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六十八話 『始まった特訓 後編』

 ★ ★ ★



 魔の支配者さんから放たれた玉かラ、魔獣が具現化すル。


 大体はB級ですガ……数体に一体ぐらいでA級もいますネ。実に厄介でス。

 キング、相手できますかネ?



『無論だ。しかしこれは貴様の特訓でもあるが故に、我に頼りすぎるなよ。あくまで二人で一人だ』



 Of couece。一応後方の警戒をお願いしまス。



『了解だ。第一波の到達まですぐだ。気を引き締めろ。あと我は戦闘の指示も出す。従え』



 時と場合によりますガ。OK、行きますヨ。



 目の前にいるのは大量の黒狼……実に趣味が悪イ。あのときを思い出しますネ。



『我と貴様の出会いのときでもあったがな』



 キングが茶化すように言ってくル。冗談じゃない状況だったんですがネ?

 まあいいでス。戦闘開始でス。



 黒狼化した爪を思いっきり黒狼に突き立てル。

 右二体――左に一体――


 左の黒狼を一瞬で仕留めた後、すぐさま右へと方向転換――しようとしタ。しかし殺した瞬間、黒狼が塵に変わル。


 Oh、マジですカ。



「これらの魔獣はぁー、私の魔法だからねぇーえ。回収してしまうよぉーお」



 想定でしたガ、仕方ありませン。

 振り返りざまに迫っていた黒狼へと肘鉄を食らわス。怯んだ隙に爪で穿ツ。少し遅れてやってきた黒狼モ、爪を躱して軽く殺ル。


 まだ山のようにいる黒狼たちも殺ってしまおうと足を進めた瞬間――キングから警告ガ。



『避けろ!』



 私の意思関係なく体が動ク。強引に後ろに逸らされ痛むが気にしていられなイ。

 何でしょウ、この顔の前を掠った物体ハ。



『後方からウィザースケルトンだ! 我は回避に専念するぞ!』

「なんト、了解でス。先にそっちを倒しましょうカ?」

『倒せるのか?』

「やってみますヨ」



 標的をウィザースケルトンに変更。他にA級はいますカ?



『前方にサイクロプス。あとは低級のリッチーや大鬼(オーガ)とかだな』

「了解しましタ。まずは一番危険そうなウィザースケルトンからでス」



 身体強化を掛けル。それと同時に数言の詠唱――食らエ、私の最大威力魔法。



「『エクスプロージョン』ッッ!」



 狙い通り戦場に大爆発が生じル。もちろん中心は奴でス。But、これしきで死ぬはずありませんよネ。

 奴に向かって全力で駆けル。


 キリ、という独特の音だけに集中すル――



『来るぞ!』

「えエ! 『スティール』ッ!」



 突然の盗賊スキルで弓に掛けられた矢を奪ウ。もちろん矢は不発! 貰いましタ!


 しかし念には念を入れテ。炎弾を放ち視界を遮ル。それと同時に後ろに回り込ミ――確実ニ、仕留めまス。



 ウィザースケルトンの首を斬り飛ばス。鋭利な爪は易々と骨を切リ、頭だけが飛んでいク。


 勝っタ――



『逃げろッッ!』



 狂気じみたキングの叫ビ。少しの喜びに身を任せていた私を戦場に引き戻ス。


 キングと私の意思が重なリ、筋肉を壊すほどの速度でその場から脱出すル。



 次の瞬間、その場所は消滅しタ。

 離れてもなおビリビリと感じる危険。本能が警鐘を鳴らしていル。何が起こったんですカ?



腐竜(ドラゴンゾンビ)だと! 危険すぎるだろう!』



 圧倒的な気配。この戦場のA級すら雑魚に感じル。純然たるS級魔獣がそこにいタ。



 ★ ★ ★



「じゃあいよいよ作っていこうか」

「はい」



 手順としては、魔鉱石に爆発の魔法を付与して、それを弾を入れる筒の部分に入れ込む。

 ただ完全に新しい物だから筒も自分たちで作らなきゃいけないし……先は長い。



「何枚魔鉱石を並べようか」

「四枚ぐらいで十分だとは思いますが」

「じゃあ二枚二枚で手分けしてやってこうか」



 魔鉱石への付与の手順は簡単だ。

 魔鉱石の表面に魔力を込めながら魔法陣を描く。ただ魔鉱石も固いから馬鹿みたいに集中した地道な作業だけど。


 丁寧に魔法陣を描いていく。

 人間が魔法を発動するときは詠唱だけど、その詠唱を図面化したものが魔法陣らしい。魔鉱石を使うのは魔力伝導率がいいからだとか……。


 と、俺の方は出来た。



「できた?」

「はい、次は形作りですね」



 この魔導具に必要なのは、弾の出口、弾を込める部分、魔鉱石を入れる部分、あとは引き金と持ち手か。



「流石に一発ずつ入れ替えるのは面倒ね」

「重さを考えたら六発一セットぐらいが妥当ですかね」



 この意見から、弾六発が打つごとに回転して充填される仕組みを作る。

 あとはこれらを筒に入れ込むだけだ。





 一週間の試行錯誤の末、ようやくその魔導具は完成した。



「……完成だわ!」

「ようやくですね!」

「早速試しましょう!」



 城の中からちょっと広い中庭へと出る。リザさんが的を用意してくれた。

 大体十メートルってとこか。



「リザさんは後ろにいてくださいね」

「了解!」



 的を正面にして構える。魔導具を片手で持ち、引き金に指を掛ける。

 頼む、成功してくれよ!


 引き金を引く。


 少量の魔力が吸い出される感覚。同時に魔導具を持っていた右手に凄まじい衝撃が来る。


 あ? 手首の骨が砕けた……? どんな威力だよ。



「ッッ! 痛った!」

究極の回復(アルティメットヒール)



 痛みは急速に引いていく。

 あの衝撃は要改善……いや、威力が無くなったら困るから手首を守る魔導具でも作るか。



「リザさん、弾見えましたか?」

「いえ……速すぎね。全く見えなかったわ。どこに飛んで行ったのかしら」



 方向から察するにあっちの城壁かな。


 歩いて見に行ってみると、壁に小さな、ただ深い穴が開いていた。



「これ……この弾が壁を抉り進んでいたってことよね」

「そうですね。……破格の威力です」



 そこでリザさんと目を合わせる。この思いは残念じゃない。



「「成功だ!」」



「名前は何にしましょう」

「そうですね……『ガンナー』とかどうでしょう」

「いいわね」



 ここに、『ガンナー』という超絶魔導具が誕生した。

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