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02 魔王に会おう

「アオ、怪我が治ってよかったね」

「あぁ、お前のおかげだ。感謝する」

 アオはぶっきらぼうにそう言った。まったく、素直じゃないんだから。

 私はくすっと笑ったが、1つ疑問が浮かんだ。

「私はどうして、ここにいるんだろう」

「なんだ、そんな事を気にしていたのか」

「だって、私の住んでいた所とはかけ離れているんだもの。混乱もするでしょ?」

「お前の住んでいた所?」

 アオは興味がわいたのか、少し体を起こして聞いてきた。

 私は交通事故にあった事、目が覚めたら森の中にいた事をアオに話した。

 アオは静かに聞いていたが、すっと目を細めた。

「なるほど。お前は別の世界から転生したらしいな。お前の力がその証拠だ」

「え、そうなの?」

「しかも、前世の記憶があるから厄介だな」

「前の記憶があると、何か問題でもあるの?」

「いや、その容姿とあっていないだろう」

「いいんじゃないの? 少し大人びている幼女って事で」

「違和感ありすぎだろ」

 アオの言葉に、私は頬を膨らませてすねてみる。それを見たアオは、にやっと笑った。

「それなら、年相応に見えるぞ」

「もーっ! からかわないでよ!」

 私はアオの体をポカポカ殴ったが、全然きいていないようだった。

「小娘の攻撃などきくものか。あくびが出るぞ」

 そう言って、アオは大きなあくびをした。

「それよりも、お前の世界の話に興味がわいた。もう少し聞かせろ」

「なんだか偉そうね。まぁ、別にいいけど……」

 それから私は、私の世界の事を話した。

「それでね、走る鉄の車や、空を飛ぶ鉄の鳥みたいなのもあるんだよ」

「ほぅ……こことはずいぶん違うな。馬車は無いのか」

「馬車は利用する所はあったかな。でも、私の住んでいた街はなかったよ」

「ふむ」

「それに、1番違うのは、ドラゴンとかがいない事だよ」

「そうなのか」

「うん。だから、ここが異世界なのはわかった気がする」

 私の世界とは別の世界。異世界。

 まぁ、ドラゴンがいる時点で、薄々わかってはいたけどね。

 すると、森の方から音が聞こえた。

「あれ? 誰か来たのかな」

 私がのんきにしていると、アオの空気が変わった。

「小娘、俺の陰に隠れていろ」

「わ、わかった」

 私は言われるがまま後ろに隠れた。

 アオは戦闘態勢に入っているようだった。しかし、出てきたのは頭に角があるオーガだった。

「よかった、ここにおられたんですね」

 オーガは安心したようで、アオも戦闘態勢をやめた。

「オーガよ、勇者どもはどうした」

「一旦退くと申しておりました」

「……そうか」

「ねぇ、勇者もこの世界にいるの?」

 私は興味がわいて、つい顔を出してしまった。オーガは、驚きのあまり声が出ていなかった。

「おい、隠れていろと言っただろ!」

「だって、気になったんだもの」

 私とアオが話していると、オーガは我に返り、私を睨みつけた。

「なぜ人間がここにいる! その方から離れろ!」

 あまりの圧に私は怯えたが、アオがオーガを睨んだ。

「待てオーガよ。この者は俺の怪我を治したんだ。それに、こいつは俺の獲物。手を出す事は許さん!」

「くっ……」

 アオの睨みがきいたのか、オーガは1歩下がった。

「そうだ。お前に会わせたい御方がいる」

「会わせたい御方?」

「あぁ。魔王様だ」

 まさかのラスボス来たー!

 私は目を輝かせ胸をおどらせていたが、アオにガシッと掴まれた。

「え?」

「ここから少し遠いからな。飛ばしていくぞ」

 すると、アオは勢いよく飛び立った。あまりの速さに私は悲鳴を上げた。

「いやあぁーっ! 速い速い! もっとゆっくり飛んで!」

「あまりしゃべっていると、舌を噛むぞ」

 そう言われて私は口を手で押さえた。

 私たちを見送ったオーガは、ぎりっと歯を食いしばっていた。

「あの人間が治しただと? 俺は絶対認めんからな……」

★★★

 アオと空を飛んでから少し経った頃、目の前にお城が見えてきた。

「わぁー! すごい、本当にお城があるんだね」

「あの御方の前でそんなにはしゃぐなよ」

「はーい……」

 またアオに怒られてしまった。学習しないとな、私。

 大きな門の前に降りたところで、鈍い音を立てて門が開いた。

「すごい、自動で開くんだね」

「魔力を感知したら開くようになっているんだ」

 中に入って見たこともない物がありすぎて、私は周りを見渡した。

 私が大人しくしてなかったので、アオは少し低い声で言った。

「……おい、少しは静かにできないのか」

「ご、ごめんなさい……」

 やはりドラゴンだから圧がすごいよ。私は大人しく従った。

 城の中をしばらく歩いていると、奥の部屋に着いた。それは1番大きな扉だった。

「でかー……」

 私がぽかんと口を開けていると、扉が音を立てて開いた。

 その奥には玉座があり、そこに足を組んで座っている人物がいた。

「魔王様、あなたに会わせたい者がいます。ほら、早く前に出るんだ」

「わ、わかってるよ!」

 私は恐る恐る前に出た。

 魔王と呼ばれたその人は、長い黒髪を上で束ねており、とても凛々しい顔立ちをしていた。

「ほぅ……ただの人間の小娘ではないか」

「ただの娘ではありません。治癒魔法を使えるのです。この者に傷を治してもらいました」

「何?! 治癒魔法だと?」

 魔王はとても驚いていた。え、そんなに珍しい事なの?

 私が首を傾げていると、魔王がこちらに近づいてきた。


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