04 勇者一行
あまりのわかりやすさに、私は顔がにやけそうになった。
「何をにやけている……」
やばい、気づかれた!
私は慌ててアオの後ろに隠れた。
「お前はもう少し表情を隠す事を学べ」
「だって、つい顔に出ちゃうんだもの。アオとは違うの」
「アオ?」
私がアオと話していると、オーガが首を傾げた。
「なぜあなた様の事をそう呼んでいるのですか?」
「私がつけたんだよ。名前があった方が呼びやすいでしょ?」
「俺たち魔物に名前は不要だ。魔王様は別だがな」
「えー。アオは気に入ってるよ。ねぇ?」
「……おい、勝手に決めるな」
「そうだ! 人間の分際で名づけなど!」
「いいじゃない。あなたもその方が呼びやすいでしょ?」
私がそう言うと、オーガはそっぽを向いた。
「オーガよ。お前にはアオと呼ぶ事を許可する」
「なっ、よろしいのですか?」
「……構わん」
アオはぶっきらぼうにそう言うと、また横になった。
「では、アオ様。俺はここで失礼します」
オーガはそれだけ言って森の奥へ消えていった。
オーガを見送って、私はふとアオを見た。
「ねぇ、アオ。この森って他にも魔物がいるの?」
「そうだな。オーガの他にスライムやオーク、ゴブリンなどもいるな」
「私、ここに転生して川に行ったら、でっかい蛇が出てきたんだよ!」
「あー……それはお前がそいつの縄張りに入ったからだろうな。それに人間は珍しいから獲物とでも思ったんだろう」
「えーっ! じゃぁもうちょっとで私食べられるところだったの?!」
「まぁ、そうだろうな」
「よ、よかったー。あの時全速力で逃げて……」
「だが、お前の足ではすぐ追いつかれるだろうに」
「え? でも、追ってこなかったよ?」
私が首を傾げていると、アオは何か思い出したように頷いた。
「あぁ、ここは俺の縄張りだからだな。どうだ、またその蛇に会ってみるか?」
「いえ、遠慮しときます!」
私はすぐに片手を上げた。また襲われでもしたら大変だし。
「なんだ、つまらんな。その姿なら奴もわからないだろうに」
「あ、そっか。今私は魔物なんだ」
それなら大丈夫かな。アオも一緒にいるし。
私がわくわくしていると、アオが呆れてため息をついた。
「俺は一緒には行かないぞ」
「えーっ! なんでよ!」
「面倒だからだ。お前1人でも大丈夫だろう」
「嫌だー! 一緒に行こうよー!」
私はアオの体を思いっきりゆすった。
「しつこいぞ……行かんと言ったら行かんのだ」
アオはしっぽで地面を叩いた。あ、すごく怒っている。
私はアオが怒っているのがわかったので、大人しく離れて1歩下がった。
「じゃぁ、私だけでちょっと行ってくるよ」
「ふんっ」
アオは鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
そして私が森へ行こうとすると、向こうで爆発が起こった。
「な、なに?! なんかすごい音がしたんだけど」
「どうやら向こうが騒がしいようだな」
私たちが話していると、森の中から小さな光の球がやってきた。
その光は私たちの所まで来ると、妖精の姿に変わった。
「大変です! また勇者たちがやってきました!」
妖精はすごく慌てているようだった。アオもそれを感じとったのか体を起こした。
「仕方ない。追い返すとするか……」
「私も行くよ!」
「お前はここにいろ」
「でも、怪我している魔物もいるかもしれないじゃない。私の力があれば便利でしょ?」
「……」
アオは私をじっと見つめてきた。やばい、怒られるかな。
「……わかった。だが、目立たないようにするんだぞ」
「ありがとう、アオ!」
「あの、この方は誰ですか?」
妖精は首を傾げていた。まぁ、そうなるよね。
「気にするな、行くぞ」
そして、私たちは森の奥に行った。
★★★
森の中の少し入った所に、ひらけた土地があった。そこで魔物と勇者たちの戦闘が始まっていた。
私たちは茂みから様子をうかがっていた。
「なんか、魔物の方がやられている気がするんだけど……」
私の言った通り、魔物の方が押されていた。よく見ると、負傷している者もいる。
「じゃぁ、私は向こうに行って怪我している魔物を治してくるよ!」
「あ、こら待て! 勝手に動くな!」
アオの止める声も聞かず、私は魔物が集まっている所に行った。
そこには、たくさんの魔物が傷を負っていた。軽傷の者から重傷の者まで。
私は急いで近づいて傷に手をかざした。
「ひっ! な、何をするんだ!」
「落ち着いて。傷を治すだけだから」
すると、徐々に傷は治っていった。それを見ていた他の魔物は大喜びしていた。
「すごいぞ! これならまた戦える!」
「ありがとう! 他の奴らも治してくれ」
「わかった。怪我をしている魔物はこっちに連れて来て下さい!」
私が治しているのを、遠くにいた勇者が見つける。
「なぁ、あそこにいる魔物、仲間の傷を治していないか?」
「本当だな。これ以上回復させられたら、こっちが不利だぜ」
「あの魔物から倒すか……」
「何をこそこそ話している! フレイム!」
オーガは炎の球を放ったが、魔法使いが水の球で応戦してくる。
「ウォーターボール!」
「ちっ……」
「オーガ! あなたも少しやられているじゃない。治してあげるから……」
「なっ! こっちに来るな!」
「マジカルサンダー!」
「えっ……?」
魔法使いの放った電撃が私に向かってきた。