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龍の祠

「そこは変な空間だったんだ。魔王軍の兵に見つからないように人気のない通路を通っていたら、何も無い空間に突然に辿り着いたんだ。

 そこだけ何かが削ぎ落とされているような雰囲気すらする場所、俺自身もなぜそこに着いたのか分からないがいつの間にそこにいたかのような錯覚、まるで誰かから導かれるようにして入ったその部屋、それがここだった」


 そう言いながら俺は通路の果てにある扉を開くと、はたしてそれがあった。


 その部屋には墓らしきものが三つ。


「なんとなく予感はしていたよ。墓標は見るまでもなくわかる。真ん中の墓がアグでその右側がホリンで左側が俺、そうなっているだろ?」


「はい。真ん中はともかく左右も当てられるとは」


 ラムザが答えた。


「オヴェリアちゃんは俺の右側にいたがっていたからな。だったらこの墓の位置の考案者はそうするだろうし」


「御婆様が特にこだわったのはこの三つの墓のことね。ここに新たに墓をおくことに執念を持っていたのよ。

 二つではなく三つ、そこが重要だったわけよ。ここはザクの間とも呼ばれていて一族のものはこれからこうやってお参りに来ることになると思うわ」


 アルマが真ん中の墓石に頭を下げながら言った。


「三つか。俺は生きていると公表できないからな。自分の墓を見るのは妙な気分だが、とりあえずここにいるとされている俺は、傷つき倒れていた剣星オヴェリアを庇いそして死んだ、こうなっているわけだな……そういう風に死ねていたら英雄に相応しいな」


「だけどそうならなかった、とあんたは言いたわけよね」


「そうだ。俺はそんな立派なことはできずに脱出用の扉を報告した、それぐらいだ」


「この第一次聖戦の決戦の詳細ですが御婆様の証言によるとこうなります。

 勇者ジークは魔王との戦いで優勢でした。二人の力量はやはり魔王に分が悪く勇者ジークが優位、それに加えて御婆様やアグ・リアスを含めた他のメンバーの支援なども含め絶体絶命な状態なのが魔王。

 だがしかしここで誰もが思いもよらぬ展開となります。魔王は勇者ジークに突撃し抱き着きそして自爆しました」


「あの大爆音はそうだったのか……」


「勇者ジークは断末魔の叫びをあげて戦死し、そこから魔王城は阿鼻叫喚の地獄となったようです。

 自爆によって瀕死故の狂乱に陥ったのか魔王は巨大な魔力による光弾あたり構わず撒き散らす暴走状態となってしまい、誰も止めることができずこうなると魔王というより大いなる災厄と化し、それ相手に誰も戦うことはできず、生きとし生ける全ての存在は城から脱出を図ることとなりました」


「御婆様はもしかしたら勝てるかも、と魔王に向かおうとしたけど近寄ることもできず、それどころか直撃弾を受けそうになって諦めたとのこと」


「なんだと! 無事、だったんだよな……恐ろしい。だからもう戦闘どころではなく暴走状態の魔王から逃げるかが問題となったわけだな」


「おそらくみなさんが使用した裏口には魔王軍の兵が殺到して使用不能となったのでしょうね。

 この戦いで解放軍側の最前線で戦っていた主力の大半が戦死しました。全滅と言ってよくその中ではあのノイスとアレクもいて」


「……そうだった。瀕死になりながらも彼らはジーク様の剣をなんとか回収し届けてくれたんだ。これが御子息様の手に渡りこうして二人は使命を全うした。彼らの伝説の完成だ」


「あんたもいたじゃないの」


「俺は途中で受け取っただけだ。しかもそれを他のものに渡していちはやく脱出させただけだ。全然違う。俺とあの二人は違うんだ」


「そうかしら。アレクとノイスの二人が信用できない男に大切なものを渡すとは思えない。あんただってそう思うでしょ?」


「思う……が」


「あんたがどう思おうとね、あんたがそうでないといってもね、あんたたち三人がいなかったら勇者ジークの剣はジーク二世に継承できなかったと考えた方がいいわ。実際にそれが事実なんだしさ」


「……それでも違う。あの二人は本物の英雄なんだ」


「……そう。でもこれだけは聞いて。御婆様は違うとは見ていなかったと。それがいまの三人の関係としてああ残したのよ。私もやっと気づいたわ」


「……」


「ヤヲさんは剣を確保し安全な場所まで持っていったあとは階上へとあがり、救出活動をしその中で負傷している御婆様を発見し抱えるも倒れ来る柱を背中に受け庇いそのまま、ですね」


「そういうことにしているわけか。俺はとにかく上の階にあがり、アグやオヴェリアちゃんを捜していた。そしてオヴェリアちゃんは見つける前に俺はまず負傷していたアグを助けて運びそのあとホリンを……ホリンが死んだ後にアグが……その後に……そして……えっ俺は何を……」


「どっどうしたの? 辛いけど受け入れて、思い出して」


「違う、アグとホリンの死はもう事実だ。まだ記憶がぼやけているも思い出すもなにもそれは………だけどなんだこれは? オヴェリアちゃんが、死んでいる?」


「えっ? そうよ亡くなったわよ」


「ちっ違う。死んでいるんだ」


「生きてはいないわよ」


「そういうことじゃない! ここで……死んでいる?」


「あんたは何を言っているの? 死んでるはずないじゃない。だったら私たちいないし、ここで御婆様が奇跡とも言える生還を果たしたからこそ私達がいるのよ」


「でも……死んでる。魔王は……最前線にいた戦士を全員殺すつもりの暴走で……」


「ちょっと落ち着いて! ほら座って。辛い現場でしょうけど、気をほら落ち着けて。だいたい御婆様はあんたが助けた……んじゃないのよね、あんたの言い分だと」


「そうだ……だが俺はいったい何を思い出そうとしてるんだ?」


「いつもと違いますね。ヤヲさんはこういう場合はすぐに思い出すのに今回はなにかおかしい」


「ああ……いつもは徐々に思い出してくる。でも今回は遅いどころか記憶の再生が部分的で途切れ途切れだ。何かフィルターがあるように……なにかがある」


「それにしても変ね。このあとにあんたは魔王側につくのだけれども、いつそれと接触したの? 魔王って現在絶賛暴走中じゃん。

 接触したら殺されるわよ。だから違うのと接触したわけだけど、そいつってどうしてあんたに近づいたのかしら?」


「そうだな……俺は誰と契約したんだ? ずっと魔王とだと思っていたが」


「それ以外と、ここでになりますね。この謎の空間で」


「ここになるが……おい、あれはなんだ?」


「うん? ああ、あれは龍の祠ですね。契約した後に龍は祠を設けるようですが、そうそうこれが以前にお話しした行方不明の勇者の謎なのですよ。

 勇者ジークの祠は壮大なものだったらしいのですが、こちらのはこじんまりとした可愛らしいものでして。どうやらここに始めからあったようですよ」


「いや、俺は知らない。こんなのは見ていない」


「あっそうか。そういえばここは何も無い空間と言っていたわね。

 それならあんたが意識を失ったあとに作られたんじゃないの? でもこの龍と契約した勇者って第二次聖戦にもどこにも登場しないから変なのよね」


「祠にはまだ生気が宿っているためその勇者はまだ生きているという説があるようですけど。

 まぁ生気というのもあやふやなものですし、存在していない勇者が生存しているのもおかしなもので。もうとっくの昔に戦争は終わっているのに、それならどこで何をしているのやら。ヤヲさんはなにかご存じないですか?」


「俺は……知らない」


「分かったわ。今日が無理ならいったんここを離れましょ。まだ見たいところとかあるしさ、そっち回っていこ」


「俺は……」


「あっヤヲさん? 駄目ですよそっちに行っては。その祠付近は立ち入り禁止で」


「違う、知っている……思い出した」


「えっ? あんた何を言っているの? わっ祠が光ってる!」


「俺はこれを……いや、お前と……」


「嘘っ! 龍が出てきた」


「契約を結んだ……」

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