08 アオと過ごす日々
それから私はアオと一緒に、またあの花畑に来ていました。
「ふー。やっと落ち着けるね」
「まぁ、いろいろあったからな」
「でも、怪我する人もいなくてよかったよ」
「そしたら、お前の出番だな」
「そんなの嫌だよ! 誰も傷ついてほしくないもの」
私が怒ると、アオは微笑んだ。
「そうだな。お前は優しいからそんな事望んでないだろう」
「もう、わかっているなら言わないでよ」
アオとこうして過ごすのは、とてもいい気持ちだった。そんな時、オーガがやって来た。
「アオ様、また魔王様がルナを連れてこいと言われていますが……」
「……仕方ない。ルナ、行くぞ」
「えー! どうせまた妻になれとでも言うんでしょ? 私嫌だよ」
「そう言ってやるな。魔王様もルナの顔が見たいんだろ」
私が頬を膨らませていると、オーガが近づいてきた。
「いっその事、アオ様と結婚すると言ったらいいのではないか?」
「あっ! それならいいかも!」
「やめろ。俺が始末される……」
私とオーガがハイタッチしていると、アオが呆れたようにため息をついた。
「えー、いい考えだと思ったのに」
「冗談に決まっているだろ」
「冗談だったんかい!」
あのオーガとは冗談を言える仲になりました。君、冗談言えるのね。
リュウヤとは、あの小屋で時々会っています。もちろん、アオも一緒にです。
「リュウヤ、久しぶりだね。元気だった?」
「あぁ、元気だよ」
あの後、リュウヤのパーティーは、私の件もあり解散したそうです。
「あの人たち、私を売ろうとしてたもんな。許せない!」
「その件は本当にすまなかった。それで、僕は旅に出ようと思うんだ」
「旅に?」
「うん。もっといろんな事を知りたいんだ。魔物の事も、人間の事も」
そう言って、リュウヤは私とアオを交互に見る。
「そうなんだ……頑張ってね!」
「ルナに応援されたら、どんな事でも出来そうな気がするよ」
リュウヤは私の手を握ろうとしたので、アオがギロッと睨んだ。
「じゃぁ、保護者の目が怖いからもう行くね。またね、ルナ」
「うん! また会おうね、リュウヤ!」
リュウヤは振り向かず、大きく手を振って森の奥へ歩いていった。
「それじゃぁ、アオ。私たちもあの花畑に戻ろうか」
「あぁ、そうだな」
私はアオの背中に乗ってその場から飛び立った。
私の世界とは別の世界、異世界。
この世界に来て、いろんな人たちに出会って、大変な目にもあって。
でも、アオと一緒なら私、なんでも出来そうだよ。
「ふふっ」
「どうした、ルナ。何を笑っている?」
「なんでもないよ! アオ、いつもありがとうね」
「なんだ、いきなり」
「アオがいてくれるから、私頑張れるんだよ?」
「俺はお前と契約しているから、仕方なくだ……」
「もー! 素直じゃないんだから」
でも、そんなところも好きなんだけどね。
私はまた微笑んで、アオの背中を撫でる。アオは、くすぐったそうに身をよじった。
「やめろ、くすぐったい」
「あぁ、ごめん、ごめん」
そんなやり取りをしていたら花畑に着いた。アオが着地したので、私はひょいっと背中から降りた。
「ふー、いい気持だね」
「そうだな。俺はちょっと寝るぞ」
「そうだねー。私もちょっと寝ようかな……」
そう言って、私はアオにもたれかかって眠りについた。
それを見たアオは微笑んで、私を起こさないように横になった。
静かな時が流れて、心地よい風が頬を撫でる。
こんな日常がずっと続きますように。私は眠りながらそう願った。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。