表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/102

二十六話 『武器革命』

「魔導具整備の店……ここか?」



 ギルドで聞いた店のドアを開く。



「ダリヤ魔導具店にようこそ!」

「こんにちは」

「どんなご用件で?」

「ああ、整備をお願いします」

「はい、そこ座っててください」



 洒落た雰囲気だな。明るい。



「どれですか~?」

「この手袋と靴です」

「拝見しま~す」



 虫眼鏡を使って何見てんだ。虫眼鏡だぞ?



「製作者は誰?」

「リザさんです」



 店員さんが真っ青になっていく。



「……冗談でしょう?」

「なんで嘘つくんですか」

「これ……いくらしたんです?」

「貰いものですから」



 そっと机の上に魔導具が置かれる。



「ん?」

「リザ冒険者の魔導具って……超高級品ですよ」



 んん?



「普通に買えば金貨300枚程です」



 レアコイン30枚!? 馬車が買えるぞ!?



「冗談ですか?」

「なんで嘘つくんですか」



 デジャブ!



「整備はしなくていいと思います。リザさんのなんで」

「そんなすごいんですか」

「最高級ですね」

「整備いらないぐらい?」

「ええ」



 リザさん……化け物ですか!



 厳かに受け取り、嵌めなおす。大事にしよう。



「またのご来店をお待ちしてま~す」

「ありがとうございました?」



 見てもらっただけだけど。



 ★ ★ ★



「お、アーロンやないか」

「ラルフ!」



 店の正面の大通り沿いに店があったそう。



「どうだった?」

「攻撃用の作ってくれるらしいで」

「よかったじゃねぇか」

「魔導具はどうや?」

「リザさんのは整備いらないって言われた」

「すごすぎんな」

「あの二人と合流しに行こうぜ」



 ギルドの中に入ると先に二人が。



「よ、アーロン、ラルフ」

「大丈夫でしたカ?」

「せや、三日後に取りに行くで」

「俺は整備の必要なしらしい。二人は?」



 アリスは黒狼の姿になってないが。若干顔赤いし。



「それなんだけど……」

「ちょっと長くなりまス」

「「ん?」」



 枝豆を食べる手を止め、向き直る。



「私の黒狼は自我を持っていまス」

「ホンマ?」

「そんなことある?」

「事実でス」



 高位の魔獣しか自我は持てないはずだ。黒狼じゃ……。



「そいつは黒狼の王、と自称していまス」

「王……やて?」

「自意識過剰なのか?」

「名前はキングでス」

「アリスが付けた」



 ネーミングセンス!



「私の体を乗っ取ろうとしましたガ――」

「されてない、と」

「面白いと感じたから見逃したそうでス」

「「意味分からん」」

「危険は取り敢えず去った、ってこと」



 ★ ★ ★



「今日機械腕(オートアーム)取りに行ってくんで」

「いってらっしゃい」

「で、提案なんやけど」

「何?」

「もう一回あの大迷宮行かへん?」

「正気ですカ?」



 勇気と無謀を取り違えてないか? 生きて帰れたのが奇跡だったのに。



「理由はちゃんとあんねん」

「聞こうか」

「まず、アーロンの覚醒やな」



 俺が自分以外に重力を掛けられるようになったことか?



「多分期待外れだぞ」

「なんでや?」



 あの時は人狼を捻り潰せたが、今じゃそうはいかない。



「あの時はリミッターが外れた状態だったんだ」

「今はそんなできない?」



 こくっと頷く。



「どのレベルや?」

「大体この木のコップ破壊できるぐらい」



『プレッシャー』と唱える。意味は重圧、だ。



 木のコップに全方向から重力がかかり、ヒビが入る。もうちょい……。

 重力が増し、ヒビが増え、コップが……砕け散った。



「すごないか?」

「全然。精々手の骨を折るのがやっと」



 体の破壊は、強烈な重力が必要だ。肉片すら残さないためには建物ぐらいは余裕で潰す力が必要だ。

 ……なんで俺できたんだろう。



「次に俺の機械腕(オートアーム)や」

「攻撃用のなんだっけ」

「せや、やから腕より強なるかもしれん」



 義手でも本人の技量が変化するわけじゃない。それの補佐だ。



「それでも――」

「そしてアリスの黒狼や」

「私?」

「意思疎通ができるんやったら使いこなすこともできんとちゃう?」

「……やってみましょウ」

「それにシンの魔導具使えば割と行けるんちゃう?」



 あまりに強引すぎないか? いつもならもう少し慎重だぞ?

 ……何か隠してるよな?



「で、本音は?」



 目、派手に泳いだぞ。



「――がないねん」

「ん?」

「金が、ないねん!」



 衝撃の事実!



「残り金貨数枚や」

「数日分の食費じゃないですカ」



 仮にも騎士団長の息子だったから金には困ったことねぇ!

 庶民の敵、金欠ってやつか! 現実にあったとは!



「本気でピンチやねん」

「「「大迷宮行こう」」」



 背に金は替えられない。全員即決!



「宝箱で一発逆転や!」

「「「おう!」」」



 ★ ★ ★



 ああは言ったがやっぱ危険よなぁ。機械腕(オートアーム)に賭けるわ。



 鋼の義肢のドアを開け――



「出直してこい」

「なんかの洗礼なん!?」





「悪かったなぁ! 兄ちゃん!」

「ループしてんのか思たわ」



 お詫びの茶をすすりながら愚痴をこぼす。このお茶美味いなぁ。



「その茶美味いだろ。高級品だ」

「へぇ、原料は?」

「魔獣の尿」

「ブッーー!」



 漫画みたいに勢いよく噴き出してしもた。なんの仕返しや。



「何飲ませんねん!」

「床が……」

「客の心配せえ!」

「美味そうに飲んでたじゃねぇか」

「尿となれば話は別や!」



 この店主といるとツッコミに疲れるわ。共和国戻たみたいや。



「もーええわ。機械腕(オートアーム)の話や」

「おう、できてんぞ!」

「流石、仕事はプロやわ」



 接待技術はゼロやけどな。メイドに謝った方がええ。



「これだ」

「おお、壮観やな」



 黒光りする鋼の表面と、機械らしい強そうなフォーム。それに――



「えらい軽いなぁ」

「職人ってことよ!」

「この肘の穴は何や?」

「戦闘用のオプションだ。嵌めたら分かる」



 仕上げに腕と神経を繋ぐらしい。痛いそうやけど……。



「準備はいいか?」

「この拷問台みたいなのは何やねん」



 左手、両足を固定され、台に貼り付けられる。



「覚悟しろよ?」

「余計に覚悟弱まってきたわ」



 どないな儀式始まんねん。



「いくで!」

「は、いっ!?」



 右腕にえげつない電流!? 肩もげるっ!



「ガァッ!」

「終わったぞ」

「はぁ、はぁ?」



 肩、付いてはる?

 肩に触れると、固い感触が伝わる。



「あ、これが」

「そう、お前の機械腕(オートアーム)だ!」



 金属の冷たい感覚。なのに自分の腕みたいに動く違和感がやばいなぁ。



「腕、無くなったんやなぁ」



 ★ ★ ★



「で、肘の機能はなんやねん」

「これは加速装置だ。右腕を異常に速く振れる」

「いまいち分からへんな」

「使ってみろ。速く振る! って考えるんだ」



 全然説明になってへん。

 右腕を……速く!



 瞬間、俺の前の空気が切り裂かれた。いや――



「右腕が、めっちゃ速よ動いた?」

「その通り。肘の激発を利用して筋肉の限界を超えて稼働できる」

機械腕(オートアーム)ならではやな」



 圧倒的な一撃必殺として使えんな。これで剣振るったらワンパンや。



「クールタイムは約三分。無制限だ」

「凄いな! これで迷宮にも役立つわ!」

「お前……また行くのか?」



 まぁ、そうなるわな。迷宮で腕失ったやつが一週間でこれや。



「行くしかないわな。何よりも、強ならな」



 金よりも、強さや。魔王の出現まで時間がないねん。多少のリスクは背負わな。

 あいつらにはちーっと嘘ついたかもしれへんけど。



「そうか」

「世話になったな。二度と来うへんよう頑張るわ」

「ああ、二度と来んな(怪我すんな)。あとは――」



 あいつが店の壁に掛かっている剣を取り外す。随分と業物やな、武器店とちゃうのに。



「ほれ、これ、持ってけ」

「……何言うとんの?」



 店の家宝かなんかやろ? 勝手にあげちゃあかんやろ。



「これはお前のための剣だ」

「本気で頭大丈夫か?」

「まだボケちゃあいねぇなあ」



 客に尿出す時点でボケボケや。



「これはリザ嬢の父さんの形見だ」

「リザさんに返せってことやな?」



 やっと納得いったわ。言い方が紛らわしすぎんねん。



「違う。お前のだ」

「なんでやねん!」

「リザ嬢の頼みだ」



「『もし私の紹介でこの店に来た奴に、この剣をあげて』、だとよ」



 S級の考えてることは全然分からへんなぁ。なんでそうなんねん。



「これは十二魔剣の一本、『インビジブル』。意味は『不可視』」

「十二魔剣やと!?」

「そう、売れば金貨100枚は下らない。伝説の剣の一本だ」



 十二魔剣とは、世界に十二本しか存在しない魔剣の一本。

 魔剣には特殊な能力が宿ってるって噂や。



「どないな能力や?」

「さあ、知らねぇな」

「ほな――」

「魔剣が教えてくれえるらしいぜ?」



 伝説の魔剣、剣士なら夢にまで見る一本が手の届くところにあんねん……!



「(欲しいっ!)」

「この剣は、お前らの生存率を飛躍的に上げる」

「……」

「これを取れ。リザ嬢の期待に、強さで答えろ」

「……ああ。……S級の地位で待っててな、と伝えてといてや!」



 俺は、リザさんから魔剣『インビジブル』を継承した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ