二十八話 『不可視なる三刀流』
「まずはアーロンの回収や!」
幸い重力でサイクロプスとの距離は離れてる。今がチャンスや!
「私が回収ヲ!」
「俺らは戦闘準備や!」
「サイクロプス、A級。魔法は金剛」
「弱点ないんか?」
「一つ目が」
「了解や!」
防御有り、攻撃も食らったらやばい、単純、故に強いわ。
「ラルフ、作戦は?」
「アーロンが落ちたのは痛いなぁ」
「私アーロンを回復しまス!」
「頼むわ」
っと残るは俺とシンか。やったら――
「シンはあれの準備や」
「ん、時間かかるよ」
「俺が稼ぐわ」
「私も終わったら援護しまス」
俺の役目は一秒でも長く時間を稼ぐこと。
難易度鬼。
いってみよう。
「ウオオオオオッ!」
サイクロプスの咆哮が響き渡った。
★ ★ ★
「いくで!」
腰の大剣を抜き放つ。まずはその眼に――
「ぶっ刺したるわ!」
剣を突き刺そうとする。が――
「チッ!」
大剣を掴むやと?! やばい、投げられる!
「ラルフ!」
「大丈夫、やっと!」
剣ごと投げられそうになる。
しかし、直前で剣を放し、離脱する。
剣は猛スピードで壁に突き刺さる。あっぶな。
「ラルフ、前だ!」
「あかんって!」
棍棒が目の前を通過する。反射的に避けてへんかったら死んでたわ。
魔剣はあるが最終手段や。まだ使えへん。
やばいなぁ。せめて剣が――
「ラ、ルフ……」
「アーロン?!」
突き刺さった剣が抜け、俺の方に飛んでくる。
ナイスや、アーロン!
瞬間、棍棒が目の前に迫る。
剣を当て、バックステップ。威力を殺す。
「ギリギリセーフやな」
もう片方の手で殴ってくる。危な。
髪を揺らすほどギリギリやな。こいつ速い。
「でかい隙やな」
両手を振り切り、致命の隙。逃すか!
大きく踏み込み、眼を狙う。届くっ――
「棍棒はどこや?」
殺気が迸る。何かやばい、避けられへん。
「ラルフ……!」
「アーロン、まだでス!」
強烈に横の重力。アーロンやな。
「クフッ」
地面に叩きつけられる。しかし、顔を上げると同時に衝撃が。
俺の居たところに棍棒が落下している。俺が避けた瞬間投げたんか? どんな先読みや。
「マジサンキュや!」
全く、油断も隙もあらへん。本気のA級やな。
ダッシュで戻る。手には短剣。
「近接があかんのやったら――」
短剣を投擲、もちろん光速や。
「遠距離や!」
一つ目に突き刺さる。ビンゴやな。
震えるほどの殺気を向けられるが、これなら――
「ラルフ、逃げテ!」
あ? なんでや? まだ距離あるやろ。
「アーロン!」
「任され、た!」
またもや左にぶっ飛ばされる。
しかし、右の頬が熱い。なんや?
「あれ? もしかしてやばいん?」
べっとりと血が付く。掠っただけやろ?
後ろにはあの棍棒が。あれ投げたん?
「『予見』がなかったらやばいですネ」
「強敵だぞ……」
「まだ時間欲しい」
「アリス、あとどんぐらい?」
「アーロン君はあと少しで終わりまス」
「シンは?」
「あと数分でいい」
あと少し、あと数分やな? やったら出し惜しみなしや。このままやと防戦一方やし。
「使うで、魔剣『インビジブル』!」
初使用、どんな効果があるかも分からへん。
やけど! 使う価値はある!
「出でよ、インビジブル」
十二魔剣が抜き放たれる。
★ ★ ★
鞘から抜いた瞬間、効果が頭に刻まれる。最高の魔剣やな。
「いくでサイクロプス、三刀流や」
右手に大剣。左手に魔剣。そして空中に……インビジブルソードや。
魔剣『インビジブル』の能力は、不可視なる剣を操ることや。
抜刀と同時に空中に俺以外見えへん剣が発生する。それは自由に動かせるし、魔法も付与できる。
今は一本しか出せへんけど、もっと出るらしいで。だが――
「それで十分や」
いくで!
「『光速インビジブルソード』」
魔法付与、つまりは光速で動く見えない剣、最強や!
「骨だけにしてやんで」




