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回想 謝れない俺

「なぜ持ち場から離れた!」


 膝を屈しないまでも自分の精神はもう既に倒れ伏していることを感じながら、俺はオルガ様の叱責をひたすらに受けていた。


 俺に宝物庫の見張りを命じたフリート様の側近である騎士オルガ。


 老境に入っているとはいえかつての勢いそのままに傷だらけの顔で以って詰めに詰めてきており、このまま首を刎ねられたいという思いでいっぱいであるもそれを乞い願うことができない。


 その両隣にはアレクとノイスの二人がいるからだ。


 同郷であるため連座で叱責を受けている。

 俺だけでいいのにどうして。


「俺が、悪いのです」


 震えながら俺が言うとすぐに雷が落ちた。


「そんなことは分かっている! なぜその場から離れたと聞いている!」


 どうしてって、そんなのは……そんなのは……


「敵がいたからで……追いかけて倒そうと」


 手柄を立てようと、名誉を得たくて。


「見え見えの罠だ! それに敵とはその場で戦えば良いものの追いかけるとはどういうことだ! もう少しで味方のものが来るとは分かっていただろうが!」


 追いかけなきゃ、倒せない。戦功が逃げる。だから俺は……


「つっつい夢中になって」


 俺は前線に出たくて。


「お前のその無責任な行動のせいで民の財産と貴重な戦利品は全て駄目になった! 」


 俺の未来も駄目になるというのか?

 自らの功名心によって俺の未来は、閉ざされる。


「でっでも剣が一振り」


「あんなもの使い物になるか! ジーク様が触れた途端に砕けたぞ! しかも自ら危険にさらしてそんなものを回収するだなど、そんなことで罪滅ぼしになるとでも思ったのか!」


 思っていない……思っていないが、でもそこはせめて少しでも軽減できると思って俺は。


「べっ弁償ならします、どうかそれで」


「弁償できるわけがない! どれだけの財宝だったと思っているんだ」


 ならどうすればいいんだ。なら殺してくださいとでも? 


 そうだそうしてくれ、俺を殺してくれ。


 こんな辱められ惨めな思いをさせなにも償えないのなら、もう死んだ方が良い。


 俺の名誉のため死を選ばせてくれ。


 頼む、ああ二人が間にいるから、できない。殺してくれとかわめきちらせない。


 これ以上の恥の上塗りできない、だけど。


「これ以上責めても仕方がない。とジーク様は思っているだろうが僕も同意見だな」


 清聴してくれていたフリート様がそう言ってから立ち上がる。


「財産が焼けたのは真に惜しいが、燃えた後にいくら嘆いても後の祭りだ。今後のことを考えよう。

 まずアーダンに命令する。自らの命でこの罪を償おうとしないこと。

 それは償いにはならずむしろ負債となる。隊や勇者ジークそして同郷の仲間たちにこれ以上の迷惑をかけないように。

 慣れない配置につけたのは用兵側のミスでもあるので一定期間の給与を減額の罰とする。

 これ以後は通常配置での任務に尽くすこと。

 そしてアレクとノイス。この度の同郷者の失態は真に遺憾だろうが、二人のこの度の活躍と今後の活躍を以て相殺とする。騎士オルガもこれでいいね?」


「異論はございません」


 オルガが答えるとジークはゆっくりと頷きこれにて略式裁判は閉廷となった。


 俺達三人は退室し廊下を歩いた。

 そのあいだ俺は何も言えない、言えるはずが無かった。


 ごめんも言えない。どうしてだ……それはもうそんな言葉では済むレベルではないからか。


 だがそれでも言わないといけないのではないか? 


 被害を被った二人に対して俺は……何もできず足を引っ張った俺は……だが言葉はなく三人の足音が重なったりズレたりとそのことだけが耳に入るだけ。


 延々と考えるだけで何も言えずに俺達は二つの部屋の扉についた。


 二人の戦士には一室があり、俺は大部屋での雑魚寝。その待遇の差。


 二人は無言のまま扉に手をかけ、止まった。


 なんだ? 何を言う気だ?


 さっきからなにも話さないのは俺への言葉を探していたのか? 俺を……罵倒するかそれとも村に帰れというか。


 それに対して俺は、なにも言い訳できない。

 荷物をまとめて帰るしかない。

 自殺は駄目だが帰国は……それで償えるのなら。


「おいアーダン」


 ノイスの声がし俺は視線を下に逸らした。


 合わせ、られない。

 合わせたら泣いてしまいそうだ。

 いや、自分の情けなさに耐えられない。

 どうかそれを分かってくれ。どうか目を逸らすなと言わないでくれ。


「しっかり頼むぜ」


 アレクの言葉が続きそしてそれだけで扉が開く音がし二人は入っていった。


 俺は何も答えられなかった。なにも、言えなかった。


 ただそれだけが情けなく、俺はなにに対してか分からないまま、涙を流した。 

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