六十六話 『特訓の見通し 後編』
影踏み童子さんに連れてこられたのは郊外の草原でス。ここで何をするんでしょうカ。
「あノ――」
「君はぁー、近接戦闘のスキルを上げたいんだろぉーお?」
ぶるっと寒気が走っタ。
何でしょウ、この気色悪い話し方ハ。全然怠惰な王さんの話し方の方がマシでス!
「Yes」
内心の吐き気をおくびにも出さずに答えル。
この人と特訓するんですカ……正直最悪でス。速く終わらせたいですネ。
「内容はどうするつもりだ、支配者」
「そうだぁーあね。まあ私の魔法で訓練でもさせようかぁーあね」
「そうだな」
青年風の男、道化の人形は温厚そうですネ。こっちは大丈夫ですガ……。
「俺との訓練も入れた方がいいんじゃないか?」
「そうだぁーあね」
道化の人形さんがこっちに振り向ク。
訓練内容を教えてくれるそうでス。
曰ク、あの魔の支配者という方の魔法で魔獣を呼び出シ、延々それらと戦うそうでス。
この優しそうな人がそのアドバイスト、対人訓練をしてくれるそうでス。
まあ正直アドバイスはキングがいるから不要なんですけどネ。
でハ、早速やりましょうカ。
「じゃあ、行くよぉーお」
魔の支配者さんが掌を上に向けるト、無数の小さな玉が浮かブ。一つ一つからかなりのenergyを感じますネ。
その玉をこちらに撒くように投げてくル。
魔の支配者さんの手を離れた瞬間、無数の魔獣が顕現すル。
私の視界いっぱいの魔獣……。
キング、やれますかネ?
『やるしかないであろう、我を呼び出せ。黒狼の王が直々に相手しよう』
あなたはアドバイスだけで十分ですよっト!
「『黒縛憑依』!」
無数の魔獣を前ニ、こちらも黒狼の王を顕現させる。
さあ、進化のときでス!
★ ★ ★
俺はリザさんに連れられ、城の中を階段を下りている。
多分、魔導具製作だからリザさんの工房にでも向かってるのかな。
そういえば俺だけ一対一なんだよな。紅桜さんがいないから。まあ十分だけど。
「着いたよ」
着いたのはもう何階降りたのか分からない程の地下にある扉の前。この城の最下層なんじゃないか?
リザさんが開けてくれた扉を通ると……魔導具製作者にとって夢のような空間が広がっていた。
「すごい……」
「ふふっ、でしょー。私自慢の工房だからね」
地下の黴臭さとは無縁の工房。
壁いっぱいに広がる本棚、棚いっぱいにある魔鉱石。所狭しと置かれている実験器具や加工器具、すでに魔法付与済みの魔鉱石が机を埋め尽くすように広がっている。
それに! 部屋の中で何台あるか分からない程稼働している魔導具の数々!
人型の魔導具が器具を運んでるだけじゃない。本棚から本が落ちないようにするとか、部屋の機能全てに魔導具が使われている。
世界全部を探してもここまで素晴らしい工房は無いんじゃないだろうか。
「ここでは一切の魔法が使われてないのよ。もちろん人の力もね。全ての動力を魔導具が担ってる」
「最高の環境ですね」
そんなことを言い合いながら手前にあった椅子に座る。目の前にリザさんが来て、遂に話し合いだ。最強の魔導具を作るぞ。
「で、君はどんな魔導具を作りたいの? 構想位は出来てるでしょ?」
「はい。……なんか書くものとかあります?」
「ああ、今出すわね。『ボードを出して』」
その言葉と同時に、天井から白い板が下りてくる。
凄いな、言葉に反応して動作するのか。しかも……音の発生位置に合わせて降りてくるのか。最先端、いや未来の技術が詰まってるな。
「これで、どうやって書くんですか?」
「ああ、普通に指で外形とかを書いてくれれば」
白い板の上で指をなぞると、その通りに線が形成された。なるほど、書きやすいな。
俺の考えていた魔導具の機能と形を書いていく。
「こう、近接はラルフやアーロン、アリスができるので、中距離から遠距離の攻撃をサポートしたいと思いまして。なんかこう……弾が出てくるみたいな」
筒の中に弾を込め、それを合図とともに魔導具の力で押し出す。
これだと物理ダメージだから魔法が使えないところでも機能できるし、弾を小さくすれば一点に力が集中するから威力が高くなる。
弾を押し出す力を上げれば遠くの物にも攻撃できる、といったことを説明した。
「なるほどね! 面白いわね! 剣や拳とはまた違う攻撃方法ね!」
「ですよね。しかも前例がないので知能のある者でも対処しにくいと思います。弾を高速で打ち出せば小さくて速いので見にくいですし」
だが、以前から温めていたこの発想だが、どうしても再現が難しい。
何故なら押し出しても威力がほとんどないのだ。
「あのさ、押し出すんじゃなくて、シン君が持ってる爆弾みたいに、爆破で打ち出したら?」
「ただ爆破って全方向なので力が伝わりにくくないですか?」
「指向性を持たせることってできない?」
……そういえば俺持ってるわ。その爆弾。
「確かに! それができるので指向性爆破で弾を打ち出せばいけますかね!」
「その魔法を付与した薄い魔鉱石を筒の中に何枚も重ねましょう」
そうすれば爆発が連続で起こってさらに威力が増す! いいな!
「あとは合図ですね」
「筒を持って、『撃て』とかって叫べば?」
「それじゃ奇襲のときとかに使えなくないですか?」
奇襲に使えるのも魅力の一つだ。回避しにくいからな。
「無難にボタンかしらね」
「それじゃ暴発が怖いですね。……引き金はどうでしょう、これだと暴発はしにくいのでは?」
「それに安全装置を付ければ完璧じゃないかしら」
「その方向で作りましょう!」
俺たちはそのとき知らなかった。
これが、剣も、魔法も、格闘術も、全てをねじ伏せられる最強兵器になっていくということを。
時代が、この魔導具一色になっていくということを。




