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落としもの
「おあ~! おあ~!」
「ご免ね……ご免ね……!」
「えうっ、えうっ……」
「どうか、幸せになって……!」
「おぁあ~~~~~!!」
※ ※ ※ ※
「行って来まーす!」
「はーい、行ってらっしゃい、拓児さん」
春の日の朝。
雲一つ無い青空。
俺は、いつもの様に、同居人の声を背に受けて、
男だらけのシェアハウスの玄関から、勤め先の会社に、出勤しようt「おあ~!」
「へっ?」
耳を劈く様な、泣き声。
出所は、どうやら、足元だ。
恐る恐る、見下ろすと。
「!? うわぁあぁあぁあああ!?」
勢い良く開けた、玄関のドアの、前に居たのは……
「あ……、
赤……ちゃん……!?」
お包みに包まれ、籐で編んだ籠に入れられた――
赤ん坊、だった。