表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/102

三十三話 『ダブルス』

「『黒縛憑依』!」



 その言葉と共ニ、キングが私に憑依すル。



 全部獣化したらただのB級、奴には敵わなイ。

 でモ、混ぜたラ、二人なラ!



 両手両足に黒い毛と鋭い爪、尻尾まで生えル。

 筋肉量が増大シ、手と足は黒狼ですネ。



『避けよ』



 鞘が振り下ろされる瞬間バックステップ。

 今までとは比較にならないスピードで回避すル。



「怪我、治ってますネ」

『半分我の体だからな』

「残り二十人――」

『雑魚から仕留めるぞ』



 視界が共有されまス。酔いそうでス。



『最後尾からだ』

「OK」



 身体強化の魔法だけかけル。こっからハ……近接戦闘でス。



 ★ ★ ★



 五感が鋭敏になったようでス。視界も広がりましタ。

 後ろからの風切り音――



『右だ』

「えエ」



 指示通り右に回避。隣を凶刃が通過すル。



『前へ』



 ボスを無視して雑魚どもに突貫すル。

 ちょっとの怪我は許してくださイ。



『右に二人、左に三人』

「後ろの警戒お願いしまス」



 まずは右からでス。



 一人目のナイフを躱シ、そのまま奥ヘ。

 咄嗟で固まってる奴を側頭部への回し蹴りで落とス。



『後ろだ』

「了解」



 抜いた一人目のナイフをもう一度しゃがんで回避。

 一瞬の躊躇――



『たわけ』

「分かってまス」



 覚悟は決めましタ。



 鋭い爪デ、ナイフを持つ手を切り落とス。



「あ?」



 ゆっくりと手首が落下する。

 一瞬遅れて断面から血が噴水のように噴き出す。



「ぎゃあああ!」

「すみませんネ」



 まだでス。

 右を終えたので左の三人。



「後ろハ?」

『あと数秒で到着だ」



 数秒で片付ければいいんですネ?



 正面突破でス。



「うげっ!」



 一人目の顔を鷲掴みにシ、力の限り二人目に投げつけル。



「は、はぁ……」

「すみませんッ!」



 勢いのまま跳び膝蹴リ。

 顎を直撃シ、意識を奪ウ。



『後ろ五人だ』

「了解」



 数秒たちましたカ。



「後ろどのくらイ?」

『一歩強だ』

「了解でス」



 後ろ向きのまま踏み込ミ、後ろ手で肘打チ。

 キングの指示通りクリーンヒットでス。



「このっ!」

「化け物がっ!」



『左と右に分かれたぞ。二人ずつだ』

「えエ」



 反転。

 倒した者を盾にして右からの攻撃を防グ。

 盾として機能する数瞬で左をやりますカ。



「右見といテ」

『承知した』



 蜘蛛のように低い姿勢で横薙ぎに振られるナイフを回避。

 振り切ったところで下からのアッパーカット。



 一人目を奥に投げつケ、左完了。



『来るぞ』



 右から二人……。



『危ない!』



 体が勝手に動キ、横からの矢を回避。

 キングが避けてくれましたカ。



「射手を落としたいですネ」

『こっちを速めに頼む』



 攻撃を避けながら二人の間を通過すル。

 通るとき腕を振るったのデ、一瞬遅れて血しぶきが上がりまス。



「殺してませんよネ?」

『……恐らく』



 射手を片付けに走ル。

 真正面から矢が飛んで来まス。



『左だ!』

「上ですネ」



 キングを無視しテ、空中に躍り出ル。



「格好の的だぜ!」



『この馬鹿!』

「いいんですヨ」



「『空力』」



 空中を足場にシ、斜め横に飛ブ。物理法則無視の魔法。



『これは……』

「Yes、黒狼の固有魔法でス」



 単純ですガ、初見での意外性は半端じゃないはずでス。



「その弓、貰いまス!」



 射手の近くに着地、弓と腕を切り裂いていク。



「ひっ!」

「危ねぇぞ!」

「魔法は使うな!」



 全員こっちを向きますガ、仲間が邪魔で魔法打てませんよネ?



 敵の隙間を搔い潜りながら腕ヲ、足を乱雑に切り裂ク。



 密集してるので楽勝ですネ。



 残像すら残さないスピードデ、九人、奴以外をものの数秒で殲滅しタ。



 ★ ★ ★



「おおぉ……!」



 拍手……? 倒れてるの仲間ですよネ?



「いいな、お前。一瞬で壊滅させるとは」

「この人たちは仲間でしょウ」

「少し、語弊がある――」



 血だまりヲ、頭や腕を踏みつけに進撃してくル。



「――道具だ」

「……あなた人間ですカ?」



「お前もただの玩具かと思っていたのを謝ろう」

No thank(結構です) you」



 謝罪とかいらないんで帰ってもらえませン? 疲れてるんですヨ。



「冒険者時代のような血沸き肉躍る興奮だ!」

「冒険者……だったんですカ」

「ああ、身体強化の魔法だったからな。勝ち組だ」



 なんで道を踏み外したんでしょウ。

 身体強化とカ、本当に勝ち組なのニ。



「俺たちは盗賊に襲われたんだよ」

「そこ恨むところじゃありませン?」

「俺たちはA級だったんだ――」



 普通に凄腕じゃないですカ。



「なのに負けた」

「だからそこ復讐を誓う場面じゃないですカ?」

「A級に勝つ盗賊! 光が見えたんだ!」



 ああ、もう狂人ですネ。更生は無理そうでス。



「あなたを全力で叩き潰しますヨ」

「おう! 来い!」



 獰猛な笑ミ……。戦うの楽しみなんでしょうカ。

 少々罪悪感ですネ。



「やってくださイ、()()()

「ん」

「なっ!」

「気絶用魔導具、『スタンガン』!」



 隠密で後ろから近付いてきたシン君。

 時間稼ぎ成功ですネ。



 首筋に電気を流す魔導具が刺さル。

 一瞬痙攣、地面に倒れこみましタ!



「やったか」

「やったでしょウ!」



 手を取り合った瞬間――



『まだだ!』



「フラグって知ってるか?」



 ナ!? 

 抜かれた真剣、全力回避!



「つゥ!」

「なっ!」



 受け身を取リ、戦闘態勢。

 なんでダメージが入ってないんですカ!?



「ああ、驚いたぜ」

「……魔導具か」

「ご名答」



 手の中から落ちるのは割れたペンダント。



「『エクスチェンジ』、身代わりの魔導具だ」

「……奇襲、失敗ですカ」

「正面戦闘、だね」

「やってくれたな! 殺してやるよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ