ゆうれい
峠ですてんと私は転んだ。
木の根っこでも出ていたのだろう。
ひょいっと両目に空が映る。
青くて、明るくて、大きな空。
私はそれを見上げていた。
大きな空に見惚れていた。
覚えているのはそこまで。
気づけば皆に囲まれていた。
村中の人、皆集めたくらいに人が居る。
ふと、その中におとうが居たのを見つけた。
おとうは声を殺して泣いている。
その隣でおかあは大声をあげて泣いている。
小さな弟が二人を見てぽかんとしている。
もっと周りを見れば皆泣いている。
いつも遊ぶあの子も、いつも喧嘩するあの子も、やっぱり皆泣いていた。
私はただ転んだだけだというのに。
皆しくしくと泣き続けている。
だから、私は気をつける。
二度と転びはしないぞと気をつける。
今日も峠で独りきり。
木の根に気をつけて歩いている。
峠の上へ、下へと何度でも。
何度も何度も上へ、下へと気を付けながら。
飽きることなく歩ている。
二度と皆を泣かせるもんかと今日も一人歩いている。
もう皆を泣かせたくないから。
今日も今日とて歩いている。
峠を行ったり来たり。
今日も一人で行ったり来たり。