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十五話 『餌食の下剋上』

 手袋よし、靴よし、真紅のローブを纏い、決戦だ。



「ほな、みんな準備はええ?」

「ああ!」「ん」「Yes!」

「じゃあ一級冒険者さん、よろしくお願いします」

「おう、無理って思ったら俺に変わってな!」

「もう一度確認します。ホーンラビットを討伐したらC級に上がれます。また、無理だと思ったら一級の方に即座に変わってください」

「分かったで!」



 絶対変わんねぇけどな。命かけても殺してやる。



「じゃあ行くぞ!」



 ★ ★ ★



「街の外に出たら俺は全く手を出さない。ホーンラビットと出会えなきゃそもそもダメだからな」

「それは心当たりがあるから大丈夫だ」



 体験済みなんでな、あんな高い草があるとこだろ。



「地図だして」

「ほれ、これや」

「多分だけど、この辺にいる。草が高くて周りが見にくいところ」

「なんでや?」

「経験済みなんでな」

「…………シン、こっからそこ見える?」

「やってみるけど……多分見えないよ。草が多すぎて」

「近づくしかないネ~」





 草原地帯に来た。嫌でもあのときのことが思い出される。



「そろそろ絶対警戒だ。緩めんな」

「まだなんの気配もせーへんけど」

「いや……する!かなり遠いけど!」

「近づいてきてル。気配感知に引っ掛かっテ……っと速イ!」

「来る!」



 急に周りの草が揺らぎ始める。草が擦れる音が聞こえ、一気に緊張が走る。3ヶ月前のように、周り360°を囲まれている。



 体が震え、手にじっとりと汗が浮かぶ。あの喰われたときの感触が戻ってくる。



「アーロン、No problem(大丈夫)、君の以前は知らないけド、今、君は強いでス! 自信もっテ!」



 ポンッと背中を叩かれる。ああ、そうだ。俺は強くなって、仲間もいる。やることは怯えることじゃねぇだろ、……反撃だ。



「一瞬警戒を緩めて、そしたら襲ってくる」

「分かった」「ん」「OK」



 ふっと体の力を抜く。一瞬だけ。その瞬間、草の中からやつ(ホーンラビット)が飛び出してきた。



「死ねぇ!」



 ゼログラビティ、へビリティで剣を加速、一匹目に突き刺した。肉を貫く感触がし、ブシャッと血が吹き出す。俺はそいつの脚を……容赦なく食った。



「旨いなぁ、獲物を生きたまま食うってのは。だからお前らも生きたまま肉を抉り取ってくのか」



 剣に突き刺した獲物は逃れようとジタバタ暴れる。それを逃さないように脚を食い、腹を抉っていく。口元が真っ赤に染まる。



「生肉でまっずいはずなのになんでこんなに旨く感じるんだろうな。……命の味がするなぁ」



 引いてるのか? 他のやつらは見てるだけで襲ってこない。仲間の戦闘音をBGMに味わっていく。



「引いてんじゃねぇよ。お前らがしょっちゅうやってることだろ? あ、死んだな」



 べしゃっと剣から抜き、地に墜とす。



「かかってこいよ、俺は餌食じゃねぇ。捕食者だ」



 言葉が通じるのか? その言葉を皮切りにわっと襲ってきた。



「死ね」



 卓越させた戦闘技術で、重い蹴りを横凪に放つ。2、3匹巻き込んで骨を粉砕する。間合いが取りにくい剣を捨て、鉄球のような腕を振り回し、喰らいついてくる兎どもを肉塊へと変えていく。



「フフフッハハッ! 楽しいなぁ、おい! お前ら!」



 腕を振るたびに空中に血の花が咲き、地面に墜ちる。死体や瀕死のやつを踏みつけにしながらまたパッパと花を咲かせていく。



 ピンチなんて一度もなかった。俺の皮にすら触らせずに、ほぼ全員を撲殺した。



「お前で最後か」

「キュウッ」

「攻撃する意思も、逃げる意思すらもないのかよ」

「キュウ……ッ」

「命乞いしてんのか? 許可するわけないでしょ、お前だってそうだろ?」

「キ――」

「餌食にされる気持ちはどうだ? 抵抗虚しい圧倒的な力を分かったか? 捕食者っていう地位から引きずり下ろされるのはどうだ?」

「ゆっくり殺――」



 差し出した剣を止められた。



「なんだ? ラルフ」

「止めは手早くや。長引かせて拷問するのは……人間じゃないで。残酷すぎや」

「……俺は、こいつらに身体中を喰われた。こいつも喰ってやる」

「あかんで。それは人間やない、人間って名前の魔獣や」



 でも、でも、こいつらに生易しい死が与えられていいのか?



「アーロンが何されたのかは知らない。壮絶なトラウマと憎しみを持ってるのかもしれない」

「But……アーロン君は優しいかラ、正気を取り戻しテ」



 確かに狂人じみてるかもしれない、だが……。



「魔獣、こいつらに堕ちてええんか?」

「君は、人間」

「勝ったからいいじゃン」



 ふぅと溜め息を吐く。少しは正気を取り戻した。こいつらと同じになんかなってやるものか。腑に落ちない事はある、でもここでそれをしたら、多分パーティーには居られなくなるな。



「理性は取り戻したよ、ただこいつは俺が殺る」



「じゃあな、二度と会いたくない」



 シュッと首を切り落とした。即死だろ。



「ほな帰るか。終わたで、兄ちゃん!」

「おう、頑張ったな!」

「帰ろう」

「うん」

「Yes!」



 魔獣狩りが、終わった。俺……強くなった!

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