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ザク王家の婚姻事情

「それなのにどうして殺したの?」


「アルマ、よせ」


 シガレッツの地にて俺達三人は高原を歩いている。かつてそこにあったジーク隊の陣営の説明を聞き思い出しながら語っている最中に、アルマが呟きラムザが止めた。


「よさないわよ。これが大事なんだからさ。再確認するけど、あんたが倒れている大叔母様の胸元から剣を抜いたところを御爺様が見ているのよ。

 ここは確実なの。それともなに? 御爺様は見間違えているか嘘でもついているという反論とかある?」


「ない。ディータは俺のことを良く思っていないが嘘を吐く男じゃない。

 もしもそこで嘘を吐くとしたらオヴェリアちゃんがそれを許さないし。そこは疑う余地が無くなによりも俺の記憶にもそれがある。

 剣を抜き近くからオヴェリアちゃんの悲鳴が聞こえ、そこからは目の前が真っ暗となりその後は途切れ途切れとなり、その後はいまのこれだ」


「あんたの罪を探るこの旅だけど、ここまで特に成果は得ていないまま進んでいるわね。

 とりあえずあんたが彼女を愛したのは脇に置いといて、ザク王族の婚姻事情ってご存じ?」


「……それは後から知った」


「ですよね。御婆様にとって普通過ぎてわざわざ説明しませんし、聞かれてから答えるとだいたい驚かれますし」


 ラムザが苦笑いしながら言う。


「俺も驚いたよ。まさかあのオヴェリアちゃんには許嫁がいて、しかも十五歳で結婚するだなんて」


「こっちからすると、どうして次期女王に御相手がいないと思う方が理解に苦しむんだけどね。

 あんたにはまぁいないってのは分かるけどさ、実はいたとかない?」


「いるはずがないだろ。いたら英雄になりたいからといって戦場にはでないし、むしろいないからこそ名を上げたいという動機すらあった」


「あっそ。でもさ、ここだけの話でアレクやノイスにはいたんでしょ?」


「いたというか、多すぎるというか、あの二人はモテすぎて大変だからそういう環境から出たかったかもしれないな。

 もしかしたら村にいても恵まれ過ぎて退屈さもあったから刺激を求めて、と使命感の他にそういう面もあったと思う」


「なるほど恵まれ過ぎた環境から生まれる冒険心か。ある意味で僕ら二人の旅行もそういう面がありますね。」


「事件調査よ。外遊じゃないんだからね」


「毎食吟味に吟味を重ねたものを食べている癖に。さっきの昼食も俺の分の肉を食べていたよな?」


「そのまんまの意味のただ飯食らいのクセにごちゃごちゃうるさい、話は戻してまずは御婆様でその許嫁はご存じディータ御爺様。

 大呪術師の家柄であり代々ザク王家と婚姻関係を結んできた王国最高峰の名門家。

 婿には最適であり同年齢であることから一発確定。頭脳明晰人格円満スタイルも抜群でおまけというか最重要視されるルックスも美形」


「ここまで自分の祖父を褒めちぎる孫もそうはいないだろうな」


「あんたの前だからあげるだけあげているのよ。

 当時の御爺様は王国滅亡後は別ルートで脱出し、亡命生活を続けておりまだ合流していないところね」


「彼と出会うのはまだ先だな。いわば後半といったところで」


「こう言ってはなんですが御爺様はヤヲさんのことをあまり好ましく思っていない様子ですね」


「当然でしょ。愛する御婆様を何度も殺しにかかってきた存在なんだから」


「でも殺してはならないと言ってきかないのが御婆様であって」


「そこで憎しみが増大していくわけだ。当然だな。

 でもまぁ彼については初対面から睨まれたし印象はずっと悪いだろうな。俺もそこにはすぐ気づかなかったけど」


「鈍感なあんたらしいわね。印象が最悪なのは当然でしょ。許嫁の近くにいる男は基本的に全員敵というわけよ」


「俺に限ってそれだけはなかったんだけどな。ディータは賢いのにそこは分からなかったのがなぁ」


「なに言ってんだかこいつ! 年下の師匠に対してオヴェリアちゃん呼びする男とか、婚約者からしたら不審者以外の何者でもないでしょ。

 よく暗殺されなかったわね。御爺様って棒手裏剣の名手でもあってあんたの眉間を貫くとか簡単にできたのに」


「いやいやそんなことしたら御婆様が大騒ぎするだろ。犯人はすぐに分かるし」


「そうでしょうね! つくづく御婆様に守られっぱなしの駄目な男ね。愚弟といわれても仕方がないわ」


「そこはそう思う」


「ふん! それで大叔母様の件だけどちょっと複雑なのよね。彼女には許嫁はいるにはいたが二度死んでいるの。

 最初の許嫁が病死して、喪が明けてから違う相手と婚姻するもそのあと結婚前に事故死と不幸が重なり、そして戦乱と亡国。

 あんたが見て驚いた二本の刺青はパートナーを亡くしたものがつけるザクの昔の風習よ」


「実はアグ叔母様はイザークの王族史上唯一といって良い女性なのですよね。結婚しなかった成人女性、と。

 もちろん記録上は結婚しているといえますが、実質的にはそうは見なされていない。そしてもう一つは自分で相手を探してそれを夫とすることが許された王女なのです」


「もういまだと分家にはそういう風習は無くなったけど、当時はまだ家も少なかったからね。

 自分で探すなんて当時の王女には想像もできない世界観だったでしょう」


「そして俺がその傍にいた」


「だけどもう一人いたんでしょ?」


「……」


「黙ったと言うことは何かあるってことよね。

 だからあんたは大叔母様を殺したことになった、が一つ目の仮定よ。それでさ、その男の名前は憶えている?」


「ホリン」


 その忘れることなどできない男の名を俺は口に出した。


「そう、彼よ。そうなるわけね。

 それでさ、私はもう一つの可能性もあると考えているの。あんたはそのホリンって人を……」

明日は休みます。

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