表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

03 俺の妻となれ

「はじめまして、小さな人間のお嬢さん。俺の名はアルベル」

「はじめまして。私は川崎 ルナです」

「では、ルナ。俺の妻にならないか?」

「はい?!」

 魔王・アルベルは何を言い出すのか。

 私とアオがぽかんとしていると、アルベルが私の手を握ってきた。

「お前はそのドラゴンの傷を治してくれたそうじゃないか。それに可愛くて、優しさもある。俺の妻にふさわしいと思ったのだが、どうかな?」

「魔王様、この者はまだ幼いです。魔王様にはふさわしくないかと……」

「いいや、ルナは治癒魔法が使えるのだぞ? これを逃す手はないだろう」

 なんだ、結局はこの力のためか。喜んで損した。

 私があからさまにがっかりしたのが見えたのか、アオが私を引き寄せる。

「魔王様、この者は私が見張っておきます。なので、ここで失礼いたします」

「アオ?」

 それを聞いたアルベルは、つまらなそうにため息をついた。

「仕方ないな。妻というのは一旦保留にしておこう」

 いや、妻になんかなるものか!

 私がすねていると、アルベルは小さな瓶を出した。

「それはなんですか?」

「一応ここは魔物が暮らす土地だからね。人間がいると目立つんだ。だから、この香水を使いなさい」

 アルベルが出した香水は2種類あり、1つは青、もう1つは赤だった。

「これは魔族に変身できるもので、青の方を使うと……」

 アルベルは、青色の香水を私に吹きかけた。すると、小さな角と羽としっぽが現れた。

「わぁー! アオ見て! どこからどう見ても魔物だよ」

「ルナは小さいから小悪魔だね」

「……少し魔王様の趣味も入っていませんか?」

 私は変われた事に喜び、アオは少し呆れていた。

「こらこら、ルナ。あんまりはしゃぐんじゃないよ。それに、水とかで香水が落ちたら元に戻ってしまうからね」

「は、はい! 気を付けます」

「あと、人間に戻りたい時は、こっちの赤色の香水を使いなさい」

「わかりました。ありがとうございます」

 私が香水を受け取ると、アルベルはもう1つ何かを取り出した。

「それは?」

「これは契約の指輪だよ。これもルナにあげよう」

「本当ですか!」

「もちろんさ。さぁ、俺と契約して妻に……」

「私、アオと契約する! アオがいい!」

「な、なんだと?!」

 アオとアルベルが驚いていると、指輪が光りだし、アオの顔に少し模様が出来た。

 アルベルを見ると、がっくりとうなだれていた。

「あれ、魔王様?」

「契約は成立してしまった……その模様が出たのが証拠だ」

 私はうれしかったが、アオはとても嫌そうにしていた。

 すると、アルベルからまた手を握られた。

「俺は待っているからな。いつでも妻として迎えよう!」

「魔王様!」

「か、考えておきます……」

 それから私たちは城を出て、またあの花畑に向かっていた。

「だから、もう少しゆっくり飛んでよーっ!」

★★★

「や、やっと着いた……」

 私はフラフラしながら座りこんだ。

「なんだ、だらしないな」

「私の所では、あんなスピードで飛んだりしないのよ!」

 そう言われてアオはそっぽを向いた。あ、聞かない振りだ。

「もう、すねないでよー」

「そうだ。お前の治癒魔法だが、あまり使うなよ。良からぬ事に巻きこまれるかもしれないからな」

「ねぇ、そんなに治癒魔法って珍しいの?」

「ここでは、治癒魔法は高度な魔法で使える者は少ないと聞いているな」

「そうなんだ……」

「しかも、幼いお前が使えるとなると、欲しがる者は大勢いるだろう」

 アオはふぅーっとため息をついて横になった。

「まぁ、ここにいれば気にする事はないだろう。俺もいるからな」

「アオがいてくれれば安心だね!」

「あぁ。だから、そばから離れるなよ」

 あれ、そういえばアオって見張り役って言ってたような……

 私はがっくりと肩を落とした。ときめいてがっかりである。

 すると、茂みが音を立てたので、私はちょっと驚いた。

「あぁ、お戻りになられたんですね」

 現れたのは、さっきも会ったオーガだった。

 オーガは私をちらっと見ると、首を傾げた。

「お前、どこかで会った事あるか?」

 おいおい、さっき会ったばかりだろう。私が心の中でツッコんでいると、アオが説明した。

「お前も会った人間の娘だ」

 それを言われて、オーガは私をじっと見た。その顔はどんどん驚きに変わっていく。

「あっ! あの時の小娘!」

 いや、顔でわかりなさいよ。

「人間の小娘など、さっさと追い出しましょう!」

「だめだ。この者は魔王様のお気に入りなんだ。追い出す事は許さん」

「しかし……」

「それに、この娘はここで暮らすのだ。人間というのは隠しておけよ」

「……かしこまりました」

 オーガは納得していないようだったが、私も歩み寄る。

「近づくな、人間!」

「私の事を人間って呼ばないで。私はルナだよ。よろしくね」

「ふんっ。名前などどうでもいい。人間は人間だ」

「でも、今の私はどこからどう見ても魔物だよ?」

「それもどうせまやかしだろ。俺はだまされない」

 こいつ、意外と頭かたいな。

 私がちょっとうんざりしていると、アオがオーガに話しかけた。

「一応、名前で呼ぶようにしろよ」

「はい! かしこまりました!」

 アオが睨んだ事でオーガはすぐに了承した。アオの言う事は聞くのか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ