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純情聖騎士様に溺愛されたら聖女にされてしまいました〜精霊のいたずらで閉じ込められてしまった件〜  作者: 水野沙彰


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贈り物その4




   ◇ ◇ ◇




 王都の外壁の修復という面倒な仕事を終えた私は、馬で王城の執務室に戻ってきた。

 聖騎士の仕事は多岐に渡る。というよりも、聖騎士という名前は識別のための記号に過ぎない。

 国境の防衛のため、辺境の地で働いている者。

 瘴気を払うため、各地に出張している者。

 精霊学の講師として学園に所属している者。

 精霊について研究している者。

 裁判所で精霊と人間の仲介を行う者。

 そして私やクロードのように、王族の直属の部隊として活動している者。

 他にも様々な者がいる。

 一方、聖女は出身地の側で働いている者が多い。癒やしの力は女性特有のもののようで、どこの地域でも教会や領主が人員を欲しているためだ。

 部隊の執務室で報告書を書いていると、王城勤めの配達員が手紙を持ってやってくる。

 その中に、私宛の手紙があった。

 クラリス嬢からのその手紙には、真っ白な芳しい薔薇の花が添えられている。

 私は早速その手紙を開いて、クラリス嬢らしい丁寧な文字で書かれた文面に目を通した。そして、頬が熱くなるのを堪えきれず、眼鏡を直す振りをして顔を隠す。


「──クラリス嬢は、私を好きだということか?」


 隣の席に座っていたクロードが私の言葉を聞いて、軽く肩を叩いてくる。


「何をどう受け取ったらそんな解釈ができるんだ?」


 クロードの冷たい言葉に、私は手紙を広げて見せた。


「会いたいと言ってくれている。贈った服も着てくれると」


「ああ。お礼の手紙だな」


 クロードが当然だというように頷いた。


「これを見てくれ。純白の薔薇の花言葉は、『相思相愛』だろう……!? ああ、やっと私の想いを受け取ってくれたのか!」


「──……いや、それ、絶対クラリスは気付いてないぞ。庭で綺麗な花を見つけたから丁度良い、くらいのつもりに決まってる。あれはそういう子だ」


「それでも、私のためにこんな綺麗な薔薇を贈ってくれるとは……やはり今日も直接礼を言いに──」


「止めてくれ。父上が過労で倒れる」


 クロードの言葉に、私は肩を落とした。

 前回邸を訪ねたとき、ラブレー子爵は突然訪れた私に慌てていた。

 私なんて親が公爵なだけの人間だ。便宜上子爵を名乗ってはいるが、それだって親の持っている爵位の一つに過ぎないのに。

 とはいえ、ラブレー子爵の負担にはなりたくない。やはり好きな子の父親には良い印象を持ってもらいたいものである。


「……そうか。ならまた手紙にしよう」


「ああそうだな。そうしてくれ」


 報告書を終えた私は、早速荷物を纏めて自宅に帰ることにした。でもその前に、あの服に似合う髪飾りも探しに行こう。

 明日から辺境伯の領地を視察に行く王太子殿下に同行して遠征に行くことになっている。今日の内に見つけて、贈りたい。

 私は街に出て、宝飾品店を回ってみることにした。




   ◇ ◇ ◇




「──これ何!?」


「髪飾りですね」


 困惑のあまり悲鳴のような声を上げた私に、ソフィが苦笑する。


「そんなの分かってるわよ……」


 脱力した私の手には、一昨日書いた手紙の返事がある。

 テーブルの上には、木でできた小箱。中にはクッションが敷かれていて、その上に銀の髪飾りが乗せられている。

 鈴蘭の花を模したその髪飾りには、綺麗な真珠が五粒、花の代わりにはめ込まれていた。



 ──愛しいクラリス嬢

 花をありがとう。

 次に会える日を私も楽しみに思っている。

 そのときにはこの髪飾りを合わせてほしい。

 明日から遠征があるので、帰ってきたらまた共に出かけてくれ。

 離れがたいが、早く帰ってこられるよう善処する。

              シリル・ヴァイカート



 もう夜だ。

 明日から遠征というのならば、手紙の返事も今出したら迷惑だろう。

 私はお礼も言えないまま、手元にある髪飾りを見つめた。


「こんなに高価なもの……」


「殿方はこういうものを女性に贈りたいものだと聞きますよ」


「そういうものなの!?」


「はい、旦那様もそうですよね」


 考えてみれば、お父様もお母様に何かにつけて贈り物をしているような気がする。それはこんなに高価なものではないが、お母様はいつも嬉しそうに受け取って大切そうに使っていた。

 ならば、貰うのが正解だ。


「……大切に使わせてもらいましょう」


「それが良いと思います」


 ソフィは早速私から髪飾りの箱を受け取って、楽しそうに鏡台の抽斗にしまった。

 きっと私の髪飾りが増えたことが嬉しいのだろう。あのデザインならば、普段だけでなく、社交の場で付けてもおかしくなさそうだ。


「お嬢様は、まだシリル様のお気持ちを疑っているんですか?」


 ソフィの唐突な質問に、私は苦笑する


「ううん、疑ってなんていないわ」


 それどころか、あの日のデートを繰り返し思い出す度に胸が熱くなる。

 これが恋愛ではなくて何だというのだ。

 だから、こんな贈り物なんて貰わなくても、私の気持ちは決まっている。


「それではどうして、」


 ソフィが聞く。

 私は誰にも話したことがなかった胸の内を明かすため、口を開いた。

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