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十六話 『地獄の入り口』

「はい、討伐は完了したようですね。これであなたたちは……C級です!」

「「「「よっしゃあ!」」」」

「これで一歩前進や!」



 奴を越えてのC級、最高だ! これは俺が掴みとったC級だ!



「ホーンラビット言うのはB級ではどれぐらいなん?」

「あ、一番弱いわよ。良かったわね」

「…………え?」



 あれで一番弱いのか……なんかショック。



「B級はあんな程度じゃないわ。冒険者にとっての天敵はB級よ。A級なんて会わないし」


 ……俺の敵がC級紛いだったなんて……。目の前が真っ暗になった。



 ★ ★ ★



「ほな、見事C級になったことを……カンパーイ!」

「「「カンパーイ!」」」



 カチャンっと小気味良い音が響く。ちなみに今日の謎肉はホーンラビットだ。それ頼んだ。



「さてと、C級に上がったからな! 遂に本命の迷宮やで!」

「何を目的としますか!」

「数年後に魔王が出現する言われてんねん。それまでに倒せる力を得なあかん。強なるためには迷宮が一番やと思てな」



 ベテラン冒険者の体験談を聞くと、迷宮で成長したと言う人が多い。命のやり取りをするからだ。死ぬ人も山程いるが。



「どこに行くノ?」

「それやったらもう決めてんで!」



 バサッと机の上に地図を広げる。



「この赤丸がしてるとこや」

「名前は?」

「ロントワール大迷宮、最近見つかったのに大迷宮になった化け物や」



 大迷宮の定義は曖昧だが、より危険なのを大迷宮と言うらしい。A級が死んだり危険魔獣が見つかったり。



「マッピング無し。そしてA級の死が確認済み……本当に大丈夫?」

「大丈夫ではないなあ」

「意味不明なんだけど」

「俺はな、()()して欲しいねん。成長や間に合わへん、覚醒や」



 ちゅ、中二感……!



「よりむっずい所で命のやり取りをする……一人一人が壁ぶち破ったら……?」

「パーティーでは四枚破れる……ってことか」

「正解や!」

「そのためにハ、生死賭けないとダメ……ってこト」



 軽く頷いた。



「出発は2日後や! それまで準備整えるで!」

「OK!」

「ん」

「了解」



 ★ ★ ★



 剣を研ぎ、シンに魔導具を見てもらい、重力の訓練。あとはちょっとでも情報収集。この2日の出来事だ。



「全員、準備万端?」

「ん」

「えエ」

「うん!」

「じゃあロントワールに向けて、出発や!」



 王都から馬車で飛び出す。ラルフの話だと半日で着くらしい。高揚感が止まらない~!





「着いたで!」



 朝に出て夜に着いた。腰痛てぇ。



「ここがロントワール大迷宮や!」

「「「おおー!」」」



 荒野地帯のでっかい、でっかい岩山の正面に大きく真っ黒な穴が開いている。凄まじい圧迫感だ。



「とりま今日はここで野宿や。明日の朝行くで」

「了解。俺はテントの設営してる」

「俺料理」

「料理手伝いまス」

「俺はちょっと中入ってみるわ」



 シンはめっちゃ有能だ。料理、洗濯、準備、魔導具製作……etc。まさになんでもこなす。





「ご飯できたよ」

「できましタ!」

「サンキュ、ラルフ呼んでくる」

「お願い」



 大穴の前に立ち、呼び掛ける。



「ラールフ~! ご飯だよー!」



 声が吸い込まれるような不思議な空間だ。恐怖すら覚える。



「今行くでーー!」

「どうだった?」

「なんも無かったわ。入り口しか入ってへんけど」



「干し肉のカツね。干し肉を高温の油で揚げた」

「召し上がレ!」



 赤さが残る肉がオレンジにも思えるサクサクの衣で揚げられている。噛むと肉汁こそでないが、干し肉特有の香ばしい風味とサクサクの衣が超美味しい。



「ん~!」

「最高やな」

「で、ラルフ。何か見つかった?」

「何もなかったな。入り口は。入って即死はないで」

「そう」

「不気味ですよネ」

「ね。地獄に行く道みたい」

「食べたら寝て明日に備えよ」

「せやな!」

「うん」

「Yes!」



 ★ ★ ★



 朝御飯を食べ、全員で円陣を組む。他のパーティーもちらちら目に付く。



「必ず生きて帰ること、それが最優先や」

「ん」

「覚醒するで! 一人一枚、全部で四枚の壁ぶち破んで!」

「Year!」

「全員、行くで!」

「おう!」



 大迷宮攻略、スタートだ!

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