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八十六話 『波乱の予感』

笑う剣聖と氷炎の魔術師視点です。

 宮殿の屋根へと降り立つ。

 俺らは便利な魔法みたいのがあらへんから、ちょっと痛いわ。


 今のところは魔獣の大群なんて見えへんけどホンマに来るんかな?



「ロキー? 奴ら来るんかなー?」

「そんな心配してても仕方ない。ただ、最大限の警戒をするだけだ」

「中の人らは逃げたん?」   



 正直全開戦闘すんねんやったら邪魔やねんな。宮殿の中に避難してる人ら守りながらいかにも強そうな龍神なんかと戦いとうないわ。


 女王様なんかいたら最悪やしな。緊張で剣も持たれへん。



「ギルド長の手筈通りだ。無事に全員逃げている」

「なら安心やな」

「ああ」



 冷たい風が頬を撫でる。

 うん、ゾクゾクしてきたわ。剣聖なっても強者との戦いは楽しみやな。


 この絶対負けられへん、って緊張も最高や。戦闘狂ってわけやないけど。



「さっきギルド長に何話されてたんだ」

「うん? まあ切り札を切れ、って話や。何のこっちゃよう分からんけど」



 俺の切り札『魔刀 草薙』、驚異的な身体能力を得んねんけど時間制限がある。気軽には使えへん。



「頭の片隅には置いてるのか」

「そらそや、ギルド長直々の忠告やからな」



 他んとこは大丈夫かなー?

 女神は大丈夫やろうけど、怠惰と童子んとこはなー。魔の支配者っつー、裏切り者が相手やからな。 


 ラルフのとこは大丈夫なんかな? 俺らと同じ側近相手らしいねんけど。死なんといいな。


 そういや、道化の人形……。


 しゃあない、正直日が浅いからあんまし思い入れもないわ。



「来たぞ」

「お、やっとか?」



 腰を上げる。無意識に剣の柄に手がかかる。


 少し遅れてギルドの警鐘が鳴り響く。

 戦闘開始や!






 ワラっと街の外から魔獣が入り込むのが見える。


 うわー、キモい量。あんなん相手にはしとうないなぁ。 



「来るでー」

「敵が本当に龍神なら多数の龍を連れてくるかもしれん。気を付けろよ」

「おう!」



 ロキの予想通り、英都の遠く上空から来てんなあ。


 激烈に危険そうな奴はいないけど……、こいつらとドタバタしてるうちに来たら厄介やな。



「速攻で片付けんで」

「無論」



 ぐんぐん近づいてくる。


 突然、強烈な魔力反応。ブレスか!



 街がドラゴンブレスで破壊の嵐に巻き込まれる。

 轟音を立てて家が崩れ、残骸は炎で焼き尽くされる。


 ……もどかしいわ。もうちょい近ないとブレスを無効化できひん。



「待て、もう少し我慢だ」

「もちろん。人を獣みたいに言わんといてや」



 範囲内まで、もう少し……。 


 ふと周りを見渡してると、一組の親子が目に入る。街の大通りを必死にちっちゃい子連れて走ってる、



「ロキ、あの親子……」

「危険そうだな」



 そうや、今は正直人一人の命より遥かに重い任務中。あかん、警戒緩めんな。


 だが、現実は無慈悲だ。ある龍の双眼が親子を見つめた。



「ロキ!」

「ここは一旦任せろ! お前は前に出て前線の龍を蹴散らせ!」

「了解!」



 遠回しな許可が出た。


 別に全部の命を救えるってわけやないけど。

 人が死ぬんは俺の見えんとこでやってや。



「俺の前で死ぬなよ」



 夢見が悪いからなぁ!



 あの子らとの距離はあと100メートルきってる!

 ゾクっとするほどの魔力反応が空でする。

 間に合うわ!



 目が潰れるほどの光が視界を覆い尽くす。


 なるほど、間近で初めて受けたけど、こら多分ヤバい威力やな。


 やけど、俺には通じひん。



「はい残念」



 大量の熱量を伴った魔法攻撃が、一瞬で俺の前で掻き消える。まるで何もなかったかのように。



「無事か? お母さん」

「あ、ありがとうございます……」



 腰が抜けて立てなさそうな女性の手を取り立たせる。腕の中に抱かれてた嬢ちゃんは全くの無傷やな。



「嬢ちゃん、ママのこと連れて安全なとこいっとき」

「OK」



 とりまこの二人は逃がした。

 こちらを爛々とした目で見つめている龍を不敵に睨み返す。

 久し振りの強者との戦い……楽しませてもらおか。



 チラッと後ろを見、ロキとアイコンタクト。よし、龍神はまだ来てないみたいやな。なら問題なしや。

 英都中に響き渡るかと思うほどの咆哮が目の前の龍から発される。ビリビリと空気を震わせ威嚇してくる。その咆哮に周りの龍たちも集まってくる。


 剣の柄に手をかけ、臨戦態勢へとなる。



「龍ども、俺は飛べねぇからさ、地上から一方的に攻撃させてもらうぜ」


「白刃・疾風」



 剣は誰も反応できない速さで抜き去られ、神速の真空波を伴って龍へと襲い掛かる。

 僅か数秒。俺が三回剣を振る間に三体の龍の頸が無様に落ちた。



「逃げても変わらん。俺の疾風は、射程って概念、ないで!」



 超ロングレンジの真空波、逃げようとした賢い龍から一掃されていく。英都の中心部におびただしい量の龍の血が降り注ぐ。


 ブレスは完全に無効化できる、して逃げても俺に殺されるって分かったら……せやね。向かってくるわな。



 四方八方から一斉に俺へと殺到してくる。しかも連携も取れてる。流石、って感じやな。



「白刃・雪崩」



 まずは右から来る奴を即切り捨てる。即座に空いたスペースへと入り次の攻撃の準備をする。



「白刃・吹雪」



 俺が踏み込んで隣の龍の死角に入る。相手の龍が振り向くより速く、俺が持つ技の中で最速の突き技を横腹に放つ。穴だらけになった腹を軽く切り捨てる。


 流れるように剣を上に放り投げる。


 本当は草薙を起こさないとできない技やけど、今は登るもの()があるから再現できる。

 龍の体を駆け上がり、さらに上の龍に飛び移り、最後に思い切り飛ぶ。上空で投げた剣を掴み、眼下の龍へと照準を合わせる。



「白刃・雷」



 重力に従い、俺の体は真っ逆さまに落ちていく。その衝撃を利用して、最下にいた龍の脳天へと剣を叩きこむ。



「仕上げやっ。白刃・竜巻!」



 全方向に大量の竜巻型の刃を繰り出す。俺に近づいてきたやつは全員細切れや。





 周囲の龍を掃討し、辺りが血の海になったころ、足元から氷が生える。ロキの、帰ってこいって合図やな。戻るか。

 最後に剣を一振りして血を落とすと、全速力でロキの所へと戻る。



 ★ ★ ★



「ロキ、もう来る?」

「いや、空を飛んでる龍の動きが若干妙だったからな。一応だ」

「どんな風に?」

「さっきから、急に積極的に街を壊し始めたような気がする。気のせいかもしれんが」

「了解や」



 目の前で街が破壊されてんのに手ぇ出されへんのはキツイなぁ。守れる力があるだけに心にくるわ。

 さっきまで俺が戦ってた方の街を見ていてそう思う。



「アナスタシア」

「なんや」



 突然、俺とは反対を見ていたロキから鋭い声が飛ぶ。何となく俺の返す声もキツくなった。少し声が震えてるのがマジっぽいな。



「来た」

「了解」

龍と竜は違います。竜は多くの種類がありますが、龍は一種類しかおらず、どちらもS級の魔獣に指定されていますが龍の方が強いです。龍相手に無双できる剣聖は化け物です。

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