瞬殺だからやめろと言ったんだよ。そんな無駄なことはやめてくれと。僕だってすぐに契約が終了するのは嫌だからさ。

 せっかく力を得たのに数秒後に終わりとか無意味すぎる。いくら時間が無限でも馬鹿なことで無駄遣いはしたくない。

 ところがご存じのように恥ずかしながら僕は倒せなかった。彼の言う通りになっちゃったわけだ。

 いつも互角か向うが一歩先であったから僕は負け逃げていたが、最後らへんはこっちがついに上回ってね。ここは君の潜在能力がオヴェリアの天賦の才に僅かにだが届いたと考えて良いと思うよ。

 決戦時はあのまま普通に戦っていたら勝っていたよ。可能性ではなく確実にね。ようやく十年以上時間がかかったが最後の最後で俺は契約を完了できそうだった」


「それを阻止したのがお爺様ということになったわけか。龍の力を限界にさせたことが仇となったと思うがどうだ?」


 ラムザの言葉に龍は手を叩いた。


「そこだ、あのノーマークの眼鏡にやられちゃった。オヴェリアのおまけみたいなあいつさ。なんなんだよあいつはさぁ、役立たずだが最後の最後で活躍するやつかよってやつ。

 だいたいなんだよあの龍特化型の封印の禁呪とか反則そのもの。いくら魔術系無効化といってもあれは別格。

 こちらが龍の力を限界まで高めていたから逆効果が働き結果的に封印を成功させちまった。土俵際のうっちゃりってやつだね。関係ない奴にひねられちまってさらそれからこっちは手も足も出さぬままオヴェリアが急病で死んで勝ち逃げとか、僕の龍としての面目は丸つぶれだよ。人間って短命過ぎ、ねぇ?」


「そういうことだったのか。ヤヲさんの封印解除と共にあなたも解除されたわけみたいだが、なんのために僕らの前に?」


「どちらかというと君たちが僕の住処に現れたようなものだが、まぁそこは良いか。いつかこうなる時を僕は待っていたようなものだし。

 それよりもだ、それよりも……ねぇアーダン、君の勝ちだよ」


「勝ち?」


 俺は言った。


「勝ちさ。五十年前に言ったいま一度の奇跡を約束通りもたらそう。君は僕に何度も言った。彼女は龍の力には負けないってな。

 その言葉で僕はどこまでも強くなれたのに、勝てなかった。最後の眼鏡による禁呪も見ようによっては彼女の力の一部だ。あれは絶対に発動不可能だから『禁じられた術式』となったわけだからね。

 そしてオヴェリアは死んで三年の喪が明けその死は完成してしまった。

 賭けはそちらの勝ちで取り分は総取りだ、どうする?」


「奇跡をまた起こせるとでもいうのか? なら……いや、無理か」


「前回同様は無理だけど、ほんの少しだけはできる。君の気持ちは分かっているし、それをお望みだろうし、やる?

 ちょうど良い憑代もいるし、まさにそのための場所だしさ。お孫さんのお姉さん、なにかあの子の遺品はある? あるとやりやすいのだけど」


「あの子って御婆様のこと? ならあるわよ。もっともこれは御婆様からあんた宛だけど、はい」


「手紙か……随分と分厚いな」


「遺言のひとつよ。あんたが目覚めた後のしかるべきその時に渡して欲しいって書き残してあってね。

 それっていつなの? とずっと考えていたけど、いまよね。これしかないタイミングでさ。開封して読む?」


「いや、読むよりもここはこれを介してオヴェリアちゃんを呼んでもいいか? たぶんお前の身体を借りるとかになると思うが」


「えっ? いっ良いけど、でもそれって、大丈夫なの? 私が元に戻らなくなるとかすごく嫌だし話を聴けないのもちょっと」


「そこは安心して。お姉さんの身体は借りるけど話が終わったらすぐに消えるからさ。ずっといさせるとか僕が疲れきっちゃうし。

 それとお姉さんの意識は半分ある状態にして、ここまでの旅の記憶も共有させれば話は早いだろうし」


「つまり私が知ったここまでに到った事情を御婆様が知ることになるわけ? 大丈夫なのそれ?」


「大丈夫だ」


「……あんたがそういうのなら止めることはできないわね。ならお願い、私も話を聞けるのならこちらは問題ないわ」


「では行うが、ねぇ君」


「なんだ?」


「僕は君に恩返しをしたいとずっと思っていたのにこうなっちまったわけだ。僕のことを恨んでいるでしょう」


「全然」


「うん、分かっているよ。君の思考は意味不明だけどなんとなく理解しています。むしろ逆にこちらに感謝ですよね」


「ああ、そうだな。よくオヴェリアちゃんに負け続けてくれた、ありがとう」


「こんな感謝の言葉もないなぁ。僕は本当に本気でやりましたからね。もうなんか弱くてありがとうにも聞こえてなんとも。

 まぁ僕の唯一かつ絶後の契約者ですからね。君が喜んでくれるのならもうそれでいいです……ではいくよ」


「わっすごい光……これが奇跡の輝きというやつ……?」


 黒き金色によって包まれ出したアルマの瞳の色は徐々に変わりだし、それから表情も微妙に変化していき、そこにいるものが誰だかラムザにすぐには判別できていないようだった。


 だが俺は微かな変化であってもそれが誰であるのかすぐに分かり、それから俺達二人は見つめ合った。


 無表情であった彼女はほんの少しの間からすぐさま瞳の色が急激に変化し、その表情も見知った激怒のものとなり、声を掛けようとするその寸前に俺の左頬に強烈な痛みが走った。


 俺はオヴェリアに叩かれたことが分かった。

明日、最終回

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