六十八話 『始まった特訓 後編』
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魔の支配者さんから放たれた玉かラ、魔獣が具現化すル。
大体はB級ですガ……数体に一体ぐらいでA級もいますネ。実に厄介でス。
キング、相手できますかネ?
『無論だ。しかしこれは貴様の特訓でもあるが故に、我に頼りすぎるなよ。あくまで二人で一人だ』
Of couece。一応後方の警戒をお願いしまス。
『了解だ。第一波の到達まですぐだ。気を引き締めろ。あと我は戦闘の指示も出す。従え』
時と場合によりますガ。OK、行きますヨ。
目の前にいるのは大量の黒狼……実に趣味が悪イ。あのときを思い出しますネ。
『我と貴様の出会いのときでもあったがな』
キングが茶化すように言ってくル。冗談じゃない状況だったんですがネ?
まあいいでス。戦闘開始でス。
黒狼化した爪を思いっきり黒狼に突き立てル。
右二体――左に一体――
左の黒狼を一瞬で仕留めた後、すぐさま右へと方向転換――しようとしタ。しかし殺した瞬間、黒狼が塵に変わル。
Oh、マジですカ。
「これらの魔獣はぁー、私の魔法だからねぇーえ。回収してしまうよぉーお」
想定でしたガ、仕方ありませン。
振り返りざまに迫っていた黒狼へと肘鉄を食らわス。怯んだ隙に爪で穿ツ。少し遅れてやってきた黒狼モ、爪を躱して軽く殺ル。
まだ山のようにいる黒狼たちも殺ってしまおうと足を進めた瞬間――キングから警告ガ。
『避けろ!』
私の意思関係なく体が動ク。強引に後ろに逸らされ痛むが気にしていられなイ。
何でしょウ、この顔の前を掠った物体ハ。
『後方からウィザースケルトンだ! 我は回避に専念するぞ!』
「なんト、了解でス。先にそっちを倒しましょうカ?」
『倒せるのか?』
「やってみますヨ」
標的をウィザースケルトンに変更。他にA級はいますカ?
『前方にサイクロプス。あとは低級のリッチーや大鬼とかだな』
「了解しましタ。まずは一番危険そうなウィザースケルトンからでス」
身体強化を掛けル。それと同時に数言の詠唱――食らエ、私の最大威力魔法。
「『エクスプロージョン』ッッ!」
狙い通り戦場に大爆発が生じル。もちろん中心は奴でス。But、これしきで死ぬはずありませんよネ。
奴に向かって全力で駆けル。
キリ、という独特の音だけに集中すル――
『来るぞ!』
「えエ! 『スティール』ッ!」
突然の盗賊スキルで弓に掛けられた矢を奪ウ。もちろん矢は不発! 貰いましタ!
しかし念には念を入れテ。炎弾を放ち視界を遮ル。それと同時に後ろに回り込ミ――確実ニ、仕留めまス。
ウィザースケルトンの首を斬り飛ばス。鋭利な爪は易々と骨を切リ、頭だけが飛んでいク。
勝っタ――
『逃げろッッ!』
狂気じみたキングの叫ビ。少しの喜びに身を任せていた私を戦場に引き戻ス。
キングと私の意思が重なリ、筋肉を壊すほどの速度でその場から脱出すル。
次の瞬間、その場所は消滅しタ。
離れてもなおビリビリと感じる危険。本能が警鐘を鳴らしていル。何が起こったんですカ?
『腐竜だと! 危険すぎるだろう!』
圧倒的な気配。この戦場のA級すら雑魚に感じル。純然たるS級魔獣がそこにいタ。
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「じゃあいよいよ作っていこうか」
「はい」
手順としては、魔鉱石に爆発の魔法を付与して、それを弾を入れる筒の部分に入れ込む。
ただ完全に新しい物だから筒も自分たちで作らなきゃいけないし……先は長い。
「何枚魔鉱石を並べようか」
「四枚ぐらいで十分だとは思いますが」
「じゃあ二枚二枚で手分けしてやってこうか」
魔鉱石への付与の手順は簡単だ。
魔鉱石の表面に魔力を込めながら魔法陣を描く。ただ魔鉱石も固いから馬鹿みたいに集中した地道な作業だけど。
丁寧に魔法陣を描いていく。
人間が魔法を発動するときは詠唱だけど、その詠唱を図面化したものが魔法陣らしい。魔鉱石を使うのは魔力伝導率がいいからだとか……。
と、俺の方は出来た。
「できた?」
「はい、次は形作りですね」
この魔導具に必要なのは、弾の出口、弾を込める部分、魔鉱石を入れる部分、あとは引き金と持ち手か。
「流石に一発ずつ入れ替えるのは面倒ね」
「重さを考えたら六発一セットぐらいが妥当ですかね」
この意見から、弾六発が打つごとに回転して充填される仕組みを作る。
あとはこれらを筒に入れ込むだけだ。
一週間の試行錯誤の末、ようやくその魔導具は完成した。
「……完成だわ!」
「ようやくですね!」
「早速試しましょう!」
城の中からちょっと広い中庭へと出る。リザさんが的を用意してくれた。
大体十メートルってとこか。
「リザさんは後ろにいてくださいね」
「了解!」
的を正面にして構える。魔導具を片手で持ち、引き金に指を掛ける。
頼む、成功してくれよ!
引き金を引く。
少量の魔力が吸い出される感覚。同時に魔導具を持っていた右手に凄まじい衝撃が来る。
あ? 手首の骨が砕けた……? どんな威力だよ。
「ッッ! 痛った!」
「究極の回復」
痛みは急速に引いていく。
あの衝撃は要改善……いや、威力が無くなったら困るから手首を守る魔導具でも作るか。
「リザさん、弾見えましたか?」
「いえ……速すぎね。全く見えなかったわ。どこに飛んで行ったのかしら」
方向から察するにあっちの城壁かな。
歩いて見に行ってみると、壁に小さな、ただ深い穴が開いていた。
「これ……この弾が壁を抉り進んでいたってことよね」
「そうですね。……破格の威力です」
そこでリザさんと目を合わせる。この思いは残念じゃない。
「「成功だ!」」
「名前は何にしましょう」
「そうですね……『ガンナー』とかどうでしょう」
「いいわね」
ここに、『ガンナー』という超絶魔導具が誕生した。




