07 可愛いは正義
「アオ……もう一度あなたに会いたい。私の所に来て!」
すると、握っていた指輪が光りだす。
「あっ、ルナ! 何かがこっちに向かってきてるよ」
「え?」
遠くをよく見ると、何かがすごい勢いでこちらに向かっているのがわかった。
近くまでくると、それはアオだとわかるまで時間はかからなかった。
「アオーっ!」
私は大喜びでアオを呼ぶ。私たちの所に来たアオはリュウヤを睨みつける。
「よくもルナをさらってくれたな」
「僕はその子のためにした事だよ。でも、それは間違っていたようだね」
「2人ともケンカしないで! アオ、また会えてよかった」
私はアオに抱き着いた。アオも安心したのか頭を撫でてくれた。
「さぁ、早く戻ろう。魔王様が人間の国を滅ぼそうとしている」
「えっ! なんでそんな大事に……」
「お前がさらわれた事が原因だろ。だからその姿を魔王様に見せないと」
「わかった! 早く行こう!」
私はアオの背中に乗った。そしてリュウヤの方を向く。
「リュウヤ、ここまでありがとう! じゃぁまたね!」
「あぁ、また会おう」
私たちは少ないけれど会話をかわした。そしてアオは私を乗せて飛び立った。
「おい、リュウヤ! あのチビッ子はどうした?」
リュウヤは、遅れてきた仲間たちの方を向いた。
「お前たちとは少し話をした方がいいな」
リュウヤは微笑んでいた。しかし、その目は笑っていなかった。
仲間たちは、リュウヤの笑みに顔を引きつらせていた。
★★★
街から少し行った所に、アルベルたちはいた。
「魔王様、もう少しで人間の街が見えます」
「よし、手始めにその街からおとすとしようか」
アルベルはにやっと笑うと、魔物たちに呼びかけた。
「全員人間を1人残らず倒してくるといい! 我らの力を示すのだ!」
「おー!」
皆が雄たけびを上げた時、私たちはアルベルたちに追いついた。
「魔王様ーっ! アルベル様ーっ!」
「はっ! この可愛らしい声は、ルナか!」
「はい! ルナです。ただいま戻りました!」
私がアオの背中から顔を出すと、アルベルはとてもうれしそうだった。
「おぉ、我が妻よ。よくぞ無事であった。怖かっただろう?」
「大丈夫です。アオも来てくれましたから」
「そうか。しかし、ルナを怖がらせた罪、人間どもに裁きを下さなければ……」
「それはおやめ下さい! 今すぐ戻って下さい!」
「ルナがそう言っても、それでは示しが……」
「アルベル様、これを見て下さい!」
私はアオの背中から降りて、アルベルの前に出た。
そして持っていた青色の香水を自分に吹きかける。
私は小悪魔の姿になり、目を潤ませ全力でお願いポーズをした。
「人間とは争わないで下さい。どうか、お願いします……」
「はぅっ!」
私を見たアルベルはのけぞっていた。なんだろう、ドキューンという効果音も聞こえたような。
「る、ルナがそう言うなら仕方ないな。皆の者、我らの土地へ帰るぞ!」
「魔王様、せめて鼻血をふかれてはどうですか?」
アオは呆れていたが、アルベルは私を抱きしめた。
「お前は可愛いなー。さぁ、俺たちの土地へ帰ろう」
「はい、アルベル様」
こうして、魔物と人間の争いは、始まる前に終わりました。