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回想 白星と黒星(第二次聖戦中)

 こうして私の人生はいわゆる序盤が終わり、中盤へと進んでいくこととなる。


 掛けがえのない叔母と友との別れを経て私の子供時代は終わりを迎えました。


 勇者隊の残党はザク王国の辺境の片隅に潜伏し再出発の目途を立てたところで、私達はずっと延期をし続けていた婚姻の儀を済ませ夫となるディータとの生活が始まり私は大人になりました。


 私の人生は時と運命により前へと進んでいく。


 その新たに編成された勇者隊は貧弱そのもの。勇者ジークとその主力たちの死により戦力は崩壊寸前であり、長期間の準備期間を余儀なくされました。


 私は勇者ジークの御子息の世話係または教育係の一人でもある義母となった。


 勇者の母であるジーク夫人を組織のトップに据え、私と夫は幹部としてに今後の方針を定め実行に移していく日々。


 二人の大人の庇護下にあったあの頃のようなもうお気楽な時代は遥か彼方に遠のき、責任を背負い権力を行使する日々。


 自分自身でさえあの頃の自分の姿が日々薄らいでいくようであって、まったくの別人のように思い出すだけです。


 ただあの人だけがその時の私のことを覚えているでしょう。


 あなたと会えば、その口からあの頃の話を聞いたら、いえ、名を呼ばれさえしたら私はきっと甦るはずです。


 そしてあの戦いの後に私達は何度も出会いました。この十年近くの戦いにおいて十何回と出会い、そして戦う。


 魔王側との重要な戦闘の際に、あの人はよく現れました。私は脅威を覚えると共に安堵していることを周りの誰も分からないでしょう。


 あの人が、生きている。誰にも倒されずに、まだ生きている。そう、あの人は勝手に倒されたりなんかしないと私にはどうしてか確信がありました。


 彼はきっと魔王軍最強の戦士であるはずです。


 魔王との契約とはいえ、まるで偉大なる龍と契約を結んだかのように、あの人の身体には奇跡が宿っている。


 あらゆる魔法を無効化にする夜空のようにきらめく衣に卓越した剣術。あたかもそれは私が教え共に研鑽を重ねていたザクのというか私の剣術。私とあなただけの剣。


 勇者隊の主力陣も始めの頃はあの人によく戦いを挑みましたが、誰も敵いませんでした。いいえ、敵うという次元ではなく、戦いにならないのです。


 あの人は向かってくる攻撃を全てかわしその武器を素手で砕き破壊する。ですがその先はありません。戦闘不能にさせておしまいで誰であってもあの人は戦わない、そう私以外を相手にしない。


 鞘から剣を抜き剣先を向けるのは私にだけ、剣を使うのは私にだけ。その私にだけ向ける殺意。


 私だけへの想い。


 だから戦闘となって乱戦となってもこちらへの道は勝手に開きます。仲間達はもう分かっています。私たち二人の戦闘が始まるということを。


 まるで決闘のような、いや、いつもの稽古のような。だけどあの人の剣術は私のです。


 そう、あなたは私よりも強いもののことを知らないからこそのその強さ、その限界。私にとっては自分自身を超える戦いと言えました。


 あの人は私にギリギリ敵わずいつも敗れ撤退し、次回に戦う際は前回の私に勝てるぐらいの強さを有しましても、私の方も前回よりも強くなってあなたに対峙します。


 だから私達はほぼ互角に戦い、少しだけ強い私が勝つのです。あの人は劣勢となると負けを認めるように決まって私の前から挨拶も無く去ります。


 だけど次も必ず会えるということは分かっています。あなたは私の前から逃げない。私を追い越すその時までは。


 これは歪なそして確かな師弟関係といえたかもしれません。


 私の二つ名である剣星はあの人との多くの戦いからつけられたものです。誰も対抗できない魔戦士に対抗できる唯一の星、剣星ということです。私が白星ならあの人は黒星。


 たくさん戦えばそのうちあなたは屈し魔王の呪いが解けるのかもしれない、あるいは魔王を倒せば呪いが解け……その希望のもと私はあなたと戦い続け祈り続けた。


 再会と戦いの時、それはこの十年の私の時での一コマで、夫との時、子との時と同様に掛けがえのない時でもありました。


 けれどもそんな希望の中にあった関係も終わりを告げようとしています。何故ならあの人はついに私の力を超えようとしている。


 前回の戦いの際に私はあなたを撃退できなかった。初めての本当に互角の戦いだったのです。これは私の限界が来たのかもしれません。


 あの人はまだ限界ではない可能性がずっと高くまだ強くなれるそんな気がします。


 その戦いは魔王の命令によってか敵側の撤退となり私は敗れずに済みましたが、これから行われるであろうこの戦争における最後の戦いの際に、魔王の最側近としてあなたは私と決戦を行うつもりでしょう。


 私はあなたに、殺されてしまうのかもしれない。もしくは逆に……だけどもそれも……運命かもしれません。


 私はそれを覚悟しなければならない時が来ました。あなたが私を殺して生きるか、私があなたを殺して生きるか。二つに一つの運命の時が。


 でも逃げることはできません。私はあの人の師なのですから。さぁ私達の物語とその関係を完成させましょう。

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